やる気が出ないときは「2分間の〇〇」が効果絶大なワケ
勉強やデスクワーク中、「今日は何だか頭がぼんやりしているな」と感じることはありませんか? そのようなときは、いったん机から離れて、2分間で構わないので何かしらの運動をしてみると良いかもしれません。
腕立て伏せでもバーピーでも、あるいは階段を駆け上がるのでも。それだけで脳の働きを活性化できることが、新たな研究(*1)で明らかになったのです。
スウェーデンの医学研究者たちは、システム・レビューという形式を用いて、2009年から2019年までに行われた13の研究から、18歳~35歳までの若い世代を対象に、運動が脳の働きにどのような影響を与えるかを解析。
その結果として、2分間~60分間までの有酸素運動(例:ランニング、ウォーキング、サイクリングなど)を勉強やデスクワークの前に行うことで、若い世代の学習および記憶機能を向上させることができると結論づけました。
運動と脳の関係性
論文著者らによると、運動の強度を中程度から高く上げると、わずか2分間の運動によって得られる効果は記憶力の向上だけでなく、アイデアや企画力、問題解決能力、集中力、表現力などの広範囲にも及び、しかもその効果は2時間まで持続するとのこと。
そのメカニズムは以下のように説明されています。
運動によって心拍数が上がる
↓
酸素をより多く含む血液が脳に送り込まれる
↓
新しい脳細胞の生成を促進するホルモンの放出が刺激される
運動の強度が高ければ高いほど(心拍数が上がれば上がるほど)脳に送り込まれる酸素も多くなり、結果として脳の働きがさらに活性化するというわけです。
勉強やデスクワーク前に運動を行うと、パフォーマンスが上がる
論文著者らは運動と学習能力の間には強い関連性があると述べ、勉強やデスクワークを始める前に運動することは、効率を上げるうえで大いに役に立つとしています。
さらに、脳が「エンコーディング」の段階に入る前に有酸素運動をすることが、若い世代の学習および記憶機能を向上させると述べています。
エンコーディングとは、脳が情報を記憶に保存する際の第一段階であり、情報処理のフェーズとのこと。運動は、このフェーズにおいて有益な働きをするようです。
今回の研究では若い世代(18歳から35歳まで)が研究対象になりました。運動が勉強の効率を上げると証明されたことで、学校教育などの場においても有益な情報として活用されることを論文著者らは期待しています。
ただし、今回の研究では、どのような種類の運動をどれだけするのがいいのかまでは踏み込んでいません。それについては論文著者らも今後の課題だとしています。
HIITはすべての世代にメリットがある
短時間で、かつ強度が高い運動といえば、タバタ式トレーニングに代表されるような高強度インターバルトレーニング「High Intensity Interval Training(通称HIIT)」でしょう。
HIITは、ダイエット目的の人にもスポーツパフォーマンスを向上させたい人にも効果的なトレーニング方法です。
そして、HIITが身体的効果だけではなく、アンチエイジングや高齢者の脳の働きに与える効果についても、以前から研究が行われてきました。
以下記事で紹介したカナダの研究(*2)では、HIITを12週間行うことで、高齢者(60歳から88歳まで)の記憶力を最大30%まで高める効果があったと報告しています。
若いうちはもちろん、高齢になってからでも、HIITを行うことが脳の健康へ与える恩恵には計り知れないものがあるようです。
参考文献:
*1.
Effects of a single exercise workout on memory and learning functions in young adults—A systematic review.
*2.
Strive to remember:Researchers find high-intensity exercise improves memory in seniors.
筆者プロフィール
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
【公式Facebook】https://www.facebook.com/WriterKakutani
<Text:角谷剛>