インタビュー
フィットネス
2024年1月30日

『もう走れない』と思ったとき、どうする?プロランナー・松村幸栄選手から学ぶマラソンHOW TO (3/4)

プロランナーのコンディショニング術。こんなときどうしてる?

──“ランナーあるある”の体の痛みや故障ですが、これを防ぐためにどんな対策を行っていますか?

「私自身、ここ2~3年は怪我をしてないのですが、食事を含め、しっかりと体を作ることが大切だと感じています。食事、筋力をつける、体の使い方(連動性トレーニング)を磨く。この3つを積極的に取り入れるようになってから、怪我や故障はなくなりました」(松村選手)

──これも“初心者ランナーあるある”ですが、新しいシューズを履いたとき、靴擦れやマメを防ぐおすすめの方法はありますか?

「マメができる人は、滑り止めがついている5本指の靴下がおすすめです。あとは、本番で新しいシューズや靴下を履かないようにする。レース前から試し履きをして慣らすのが大事かと思います」(松村選手)

──レース直前のウォームアップが知りたいです。

「ウォームアップは普段の練習と変わらず、ストレッチから始まって連動性トレーニングを行い、体の動きをよくしています」(松村選手)

──プロランナーとしてプレッシャーとはつねに戦っているかと思います。レース前で緊張しているとき、プレッシャーにどのように対処したらよいでしょうか?

「私、本番に弱いタイプなんですよ(笑)。昨年はプレッシャーに負けて思うような走りができなくて、失敗ばかりしていました。なんでこんな失敗するのかなって思ったとき、一番は『自分の走りに自信を持てていなかった』ってことだと感じたんです。そこで、自分なら大丈夫っていう自信を普段からつけるために、毎回の練習を大事にするようになりました。走っているときも、自分自身にプラスの問いかけをしてあげる。その積み重ねが走りへの自信に繋がっていきました。もちろん今も緊張はしますが、『私は大丈夫』って自分自身に言い聞かせられるマインドになり、自分の走りができるように成長してきたと感じています」(松村選手)

──レース中はさまざまなキツイ場面が出てくるかと思いますが、『もう走れない』という気持ちになったとき、どのような考え方で乗り越えていますか?

「『もう走れない』と思うときは自分の走りに集中できていない。気持ちだけでキツさに負けてしまっているので、まず自分に問いかけます。本当にもう走りたくない、やめたいのか。気持ちが負けているのか、本当に体が無理なのか、走りながらじっくり問いかけます」(松村選手)

──キツイのは体なのか心なのか、切り分けてみるのですね。

「走っていて厳しいなって感じる場合、自分が無理なペースで走っているということなので、少しペースを落とします。フルマラソンの場合、30キロ以降が体も心もきつくなってくるのですが、そこで1~2キロほどペースを落としてみて、それでも本当にもう限界! という感じなら、やめるのもありなのかなと思います。ただ、そこで意外と元気になったりするので、マラソンはメンタルの扱い方も大事になってくるなと強く感じています」(松村選手)

──自分に負けないメンタル作りということですね。

「本当にきつくなってくると、もう表情が『苦しい!』って感じに歪むんです。そこで試しに口角を上げてみると『あ、意外とそうでもなかったな』みたいに感じたりします。実は、今年1回目の大阪国際女子マラソンのとき試してみたんですよ。スタートからゴールまで一人だし、風も強くて『苦しい、きつい』と思ったんですけれど、ちょっとニコッってしてみたら、『まだいけるかも』って感じたんです。ホントか? って思う人はぜひ試してみてください。表情を変えることでキツさがどれだけ和らぐのか」(松村選手)

──たしかに、口角を上げることで脳は楽しいと勘違いするって、聞いたことがあります。

「はい。私はランニングイベントも開催しているのですが、今日はキツイ練習ってわかっているときの向き合い方にも、それが現れると思っています。キツイ練習だなって感じている人は、スタート前からだるいなって表情をしている。そういう表情の人は大体、走っていると離れてしまったり、気持ちで負けているタイプが多い印象です」(松村選手)

──気持ちで負けないようにする良い方法はありますか?

「苦しいときは苦しいことを考えがちですが、終わった後に好きなものを食べようとか、自分にご褒美あげようとか、考え方を少し変えるだけでも苦しさが和らぐと思います。たとえば私の場合、苦しかったり諦めそうになると、頭の中で『ああーもう無理! 無理!』って思っちゃうんですが、そこですかさず『大丈夫』って自分に言い聞かせると、意外と冷静になります。だからキツさで気持ちが負けそうなときは、『いや大丈夫、大丈夫』って自分に言い聞かせてほしいです。ぜひお試しください!」(松村選手)

──長いコースを走っていると、足裏や膝に痛みを感じることがあるかと思います。こうした場合はどのように対処していますか?

「そういう状態になったら、無理せず止めるかストレッチを行うと思いますが、私はあまりそういう状況にならないですね。もし違和感があったらテーピングで入念に準備したり、それこそレースに出場しないという選択肢になります」(松村選手)

ちなみに、松村選手のコンディショニング面を担当するパーソナル治療&トレーニングスタジオ BACK AGING(バックアゲイン)の和田有稀奈さんは、次のように語っています。

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