熱い応援よりも、ただ自分の喜んでいる姿、悲しんでいる姿を親に見て感じてもらえることがうれしかった。元ラグビー日本代表・大畑大介(後編)│子どもの頃こんな習い事してました #6 (2/2)
娘はピアノやバレエなどを習っていますが、僕がやってほしいと思っているのは習字だけ。理由は、字のきれいな女性が好きだからです。本人たちは乗り気じゃないですけど、僕は子どもに対する接し方も自分本位で相手の気持ちは考えないので(笑)。いろいろな習い事をして選択の幅を広げて、将来、自分で合う合わないの選択ができる子になればいいなと思っています。
――スポーツに力を入れてほしいという希望は?
娘たちはスポーツはやりたくないようです。足は速いし力もあるし、能力は高いことは本人たちもわかっているけど嫌みたいですね。毎年のように手術して、歩けない、腕が上がらないパパを見ているので、スポーツのしんどさが潜在意識にあるように思う。僕自身も自分がスポーツ選手としていろいろな世界を見てきたからこそ、子どもを通して違った世界を見たいので、無理に勧めてはいません。
親は子どもよりも熱くならないこと、ほめること
――ラグビーのようなチームプレーを通して協調性を養いたいという親御さんは多いと思います。
僕、ラグビーしながらも協調性はまったくないですよ。ラグビーのすごいところは、僕みたいなやつを受け入れてくれる、多様性のある競技ということ。個性を尊重しながらチームとして成り立つんです。
――子どもにスポーツをさせたいと考えている親御さんへ、アドバイスをお願いします。
親が熱くならないこと。よく「うちの子がラグビーをやめたいと言うんですけど、続けるよう言ってくれませんか」と相談されることがあるんですよ。僕はその子に「他のことをやりたいなら、そっちやったらええ」と言います。無理にやらされていても続かない。結局、楽しいことがいちばんだと思うんですね。それでも続けさせたいなら、親が楽しむ姿を見せたらいいじゃないですか。子どもは親が楽しんでいるものに興味を抱いて一緒にやりたがるので。
それから、子どもがうまくできなかったときに「なんでできへんねん!」とダメ出しせず、できたことや、失敗してもチャレンジしたことをほめてあげること。そうすればチャレンジする意欲がどんどん膨らんでいく。ほめられて嫌な気持ちになる人はいません。親だからこそ周りの評価に関係なくほめるといいと思います。
――それが実際はなかなか難しいんですよね……。
僕も娘につい「なんででけへんの!」と言ってしまうことがあるけど、後から「やってもうた、次はほめてあげよう」と思う。その繰り返しです。最後にはほめたらいい。子どものラグビースクールで指導することがあるんですが、そのときは逆にできることだけさせるのではなく、あえてできないことも経験させて、自分で考えて行動すればできなかったことができるようになるという楽しさを味わえるように意識しています。
――最後に、アンバサダーを務めていらっしゃる「ラグビーワールドカップ2019」に向けての意気込みを。
今の日本代表チームは、2015年のワールドカップで世界ランキング3位の南アフリカに勝利したという成功体験があるので、僕らの時代にはなかった自信を持っています。それは大きな強み。前回のワールドカップ日本代表チームよりもスタートラインとしては高いところに立っているので、がんばってほしいですね。
今回は初めての自国開催、アジアにおいても初のワールドカップです。大会としてもしっかりとした成功を収められれば、ラグビーがもっと世界に認めてもらえる競技になると思いますし、日本においてもスポーツの楽しみ方を広く知ってもらえるいい機会なるでしょう。そして、翌年のオリンピック・パラリンピックの成功にもつながるので、極めて大きな意味のある大会と捉えています。
僕はスポーツと出会って救われました。今回、僕がアンバサダーとして活動することで、同じようにスポーツと出会えてよかったという子どもが1人でも増えるような環境を整えてあげたいと思っています。
▼前編はこちら
ラグビーをしている時だけは自分を素直に表現することができた。元ラグビー日本代表・大畑大介(前編)【子どもの頃こんな習い事してました #6】 | 子育て×スポーツ『MELOS』
[プロフィール]
大畑大介(おおはた・だいすけ)
1975年生まれ。大阪府大阪市出身。東海大仰星高校時代に高校日本代表としてニュージーランドに遠征。京都産業大3年時に日本代表に選出。1998年神戸製鋼に入社。2002年フランス・プロリーグのモンフェランに移籍。2003年、神戸製鋼コベルコスティーラーズに復帰。2011年引退。現在はラグビーW杯2019アンバサダーとして、メディア、講演等で精力的に活動中
所属事務所: 株式会社ディンゴ http://dingo.jpn.com/
<Text:安楽由紀子/Edit:アート・サプライ(丸山美紀)/Photo:小島マサヒロ>