フィットネス
2025年5月23日

HIITよりキツい!話題のトレーニング「Met-Con(メトコン)」とは?効果とやり方を解説

筋トレやフィットネス、またはダイエットに興味がある人なら、「HIIT(High Intensity Interval Training:高強度インターバルトレーニング)」という単語を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

HIITとは、強度の高い運動を、休憩を挟みつつ繰り返し行うトレーニング方法のこと。その最大の利点とされているのは、短時間で効果を最大化できる効率性です。

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そして、HIITよりさらに重量負荷をかけ、ランダムな時間制を用いた“キツイ”トレーニング方法を「Metabolic Conditioning:メタボリックコンディショニング」、通称「Met-Con(メトコン)」と呼び、こちらもクロスフィットのジムなどで広く行われています。

今回はHIITとMet-Conそれぞれの特徴と、実際のワークアウトメニューを解説していきます。

長時間の有酸素運動に代わる「HIIT」が登場してから数年

トレーニングを行う目的が持久力を向上させること、あるいは脂肪を燃やして体重を減らす場合、以前は長時間の耐久的な有酸素運動をするやり方が一般的でした。

長時間のいわゆる「走り込み」は、その代表的な例です。筋トレでも、低重量・高回数で長時間かかるプログラムを組むことが推奨されてきました。

たとえば腕立て伏せ100回や、自重スクワット300回などがそれにあたります。

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そうした方法に効果がなかったわけではありません。

オリンピック・マラソン競技の金メダリスト野口みずきさんの名言「走った距離は裏切らない」にあるように、長く走り続ける、床に汗で水溜まりができるまでスクワットを続けるような忍耐と努力は確実に実を結びます。

しかし、誰もがトレーニングに無制限の時間をかけられるわけではありません。

その点、HIITならキツい運動であるものの、短時間で済んで飽きがこない。そのうえ、HIITには長時間の運動と同等以上の効果があるとする研究が数多く発表されました。

忙しい生活を送る現代人にHIITが受け入れられたのは、不思議なことではありません。

HIITと「Met-Con(メトコン)」、なにが違う?

すっかり有名になったHIITと比較すると、Met-Con(メトコン)は一般的には知られていないかもしれません。一体何が異なるのでしょうか。

Met-Con(メトコン)は重量を使う

HIITがどちらかといえば心肺能力に比重を置いて有酸素運動や自重筋トレを多く行う(短距離ダッシュ、バーピーなど)ことに対して、Met-Conはダンベルやバーベルなどを用いて、ある程度の重量負荷を用いたエクササイズを多く組み込みます(パワークリーン、ダンベル・スラスターなど)。

とはいえ筋肥大や瞬間的パワーを重視した筋トレとは異なり、Met-Conで扱う重量は軽めです。それよりも、動作スピードや回数が重要な要素になります。

つまり、低重量・高回数の筋トレを可能なかぎり素早く行うイメージです。

Met-Con(メトコン)は複数のワークアウトを組み合わせる

また、HIITでは高強度運動の種類を限定することが多いですが(固定自転車など)、Met-Conでは複数のワークアウトを組み合わせることが通常となります。

Met-Con(メトコン)は運動と休息に規則性がない

多くの場合、HIITは運動と休息を規則的な時間形式で行います。

たとえば陸上におけるたインターバル走(800m全力+200mジョグの繰り返しなど)のように。HIITのプロトコルは、通常これより短い時間と間隔で行います。

HIITでもっとも有名なプロトコルは、立命館大学の田畑泉教授の名前を冠した「タバタ」でしょう。

20秒間の「強度の高い運動」と10秒間の「休息」あるいは「負荷の軽い運動」を1ラウンドとして、それを8ラウンド繰り返すというシンプルなもの。ここでは、運動と休息の割合が2:1と定められています。

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これに対して、Met-Conでは、休息に規則性はありません。

たとえば、10~20分程度の制限時間内になるべく多くの動作を行うなどがあります(AMRAPと呼ばれます)。

ほか、時間無制限で指定ラウンド数と回数をできるだけ速く終わらせるというやり方もあります(ForTimeと呼ばれます)。

休息を入れるタイミングと長さ、スローダウンするかどうかは自分の判断に任せられます。

クロスフィットではコーチや仲間がヘトヘトになったアスリートを大声で叱咤激励するのが名物のひとつでもありますが、Met-Con(メトコン)ではどれだけ「追い込む」かは、あくまで自分次第。

Met-Con(メトコン)は筋持久力向上に有効

Met-Con(メトコン)では心肺能力も鍛えられますが、やや筋持久力向上に比重を置いています。

このように、HIITは広義でMet-Conのひとつとも言えますが、すべてのMet-ConがHIITであるわけではありません。

Met-Con(メトコン)のやり方 実例つき

では、Met-Con(メトコン)を実際にやるときのメニューを見てみましょう。先ほど紹介した「AMRAP」と「ForTime」です。

10~20分程度の制限時間内になるべく多くの動作を行う「AMRAP」

  • 逆立ち腕立て伏せ4回
  • ボックスジャンプ6回
  • ケトルベルスイング8回

上記を1ラウンドとして、制限時間15分以内に何ラウンドこなせるかを競います。

指定回数をとにかく早く終わらせる「ForTime」

  • プッシュプレス15回
  • オーバーヘッドスクワット15回

上記を1ラウンドとして、7ラウンドをどれだけ速く終わらせるかを競います。

持久力を「運動を長時間継続する能力」と定義するなら、心肺能力と筋持久力は本来なら切り離して考えることはできません。そのどちらが欠けても、運動を続けることはできないからです。

HIITとMet-Con(メトコン)をうまく組み合わせて取り入れることで、その両方を過不足なく鍛えることができるでしょう。

筆者プロフィール

角谷剛(かくたに・ごう)

アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
【公式Facebook】https://www.facebook.com/WriterKakutani

<Text & Photo:角谷剛>