成績やメダルよりも「でっかいトリプルアクセルが飛びたい」。プロフィギュアスケーター無良崇人(後編)│子どもの頃こんな習い事してました #15 (2/3)
「上を目指せるか」。子どもが岐路に立ったときに親は……
――そのお考えはキャリアを重ねていったときにたどりついたんですか?
下の世代の子たち、結弦や(宇野)昌磨くんが僕らの上がっていくペースを軽く飛び越えるくらいのペースで抜いていく。得点に上限がない新採点方式で育ち、なおかつ4回転が当たり前という認識を持っている彼らと、トリプルアクセルが頂点という認識からキャリアの途中で4回転という認識に変えなければいけない世代とは、超えていくスピードが全然違う。弓弦、昌磨は破竹の勢いで上の世代を抜いていったので、彼らと競っていくには限界があると感じていました。それなら違う方向性に行かないと自分自身もしんどい。
――“上ばかり目指すのではなく、個性を伸ばす”ということは、スポーツに励む子どもを持つ親御さんの指導の参考になります。
フィギュアは、表現することが主体のスポーツなので自分らしさを出すことが目標になりうるんですが、違うスポーツであればまた別の目標になるかもしれません。ただ、その目標をずっと持ち続けていられるかどうかが大事だと思います。
一生懸命競技に取り組んでいるお子さんであればあるほど、常に「上を目指さなければ」とがんばってしまうと思うんですけど、本当に自分がその上を目指せるのかどうか判断しなければいけない年齢がいつかは絶対に来ます。そこでもし、上を目指せないとなったときに、うまく切り替えられるか、親御さんが見守ってあげてほしい。
僕の両親も成績どうこうを望むのではなく僕が目指す方向性に同意してくれたので、自分がやるべきことを見定めてそのクオリティを上げていく練習にうまく切り変えていくことができました。もしそこで意見や価値観が合わずに、無理に4回転を練習させられていたら自分の体が壊れて終わっていたでしょう。この差は大きい。練習の内容も試合に対する臨み方もすべて変わってくるんです。
――それは無良さんが「こうしたい」と直接コーチに言ったのですか?
いろいろ試していくうちに、19歳くらいで親父とちゃんと話せるようになって、自ずとお互いが同じ方向性にスッと入っていった感じです。やっぱり親父は誰よりも僕のことを日常的な部分から練習、両方よく見ていると思う。