【精神科医に聞く】5月病を「睡眠」からアプローチ!10の対策と、眠れないときのお助け術 (1/3)
4月から生活リズムも変わり、新しい環境で心身にストレスがかかっている人は多いでしょう。
そして5月に向けてリスクが高まるのが、5月病。やる気や気力が低下し、ひどい場合には深刻なうつ病につながることもあります。
5月病のリスクと睡眠の間にも密接な関わりがあると語るのは、精神科医の芦澤裕子先生。良質な睡眠を確保するためにできる対策に関して伺った内容を、快適な睡眠を届けるファーニチャーブランドZINUS JAPAN株式会社のリリースよりお届けします。
芦澤裕子先生 精神科医・市川メンタルクリニック 院長
日本睡眠学会認定医、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、指導医。心療内科、精神科のクリニックにて精神障害、睡眠障害などの治療にあたる。「GOOD SLEEP BOOK 365日ぐっすり快適な眠りのむかえ方」(翔泳社)監修。市川メンタルクリニック
「5月病」は睡眠の質とも密接な関わりがある
5月病とは、抑うつ症状を呈する状態のこと。医学的には「適応障害」「うつ病」と診断されることが多いです。
新生活の環境の変化による精神的、ないしは身体的なストレスや疲労のために脳がうまく働かず、精神的に不安定になったり、ぼんやりとしてしまったり、無気力になるなどの症状が出ることがあります。
ネガティブなストレスに限らず、志望通りの進学・異動・昇進などのポジティブな変化によっても起こることがあります。
環境の変化をはじめとする明らかなストレス要因に起因し、そのことについて思い詰めて、夜きちんと眠れずに心身が疲労していくという悪循環が「5月病」につながることも考えられます。
睡眠の量や質が低下すると、どんなデメリットがある?
睡眠の量や質が落ちると、身体組織の疲労回復に支障をきたします。
精神的なコンディションを司る「自律神経」や「脳神経」も、細胞ひとつひとつからできています。従って、栄養や酸素が細胞に行き渡っている状態を作ることが重要なのですが、睡眠がきちんととれないと、これらが上手に機能しなくなるリスクがあります。
睡眠の質を高めるための睡眠習慣
起床時刻を一定にする
人間の概日リズム(生体リズム)は約25時間と、1日の24時間より1時間ほど長いのです。この差を修正するためには、朝の起床時刻を一定にし、24時間周期にリセットしましょう。
朝起きたら太陽の光を浴びる
朝、太陽の光を浴びましょう。
午前中に光を一定時間浴びることによって、自律神経や脳神経を正常化するのに役立つホルモン、セロトニンの正常な分泌にも役立ちます。
ぬるめの半身浴をする
身体の内部の温度(深部体温)が下がるときに副交感神経が優位になり、入眠しやすくなります。
眠るタイミングで深部体温の低下を下げるには、春夏の暖かい季節は1時間前までに、湯船で38度~40度のぬるめの半身浴で入浴を。
20分ほどゆったり浸かりましょう。
眠る1時間前からはパソコンやスマートフォンの液晶画面(ブルーライト)は見ない
ブルーライトは、光の脳への刺激によって睡眠相(睡眠リズム)を崩してしまいます。本来は夕方以降にブルーライトを浴びないほうが理想とも言われます。
また、眠る前のネットサーフィンも、見ていることに興味を持ってしまうことで交感神経が優位になり、入眠の際に優位になるべき副交感神経がうまく作用せず、なかなか寝付けなくなってしまいます。
睡眠の質を高めるための栄養と食事
美味しいものを食べることでも“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンが分泌されるので、適度であれば好きなものを楽しむことはおすすめです。
しかし、栄養が偏ったり、糖質・脂質など胃腸に負担がかかるものを過剰に摂ることは、長期的には血液中のコレステロールを増やしてしまったり腸内環境を乱すなど、メンタルヘルスにも良くない影響を及ぼす可能性もあるので注意しましょう。
睡眠の質をよくする栄養素
睡眠の質の改善に必要な栄養素は、たとえば以下です。
- 神経伝達物質を作るタンパク質
- セロトニンの合成に不可欠なビタミンB6
- 脳神経の正常な働きを助けてくれるビタミンB12
- 神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)の原料トリプトファン
- ドーパミンを作るのに必須といわれる鉄
- ストレスを和らげ、興奮した神経を落ち着かせるGABA
- 体の末端部分の血行量を増やして深部体温を冷やすグリシン
睡眠の質を上げてくれる食品
肉や魚は主菜にきちんと取り入れたうえで、以下を意識するとよいでしょう。
- ビタミンB12豊富なしじみやあさりなどの貝類
- グリシン豊富なエビやウニ
- トリプトファン豊富な豆腐や納豆
- GABAが豊富な発芽玄米