マラソン専門家が解説!通勤ランニング時の距離・ルート・走り方【通勤ランの始め方 Vol.3】
これまでは、準備すべきシューズやウェア(参照:Vol.1)、ランニングステーション(ランステ)(参照:Vol.2)の活用法を紹介してきました。第3回では、実際に「走る」ときに覚えておきたいポイントを、マラソン教室やランニングイベントなどを主催し、ランナーの指導も行う「Japanマラソンクラブ」代表の牧野仁さんに聞いてみました。
《これまでのおさらい》
・[Vol.1]準備しておきたいこと……ウェア、シューズなど、どんなアイテムが必要なのでしょう?
・[Vol.2]出勤ラン後の身だしなみは徹底して整えたい……走った後のボディケアを徹底したい!
どのくらいの距離から始めるのがいいの?
通勤ランを始める際に思うのが、「果たして会社まで走れるか?」ということ。どのくらいの距離が通勤ランに適しているのか? まずは自宅から会社までの距離を知って、無理なく走れる距離からスタートするのが重要と牧野さん。
「これから通勤ランを始める人は、時間と距離がポイントです。走る距離は5~6km、時間にして約30分くらいですね。これは、ランニングに慣れていない人でも体に負担をかけずに走れる目安といえます。会社までの総距離が10km以上ならば途中まで、もしくは途中から走るという選択肢も考えてください」
では、通勤ランを実践している人が走る距離は、平均でどのぐらいなのでしょう。
「通勤距離が10〜20km以上ある人は、すべての距離を走る必要はありません。たとえば会社の5つ手前の駅で下車し、トイレで着替えて会社まで走る。この方法をとっている方も多くいらしゃいます。平均すれば10km以内が多いようです」
通勤ランでは、10kmまでが現実的な距離なんですね。日々の仕事のスケジュールなどともあわせて自分にあった通勤ランスタイルを作るのもアリとのこと。
「通勤ランは、距離や速さに挑戦することよりも、『週に何回走る』というように習慣化させることが大切です。ウォーキングもとり交ぜながら、自分のペースで疲労のない範囲で走れば快適な通勤ランが続けられます」
さらに、『ここまではペースをあげない』とか『会社の手前200mからはウォーキングでクールダウンする』など、自分なりのルールを作るのも楽しく通勤ランを続けるコツだとか。自分なりの目標を持ってルール決めするのも続ける楽しみに。納得のコツです。
ランルート選びと走り方のポイント
通勤ランは、ランニング専用のランコースを走るのとは違い、街の中を走ることになります。安全に快適に走るルート選びとは?
「安全に、快適に走れる歩道がある広い道ばかりとは限りません。人と車がすれすれの細い道路もあるでしょう。ですから、車や自転車、人がどの程度通行しているかチェックしておくこともポイントとなります。楽に走れるのは、一方通行の道路。前か後ろ、気にかけるのはどちらか一方でよいですから(笑)」
なるほど。通勤ランのルートに一方通行の道路が多い幸運なランナーは、うまく組み合わせて走ってみましょう! しかし、そんなツイてるランナーばかりじゃありませんよね。逆に信号が多く、信号待ちなどでランニングをどうしても中断せざるえないランナーがペースを乱さずに走るには?
「信号で止まってしまうと、どうしてもペースが乱れてしまいます。そういうときは無理に走り続けようとせず、またウォーキングから始め、徐々に加速するようにしましょう。ひとつ先の信号を見るようにして、ペース調整するのもいい。また、止まらずに迂回できる道をチェックしておくのも通勤ランの走り方のポイントです」
都心に意外と多い坂道。坂道もペースを乱す原因では?
「坂道を走ることは、平たんな道だけを走っているよりもいいトレーニングになります。あえて坂道をルート中に入れるのもいいことですよ」
登って下る坂道は足への負担もあり、通勤ランビギナーには要注意ポイントかと思いきや、そんなメリットも。坂道を楽々クリアできるようになれば、思いがけない達成感も味わえそう。
通勤ランのルートは、途中下車する駅を変えたり、迂回路を選んだり、坂道に挑戦したりしながら幾つかのルートを確保しておくのも楽しく走るコツかもしれません。最後に、仕事帰りにランニングする帰宅ランについても伺いました。
「暗くなると視野が狭くなりがちです。走りに集中してしまうと思っている以上にスピードが出てしまい、車や自転車との接触事故につながる危険性もあり、特に注意が必要です。安全に走るためにもリフレクター(反射板)を付けるのがおすすめ。最近はランニングウェアの生地やシューズなどにリフレクター素材を使用しているものもたくさん出ていますよ」
通勤ランは、街中の公道を走るのですから周囲への気配りやマナーも大切。そして何より、安全に走ること。今回、牧野さんに伺ったポイントを踏まえて、無理なく快適に、通勤ランを楽しみましょう。
次回は実際に「通勤ラン」を続けている人に、継続するためのモチベーションの上げ方や楽しく走る秘訣を聞きます!
《これまでのおさらい》
・[Vol.1]準備しておきたいこと……ウェア、シューズなど、どんなアイテムが必要なのでしょう?
・[Vol.2]出勤ラン後の身だしなみは徹底して整えたい……走った後のボディケアを徹底したい!
[監修者プロフィール]
牧野仁(まきの・ひとし)
有限会社スポーツネットワークサービス代表、Japanマラソンクラブ完走請負人。1967年東京生まれ。アスレティックトレーナー、ストレングス&コンディショニングトレーナーとして活躍。健康ジョギングからマラソン完走、レベルアップまであらゆるランニングの指導を全国各地で展開している
<Text:丸山美紀(アート・サプライ)/Photo: Getty Images>