インタビュー
2018年5月21日

全日本女子バレーボールが導入した究極の練習マシン「ブロックマシン」とは?│デジタルでスポーツの勝利をつかむ #4〈バレーボール×デジタル 前編〉 (1/3)

 「ブロックマシン」をご存じだろうか。躍進を続けている全日本バレーボールチームの練習で使われているマシンである。練習で使われているため表舞台に出ることはないが、チーム快進撃の一翼を担う重要なファクターとなっている。

 ブロックマシン導入後、選手たちにどのような効果をもたらし、成長させたのか。今回は練習マシンの正体を探るべく、公益財団法人 日本バレーボール協会 ハイパフォーマンス戦略担当の渡辺啓太氏に現状を訊いた。

▼後編はこちら

世界レベルを体感できる「ブロックマシン」。その仕組みと操作方法に迫る│デジタルでスポーツの勝利をつかむ #4〈バレーボール×デジタル 後編〉 | トレーニング×スポーツ『MELOS』

開発のきっかけはテレビ番組だった!?

 「バレーボールのデジタル化」といえば、2016年まで全日本女子監督を務めた眞鍋政義氏が、試合中タブレット端末片手に指示を出すシーンを覚えている人も多いかもしれない。2017年に引退した木村沙織さんが、活躍していた時期とちょうど重なっている。

 ちなみにバレーボールは、試合中にベンチへパソコンなどの通信機器を持ち込める稀有なスポーツでもある。全日本女子チームは、IT化を進めた結果、2010年世界選手権や2012年のロンドンオリンピックで銅メダルを獲得し1つの成果が出たといえる。

 今回紹介するのは、練習用マシンの話。スパイク・トス・ブロックなど人間対人間で行うべき練習の一部、ブロックの練習にマシンが使われているという。そもそも何故ブロックの練習にマシンを導入しようと思ったのだろうか。

「開発のきっかけは、2016年リオデジャネイロオリンピック(以下、リオ)に向けて当時の代表チームが使用するために開発がスタートしました。といってもキッカケは、実はロボットがサッカーゴールを守る、しかも鉄壁の守りをするっていうバラエティ番組です(笑)」

「眞鍋監督がふと、これはバレーボールでも使えるかって言ったのがアイデアの始まりなんですよ! そして高身長の世界の選手を想定した練習を日常的に行うことがオリンピックでのメダル獲得には必要だと、当時文部科学省が展開していたマルチサポート事業のヒアリングの際に全日本女子チームからの要望として伝えました」

 2015年に文部科学省の外局としてスポーツ庁が新設された。同じくバレーボールが、2016年開催予定だったリオデジャネイロオリンピックに向けたターゲット種目に選定され、ハイパフォーマンスサポート事業としてサポートが決まると、開発のスピードは加速していったという。

手動の試作機から可動式マシン完成まで

 かくして開発までたどり着く。筑波大学のバーチャルリアリティー研究をしている岩田洋夫氏の研究室、民間企業をも加えた盤石な体制でスタート。まず完成した試作機だったが、意外にも全手動だったという。

▲ブロックマシンの試作機。ハンドルを回して高さや手の開き具合を調整していた

「試作機は1対1用で、人力で移動させ位置を決め、高さや手の位置もハンドルで調整するものでした。はっきり言えば、完全マニュアルなプロトタイプですね。これだとブロッカーは固定されているので、ネット越しに高さだけ体感できるというものでした」

 全体的に無機質さを感じさせる試作機。確かに某番組の匂いがする(笑)。しかし、素人目には判断できないが、試作機を通じて課題が明確になったという。

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