ウォーキング、ジョギング、ランニングの違いとは?いまさら聞けない「基本のき」を専門家に聞いてみた (1/2)
ウォーキング・ジョギング・ランニングはどう違うのか。きちんと理解して目的別に使い分ければ、可能性やメリットは無限大です。
これから始める人から上級ランナーまで役立つ基本について、ランニングイベントなどを主催し、ランナーの指導も行う「Japanマラソンクラブ」マラソン完走請負人・牧野仁さんに聞いてみました。
ウォーキングとジョギングはスピードよりも空中動作や着地点、テンポが違う
――私はラン歴12年で、フルマラソンを何度も完走しているのですが、この3つの違いを改めて聞かれると、歩くのがウォーキング、ゆっくり走るのがジョギングで、スピードが上がるとランニングかな、というざっくりとした認識しかないのですが。
理論的な違いより、一般の人が実際に行っている動きの違いでとらえたほうがわかりやすいですね。ウォーキングとジョギングの違いですが、簡単にいうとジョギングは体が空中に浮く、つまり両足が地面から離れる瞬間があって片足で着地します。足は空中で前に出て、着地点はほぼ体の真下。
ウォーキングはどちらかの足が必ず地面に着いていて、もう一方の足を体より前に出すので着地点も体より前になります。競歩の選手は、たとえジョギング以上の速さでも、必ず片足が着いているからジョギングではないのです。まずはこれが大きな違い。
――スピードよりも空中に体が浮くかどうかの違いなのですね。
そうです。もうひとつは、スピードというよりテンポの違いです。歩いているときは、1分間にだいたい100歩、高齢者でも98歩なので、あまり違いはありません。これは、ゆっくり歩いている場合。しっかりウォーキングしていると120歩、速歩になると140歩ぐらいです。
160歩になると足を前に出すウォーキングでは忙しいけれど、真下に足を着くジョギングならできます。ランニングになるとさらにテンポが速くなって180歩。ランニングはこのテンポを目安にすればよいし、健康ジョギングなら160歩で十分です。それでも、普段の1.6倍の動きをしているので。
まずはウォーキングで姿勢を整え、推進力と股関節の使えるフォームを磨く
――なるほど、3つの違いがわかりました。スピードには体格差も関わってくるけれど、テンポなら誰にでも当てはまりますね。これらの違いを普段の練習に生かすには、どうすればよいでしょうか。
いきなりジョギングやランニングをするよりも、最初はウォーキングをおすすめします。ウォーキングはジョグやランの姿勢を整える効果があるので。試しに、120歩/1分のウォーキングをあえて猫背でしてみてください。
――ちょっと歩きにくいというか、足が前に出にくい感じがします。
だらだら歩きなら猫背でもできるけれど、ウォーキングは背筋を伸ばした方が歩きやすいし疲れにくい。だからテンポよく歩いていると、自然に姿勢が整うのです。
――もしかして、いきなりジョギングから入ると、姿勢が悪いまま走ってしまうということもあるのですか。
そうなんです。体は重力と戦いたくないし、精神的にも猫背の方が楽だから。でも、それでは腰が落ちて股関節が使えないし、前に進む推進力が生まれてこないのです。
――よくいわれる、腰が落ちたフォームですね。
歩く、走るという動作は、基本的に地面と平行に前進する力と、股関節が回転する力の両方が必要ですが、腰が落ちていると平行には進めない。車体が上がったり下がったりしてしまうようなものです。さらに、股関節が十分使えないからひざや足首で何とかしようとしてしまうけれど、そういう前に進まない状態で、いきなり負荷の大きいランニングをしてしまうのはNG。風の強い日などもバランスが取りにくいので、まずは地に足の着いたウォーキングでフォームを整えてからです。
――走っているときのフォームって、自分では気づきにくいですが、練習しているのに成果が出ないという人なども、まずはウォーキングを取り入れると変わるかもしれませんね。
実業団の女性ランナーも、ウォーミングアップには競歩を取り入れています。大事な試合の前もそうなんですよ。
――トップレベルのランナーも実践しているんですね。私はいきなり走るときついので、最初はいつも歩いていますが、フォームがよくなるというメリットがあったなんて、とてもうれしいです。
のんびり歩くのではだめですよ。早歩きだから意識しなくてもフォームがよくなるし、早く歩けないときは姿勢が崩れています。
――実践するために、押さえておくべきポイントはありますか。
やはりテンポです。スタジオエクササイズで流しているBGMは、一定のテンポを刻んでいますね。あれと同じで、120拍/1分のテンポの曲に合わせて、あとは真っすぐ前を向いて歩くこと。ウォーキングはそれでOKです。