2017年10月3日

【初心者が絶対に覚えておきたいルールとマナー #6】なぜゴルフでは、用具(クラブ)に関するルールが厳しいのか

 これからゴルフを始めたいと思っている人、ゴルフを始めたばかりの人。そしてベテランだけどルールはイマイチ。そんな方々にお届けするのが、堅苦しさ一切なしの「ルールとマナー」シリーズ。読んで納得、腹落ち必至の解説でお届けします。6回目は、「なぜゴルフの用具にルールがあるのか」です。

 ゴルフにはさまざまなルールがあります。これはルールを定める機関がイギリスとアメリカにあり、定期的にルールを改正しています。その改正の多くは道具に関することが、数多くあります。ここ最近はほとんど道具に関するルール改定だったといってもいいでしょう(2019年の改正は、本質的な改正が多くあるようです)。

飛距離を制限するためのルール(道具編)

 ほかのスポーツで使う道具に関しての項目があります。ゴルフは特に道具に対するルールが細かく、多く、厳しく記載されています。特に最近は道具の進化による改正が増えています。クラブの進化が、ゴルフというゲームに多くの影響を及ぼしているのです。

 ゴルフの道具のルールに、似ているのは野球のルールでしょう。実は野球の歴史の中でも、飛ぶバット、飛ぶボールが問題になったことがあります。ゴルフも野球は、飛距離が出るほうが絶対的に有利ですから、飛距離に直結する道具に対して厳しく規定されるのです。

 では、具体的なルールを説明していきましょう。飛距離が一番出せるクラブは、ドライバーです。ドライバーは、まっすぐ遠くへ飛ばしたいもの。飛距離が出て、ミスに対する寛容性が高い道具があれば、スコアはよくなるはずです。

 まず、ミスへの寛容性は、ヘッドの体積(460cc以内)、慣性モーメント(5900gcm2以内)という規制、飛距離に繋がるフェースの反発力と、クラブの長さ48インチ未満が定められています。この数値の規制を守ることで飛距離を抑えようとしています。

 今、高反発のドライバー、つまりルール違反のドライバーが人気です。競技では使えませんが、プライベートで使うのは何の問題もないと、僕は思っています。ゴルフは飛距離が出ないとつらいスポーツです。年齢的、体力的理由で飛距離が出ない為、ゴルフを辞めるぐらいならぜひ使って楽しんでほしいと思います。

飛距離に対するルール(ボール編)

 もう1つ飛距離への影響が出るのは、ヘッドの重さです。ヘッドが重いほうが飛距離に有利なのですが、重すぎると振り切れなくなりヘッドスピードが落ちてしまいます。振り切れる範囲で、できる限り重いヘッド重量を選べば飛距離アップする可能性が残されています。

 ルールに厳しいのは、クラブだけではありません。ボールも細かくルールで定められています。まずは重さです。45.93グラム以下とこれ以上重いボールはルール不適合になります。なんとなく軽いほうが飛びそうですが、ゴルフは物理ですから、重いほうが衝突エネルギーの量が増えるので飛びます。

 そしてボールの直径は、42.87センチ以上と定められていて、これ以上大きくしてもOK、小さいボールはルール違反です。小さいほうが空気抵抗は確実に減りますから、風に強く飛距離に有利です。ボールの大きさは1990年に統一されるまで、2つのスタンダードがありました。

 ゴルフのルールは、イギリスのR&A(Royal and Ancient Golf Club of St Andrews)、とアメリカのUSGA(United States Golf Association/全米ゴルフ協会)という団体が決めており、この2つが競技して共通のルールを作るのですが、ボールの大きさだけは、60年近く統一されませんでした。今でもゴルフ練習場のボールに混ざっていることがありますので、よくチェックしてみて下さい。

 飛距離に関するルールは、ゴルフの道具の技術革新が行われるごとに、変更されてきた経緯があります。特にツアープロの飛距離が劇的に伸びてしまい、従来のゴルフ場を改造して距離を伸ばしても追いつかなくなっています。今後も道具のルールは見直されて行くことでしょう。

クラブは14本必要? 場所によって制限される?

 ゴルフの競技に出る際、もちろんプライベートなコンペでも大切なことですが、クラブは14本まで携行できます。誤解している人が意外と多いのですが、“必ず14本持っていかないといけない”というわけではありません。14本まで携行できるだけで、7本でも2本でも1本でも大丈夫です。

 あと場所によって、使用クラブが決められていることがあります。グリーン上はパターの使用に限るというルールです。これは正式なゴルフのルールではなく、ゴルフ場が定める「ローカルルール」です。プロの試合では、このルールが適応されず、グリーン上でウエッジなど使っている場合もあります。

 そしてご存知かと思いますが、ティグラウンドではドライバーを使わなくてはいけないというルールはありません。原則、場所によりルールで、使用するクラブを制限することはありません。パターの場合も、あくまでグリーン保護のためのゴルフ場が定めたルール、ローカルルールなのです。

 道具のルールは、もし変更があっても猶予期間が設けられます。いきなりルール違反とはならないので、気になる方はゴルフショップなどで聞いてみるのが良いでしょう。そしてルールブックに書いてある、道具のルールもぜひ読んでみて下さい。

[著者プロフィール]
マーク金井(まーく・かない)
クラブアナリスト。ゴルフ誌だけでなく、TV、ラジオなどさまざまなメディアで活躍する、自称「ゴルフ芸人」。ハンデ3の腕前と豊富な知識を活かした、わかりやすい試打レポートには定評がある。最近はクラブ設計者としても活躍、メーカーが作れなかった、アマチュアを救うクラブを設計。悩めるゴルファーのために自らゴルフスタジオ・アナライズを主宰している。最近発売した電子書籍「一生役立つゴルフ」シリーズ3部作は、アマチュアゴルファーを救うコースマネジメントや考え方が話題となり、電子書籍としては、記録的な売上を記録して、書籍として発売される。
■ANALYZ
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<Edit:松田政紀(アート・サプライ)/Photo:Getty Images>