2023年6月9日

食物繊維をたくさん摂れば便秘は解消される?答えは「ノー」|マッスルデリ管理栄養士が解説

 体を鍛えている筋トレ民も、細くなりたいダイエット民も、時には食べすぎ、飲みすぎることもあるでしょう。どうやったらリカバリーできるのか。ボディメイクを食事面からサポートする「Muscle Deli(マッスルデリ)」の管理栄養士・瀧川みなみさんに、よくあるギモンを聞いてみました。

 今回のテーマは、食物繊維について。第六の栄養素とも言われている食物繊維は、便秘対策として意識している人も多いかと思います。ところで、食物繊維は便秘にいいと言われるのはなぜでしょうか? 多く摂れば摂るほど効果的なのでしょうか。

Q. なぜ「食物繊維は便秘対策にいい」と言われているのでしょうか。たくさん摂れば便秘は解消できますか?

A. 食物繊維には腸内環境を整える作用があります。ただ、不溶性食物繊維を摂り過ぎると便秘が悪化するケースも。

 便秘はさまざまな種類に分類できます。今回はそのなかでも「機能性便秘」という、もっとも多いタイプの便秘に着目します。この便秘は食事内容、生活習慣、ストレス、加齢などが原因で腸の動きがうまく行かないことによって引き起こされます。

 なぜ便秘対策には「食物繊維」が良いとされているのでしょうか。それは、食物繊維は人の腸内に住む善玉菌のエサになる、排便を促すなど、腸内環境を整える作用が期待できるからです。

 人の腸内には、60〜100兆個もの細菌が存在すると言われています。腸内細菌には、体にとって有用な働きをする善玉菌(乳酸菌・ビフィズス菌など)、悪さをはたらく悪玉菌、優位な方に味方する日和見菌が存在します。理想的なバランスは善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7とされています。

 健康的な腸は、善玉菌が優位の状態で腸も活発に動きます。ところが、偏食やストレスなどで悪玉菌が増えると、日和見菌が悪玉菌に味方して腸内細菌のバランスが乱れてしまいます。

食物繊維には「水溶性」と「不溶性」がある

 食物繊維は「水溶性」と「不溶性」の2種類に分けられます。水溶性食物繊維は水分を含むとゲル状になり、便を軟らかくするはたらきがあります。その他、小腸での栄養素の消化吸収を遅らせ、食後の血糖値上昇をゆるやかにしてくれます。また、善玉菌のエサとなり腸内環境を整えてくれます。

 不溶性食物繊維は水分を吸収して大きく膨らみ、腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を活発にし、便のカサを増やして排便を促すはたらきがあります。また、水溶性食物繊維と同じく、大腸内で発酵・分解されると善玉菌のエサとなり、善玉菌が増えることで腸内環境を改善してくれます。

 以上のことから、食物繊維が十分に摂れていない状態で便秘の症状を感じている方は、食物繊維の摂取によって便秘が解消される可能性はあると言えます。

不溶性食物繊維を摂り過ぎると便秘が悪化するケースも

 ただ、食物繊維は「摂れば摂るほどいい」わけでもありません。便秘の観点で言えば、ゴボウやおからなどに多く含まれる不溶性食物繊維を摂りすぎると、便のカサが増えすぎてスムーズな腸内移動ができなくなる、お腹が張るなど便秘が悪化するケースもあります。

水溶性食物繊維を摂り過ぎるとお腹が緩くなる、栄養の吸収を吸収することも

 便秘からは離れますが、水溶性食物繊維を摂りすぎてしまうと、お腹がゆるくなる、必要な栄養素の吸収を妨げてしまう場合もあります。現代人の食事であれば、よほど食物繊維を意識した食事や、「○○だけ」のような偏った食事でもしない限り、食物繊維を摂りすぎる心配はないでしょう。

 最近では食物繊維のサプリメントや、特定保健用食品(トクホ)などで食物繊維を増強し、手軽に食物繊維が摂れる商品も手に入るようになってきました。ただ、不足分を補う分には良いですが、摂りすぎには注意しましょう。

[プロフィール]
瀧川みなみ(たきかわ・みなみ)
株式会社Muscle Deli管理栄養士、調理師。青山学院大学文学部卒業後、専門学校で調理師、食生活アドバイザー、栄養教諭を取得。専門学校卒業後は大手外食企業で働きながら管理栄養士を取得。接客、店舗管理、副料理長を務めたのち本社の商品企画・開発部門でデザートメニューの商品開発をおこなう。その後、クラウドレストランを運営するベンチャー企業に転職し、8ブランドの立ち上げを実現。より多くの人に向けて体・健康づくりの手伝いがしたいと思い、Muscle Deliに入社。商品開発、栄養指導、レシピやコラム作成等を担当。プライベートでは料理教室や食事に関するセミナーなどのイベントを主催。

記事協力
・株式会社Muscle Deli
・公式サイト https://muscledeli.co.jp/

<Text:編集部>