「アロマオイル」がストレス解消によい理由とは。使い方とおすすめの香り一覧[専門家監修]
超ストレス社会の現代では、自分なりのストレス解消法を持っておくと安心です。体を動かす、食べる、買い物をする、眠る、趣味に没頭する……どんな方法でストレス発散を行うかは人それぞれですが、今回は「香り」を用いたストレス対策を紹介したいと思います。
[教えてくれるのは]
朝澤恭子(あさざわ・きょうこ)
東京医療保健大学 東が丘看護学部 看護学科准教授。専門分野は母性看護学・助産学など。看護学博士・看護学修士・助産師・看護師・アロマテラピー検定1級取得。
香りがストレス対策に良い理由
良い香りを嗅ぐことは、ストレス対策としておすすめだと言われています。
嗅覚からの刺激は、大脳辺緑系に直接届くことが知られています。これは他の五感(視覚・聴覚・触覚・味覚)と比べて、嗅覚だけが持つ特徴です。
人は嗅覚を担う鼻腔(鼻の内部)で香りの分子をキャッチし、感情・本能を司る大脳辺縁系へと向かいます。そこで記憶と香りを結合させ、過去に感じた香りとそのときの記憶をマッチングさせます。
その後、自律神経系の調整を行う視床下部へ。自律神経系、免疫系、内分泌系の機能のバランスを整え、体や心に影響を与えます。
好きな香りを感じると「いいニオイ~」とリラックスしますが、気のせいではなく、上記のようにきちんと脳に作用しているのですね。そういえばMELOSでも、スポーツパフォーマンスと香りの関係や、脳疲労と香りの記事がありました。
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自然の香り、好きなルームスプレー、入浴剤や柔軟剤の良い香り、おいしそうな食べ物の香り……どれもメンタルによい影響を与えてくれそうですが、なかでもおすすめなのが、アロマオイル(精油)を用いたアロマセラピーです。
セラピーと聞くと難しそうなイメージですが、とっても簡単。アロマオイルさえあれば、特別な道具がなくても楽しめます。
アロマセラピーとは
アロマセラピーとは、「アロマ(芳香)」と「セラピー(療法)」からなる言葉で、植物から抽出された精油を用いて、疾病の治療や予防、心身の健康やリラクゼーション、ストレス解消することを目的としています。
用意するものはアロマオイル。植物が産出する揮発性の油です。種類にもよりますが、1本1000円くらいから購入できます。
アロマオイルの使い方
加熱式ディフューザーやランプ、加湿器などに入れて香りを拡散しているのを見たことがあるかと思いますが、特別なアイテムを使わずとも、さまざまな楽しみ方があります。
芳香浴
ティッシュやハンカチに精油を1~2滴たらして枕元に置く。
蒸気吸入
お湯に精油を1~3滴落とし、立ち上がる香りの湯気を楽しむ。
沐浴
浴槽に適温の湯を張り、精油を1~7滴入れてよくかき混ぜ、肩まで浸かる。
手浴
洗面器などに適温の湯を張り、精油を1~3滴落として手を浸す。
足浴
洗面器やバケツに適温の湯を張り、精油を1~3滴落とし、足を浸す。ふくらはぎまで入るバケツがおすすめ。
湿布
洗面器に適温の湯を張り、精油を1~3滴たらす。タオルを浸し、精油を含む面が内側になるように折りたたんでから軽く絞り、湿布する部分にあてる。
トリートメント
植物性のオイル(アーモンドオイルやホホバオイル)をベースに、精油を1%以下の濃度(10ccのオイルに精油1~2滴ほど)になるように混ぜて、肌に塗布する。
肌が弱い方や子どもには、アーモンドオイルよりも刺激の少ないホホバオイルをベースオイルに使用するのがおすすめとのことです。
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どんなアロマオイルを使えばいい?
アロマオイルには、それぞれ特有の芳香・効能があります。有名なのはラベンダーですね。枕元用のサシェや入浴剤にもよく使われる香りです。
また、グレープフルーツの香りはダイエットにもよいと昔から言われていますね。
ラベンダー
リラックス効果、不安や不眠を改善
イランイラン
リラックス効果、催淫作用、女性ホルモンの調整
オレンジ
リフレッシュ効果、幸福感アップ、食欲抑制・代謝アップ・脂肪燃焼促進
グレープフルーツ
リフレッシュ効果、食欲抑制・代謝アップ・脂肪燃焼促進
レモン
リフレッシュ効果、食欲抑制・代謝アップ・脂肪燃焼促進
ゼラニウム
抗うつ、ホルモンバランス調整、女性ホルモンの調整、鎮静、筋肉弛緩、抗菌
ペパーミント
リフレッシュ効果、清涼感、鎮痛、鎮痒、冷却、防腐、殺菌
レモングラス
抗菌、殺菌、抗腫瘍作用、風邪の予防、腹痛、下痢の緩和、リフレッシュ、虫よけ
カモミール
気分が落ち着く、鎮痛、鎮静
コリアンダー(パクチー)
安心感、心の平穏、胃腸の働き、消化助長、活性酸素除去
ナツメグ
心に元気と活力を与える、活性酸素除去
お悩み別に選んでみるのもおすすめ
スッキリしたいとき
レモン、ペパーミント
ストレス、不安、不眠
ラベンダー、オレンジ
美容・ダイエット
グレープフルーツ、オレンジ
食欲不振
ナツメグ、コリアンダー(パクチー)
片頭痛
ラベンダー、イランイラン
冷え性
ジンジャー、ひのき
月経不順、PMS(月経前症候群)、更年期障害
イランイラン、ゼラニウム
アロマオイルを使用するときの注意点
朝澤先生によると、アロマオイルを使うときは、以下に注意が必要であると述べています。
- 精油はそのまま肌につけず、必ず希釈する
- オレンジやレモンなどの光毒性(紫外線などの光を受けることによって生じる炎症を引き起こす毒性)のある精油の使用後は直射日光を避ける
- 妊娠中は避ける(収縮、弛緩の作用で胎児への影響が出る可能性があるため)
- 悪性腫瘍や炎症部位、放射線治療部位への使用は避ける
- 3歳未満の子どもへの使用は避ける(脳への刺激が強すぎるおそれがあるため)
- 3歳未満の子どもの側で使用するのを避ける(子どもがいる部屋とは別の部屋でアロマを使うなど)
当然ですが経口摂取はできません。子どもやペットがいるおうちでは、誤って飲まないよう注意が必要です。
アロマオイルはどこで買える?
