2017年12月29日

横浜DeNAベイスターズのVRシステムと連動するレーダーシステム「トラックマン」から見える戦略の全貌│デジタルでスポーツの勝利をつかむ #3〈野球×デジタル 後編〉 (2/2)

「細かくは言えないのですが、投球フォームや調子は『回転数』や『回転軸』といった数字に表れるので、“こういうふうに投げていたから、こうだったんだな”とわかる人もいれば、“今日はこうだったんだ。じゃあ次回はこうしてみます”という人もいる。投手はフォームをすごく気にします。今まで映像でしか見られなかったのが具体的な数字として現れるので、サポート材料として“じゃあこうしよう”という感じで使ってくれています」

「コーチとも共通認識を持てるのがいいところでしょう。本当はバイオメカニクスというか、動作解析みたいなところも今後やっていければいいなと思っています。データを元にして具体的に“こういう動作だったから、こうだったんだよ”というところを繋げられるので。そこは今後の課題ですね」

▲筆者も体験したが、プロの球種の豊富さに翻弄される……。臨場感はかなりのもので、フィードバックがあれば、高性能なバッティングセンターになりそうだ。スクリーン上部の赤いセンサーでバッターの位置情報をモニタリングしている

スポーツはITを駆使した情報戦に向かっている

 こうしたテクノロジーは、使うことでメリットこそあれ、使わないという選択肢はもったいないと壁谷氏は言う。

「『トラックマン』はデータを取っている他球団とシェアすることができる。そこに大きな意味がある。もちろん、それだけが正解じゃないんですけども0か1かで言ったら、持ってる方がいい。大切なのは、そのデータ、情報をどう生かすか、ですね。」

 トラックマンのデータでは、ホームランの飛距離・角度・打球速度といったデータも明確にわかる。これからの球界は、ITを駆使した情報戦という一面も無視できなくなる。

▲「桑原選手のデータで言うと、『iCube』を使用したときの方が打率も長打率もいいです。もちろんホームにしか設置していないので、ホームの方が成績も上がっています」

「テクノロジーの分野に関して、大リーグは先を行っています。テレビ中継と連動させてデータを解析するなど、日本はそこがまだまだ遅れています。東北楽天ゴールデンイーグルスは、そういうところを積極的にやっていますし、ベイスターズもひとつずつ今年から始めています。ファンの方にとっても、データが加わることでより楽しみが増えると思います。」

 チームの戦術・戦略からファンサイドのプレイスタイルまで変えていくテクノロジーの波が、いかなる恩恵をもたらすのか、加速度的に早まる進化から今後も目が離せない。

《取材協力》
横浜DeNAベイスターズ
https://www.baystars.co.jp

<Text:三宅隆/Edit:アート・サプライ/Photo:下城英悟>

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