インタビュー
2017年7月6日

20代で現役を引退し、野球スクールを運営。King Effect増渕竜義氏(前編)【元プロアスリートに学ぶ、ビジネスの決断力 #2】 (2/2)

元プロのセカンドキャリアとして使ってほしい

--野球に関わるお仕事は他にもいくつかある中で、なぜスクールを開こうと考えたのでしょう。

 まず会社を立ち上げようと思ったきっかけからお話しすると、現役を引退したプロ野球選手が、セカンドキャリアで野球に携わるケースはよくあると思います。例えばコメンテーターであったり、解説者であったり、大御所になれば球団の監督に就く方もいますよね。でも、それはごく稀なケースです。日本で大記録を残していたり、メジャーで活躍していたりという確固たる実績を残した方のみが手にできる立場だと思います。

 大半の選手は引退すると、サラリーマンとして第二の人生を歩んだりお店を構えたりと、野球とは別の環境でセカンドライフを送ります。でも、中には私のように本心は野球に携わっていたいと思う方もいるでしょうし、決してやりたいことではない仕事に就いている方もいるかもしれません。
 
 引退を決めた選手は、球団から後の就職先を紹介してもらえるシステムがあります。でも、会社名と待遇と簡単な事業内容を見ただけで、一体どんな会社でどんなことをするのかなんか明確にわかりませんよね。皆ずっと野球ばっかりやってきたわけですから。

 会社を設立し、そこでいろいろなことを経験し、多くの方と知り合って人脈を広げれば、野球人生を終えて次の人生に向かう方に仕事を紹介できるかもしれないし、もしかしたら一緒になにかできるかもしれない。そういう立場になれたらという願望もあって立ち上げました。

--つまり、セカンドキャリアに悩む方へのコンサル的な考えをお持ちということですか。

 やはりプロアスリートは、現役よりも引退後の人生の方がはるかに長いので、何となくで決められるものじゃないですよね。少しでもそういった方々の役に立てたらうれしいです。でも、会社を立ち上げてビジネスしていくんだという感覚とは少し違うかもしれませんね。私の場合は会社を大きくしてゆくことよりも、もっと多くの人と触れ合って、自分にとって大きな財産になるような人間関係を築いたり、野球のおもしろさや素晴らしさを広く伝えたいという気持ちが今は大きいです。社会に出るにあたって大事なのは、個の人間性と、人とのつながりだと思っているので。

--それは9年間の現役時代で得た価値観ですか。

 間違いなくそうです。プロの世界で本当に多くの方と知り合い、近付けたことによって、人として成長させてくれたと思っていますし、何よりそういった方々との関係は引退した今でも続いていたりして、本当に財産と言える大きなものを手に入れた気がしています。野球を楽しめたのはもちろんですが、やはり人との出会いが一番大きいでしょうね。

▼後半はこちら

野球の技術よりも、おもしろさを伝えるスクールにしたい。King Effect増渕竜義氏(後編)【元プロアスリートに学ぶ、ビジネスの決断力 #2】 | ビジネス×スポーツ『MELOS』

増渕竜義(ますぶち・たつよし)
1988年5月3日生まれ。埼玉県草加市出身。元プロ野球選手。2006年、東京ヤクルトスワーローズにドラフト1位で入団。サイドスロー気味のスリークォーターから繰り出される時速150キロ台のストレートを武器に活躍。2014年に日本ハムファイターズに移籍し、翌年引退。現在は野球スクール運営などを手がけるKing Effectの代表を務める

<Text:上野慎治郎(アート・サプライ)/Photo:小島マサヒロ>

1 2