ハンズやロフトといった生活雑貨店や、身近なところだと無印良品でも手軽に購入可能です。
本格的に楽しみたい、くわしく聞いてみたいという場合は、生活の木やenherb(エンハーブ)、ニールズヤードレメディーズ、Aroma Bloom(アロマブルーム)、Meadows(メドウズ)などの専門店があります。
アロマオイルの買い方
アロマオイルは100均でも見かける一方、専門店では数千円と、値段にばらつきがみられます。値段が高いほうがいいのか、質の良いアロマオイルを買いたいとき、どんな基準で選ぶとよいのでしょうか。朝澤先生のコメントつきで解説していきます。
質の良いアロマオイルを買いたいとき、どんな点に注意するといい?
「天然精油、オーガニックがお勧めです。100%植物から抽出された精油であるか、表示情報を確認していただきたいです。精油の学名、抽出部分、産地、抽出方法、品質、などがラベルに明記されているか、ボトルはガラスで遮光タイプかという点に注意するとよいでしょう」(朝澤先生)
朝澤先生によると、日本アロマ環境協会が提示している「AEAJ表示基準適合認定精油」として認定された精油ブランドもおすすめとのことです。
値段が高い精油のほうが効果を感じやすい?
「植物の花、葉、果皮、果実、心材、根、種子、樹皮、樹脂といった精油の種類により、価格が異なります。比較的安価なのはオレンジやラベンダーです。高価なのはネロリ、ジャスミン、ローズなどです。価格よりも、100%植物から抽出された精油であること、有機栽培した植物から蒸留されていること、鮮度が高いことにより効果が高いとされています」(朝澤先生)
アロマオイルでよくあるギモン
精油同士を混ぜてもいい? 混ぜないほうがいい精油はある?
「お好みの精油、2~4種類を1~2滴ずつ、ブレンドしてお楽しみいただけます。混ぜない方がいい精油については、現在とくに報告はされておりません」(朝澤先生)
花粉症などアレルギーを持つ体質でもアロマオイルを使用していい? 避けたほうがよいアレルギー×アロマオイルの組み合わせはある?
「アレルゲンとなる精油として一部が報告されています。カモミール、ヘリクリサムなどのキク科、レモングラス、パルマローザなどのイネ科の精油は、アレルギー疾患を持つ人にとってはアレルギー反応を起こすことがあると報告されています。一方、精油のティートリーとレモングラスは、アレルギー症状を緩和する可能性があることが論文で報告されています」(朝澤先生)
アロマオイルに使用期限はある?
「開封して1年以内に使用すると、香りも効果も保てます。オレンジやグレープフルーツなどの柑橘系は1か月程度で香りが劣化します。遮光性のガラス瓶に保管し、直射日光に当てない方が鮮度を保てます」(朝澤先生)
お風呂に入れるときはそのまま入れていい?
「精油を、お湯の入った湯船にそのまま1~7滴ほどお好みで入れ、お湯と混ざるようによくかき混ぜます。お肌に直接、精油を垂らさないようにしましょう」(朝澤先生)
市販の化粧水に混ぜてもいい?
「市販の化粧水は有効成分や香料が入っているため、精油とのブレンドはおすすめしません。精油は、ホホバオイルやスイートアーモンドオイルなどに混ぜてお肌に使用すると、保湿効果が期待できます。上記オイル以外で手作りする場合は、精製水+無水エタノール+精油、無添加で無香料の乳液+精油といったブレンドがおすすめです」(朝澤先生)
アロマオイル、アロマ精油、エッセンシャルオイルはどう違う?
「表現はさまざまですが、同じものを指します。植物の香り成分を抽出したエッセンスです。植物の花、葉、果皮、果実、心材、根、種子、樹皮、樹脂といった天然の素材から抽出した揮発性の芳香物質です」(朝澤先生)
ペットのいる部屋でアロマディフューザーは問題ない?
「人とペットでは代謝速度が異なり、ペットの体内での代謝や安全性がすべて明らかになっていません。溶剤となっているフェノールは哺乳類にとって急性毒性があることと、アルコール類は人に比べてペットでは代謝されにくいことが分かっています。人とペットでは、匂いを感じる強さが違うため、ペットがいい香りと感じるかも明らかになっていません。ペットの中毒も想定されるため、問題がないわけではなく、使用を希望される場合は獣医に相談の上、決めていただければと思います」(朝澤先生)
ペットの口や鼻から精油が入らないよう、保管場所や保管方法に気をつける必要がありますね。
【引用文献】
日本アロマセラピー学会(2008)アロマセラピー標準テキスト 基礎編 丸善株式会社
日本アロマ環境協会(2019)アロマテラピー検定 公式テキスト 世界文化社
丸山奈保,他(2020) 血管内皮細胞での炎症応答に対する植物精油の抑制作用の検討. アロマテラピー学雑誌22(1) :10-16.
和田文緒(2015)アロマセラピーの教科書 新星出版社
<Edit:編集部>