やっぱ、僕はプロレスが好き。追い込まれるほど“火事場のクソ力”が出る。新日本プロレス中西学『キン肉マン』【私のバイブル #2(前編)】 (3/3)
オリンピックでいい成績を収められなかったから、ほんとなら気を引き締めてやらないといけないのに、まあ浮かれてた。お祭り気分でしたね。そのうちプロの厳しさも味わって、プロレスラーにはなったけど、これからは闘うことで食っていかないといけないんだと反省して。それからは、考えるのが苦手な自分なりに勉強したり、いろいろ試したりしましたよ。
― 中西さんは得意技をたくさんお持ちです。実際に練習したり技を覚えるときに、『キン肉マン』が参考になったりしたのでしょうか?
新しい技というのは年々いろんなものが出てきてます。じゃあ、マンガのような技ができるかと言ったら、それは無理かもしれませんけど、自分が周りからいろいろアイデアをもらって作った技というのは、やっぱりキン肉マン的なものが多いかもしれないですね。
たとえば、昔だったら考えられなかった複合技とか。ヘラクレスカッターというのは、アルゼンチン・バックブリーカーで持ち上げて、左右に振ってから、ネックブリーカーのようにパコッと背中から落とす。マナバウアーというのは、アルゼンチン・バックブリーカーから相手を一回着地させて、続けてジャーマン・スープレックス・ホールドをかけるとか。練り上げたというより、けっこう無骨なところで作った感じで、そのへんはキン肉マンのエッセンスをもらっていると思うんですよ。
― それが中西さんのオリジナルになる。
人を真似ようとしても、同じことができない(笑)。日本人って自分の個性を出すよりも、みんなと同じことをやって、平均レベルがいいみたいなところあるけど、この世界はみんなと違うことで生き残らないといけない。もちろん、プロレスにもチームワークが必要なときもありますけど、まず自分個人、オリジナルを出していかないと。
― 『キン肉マン』では、試合展開や選手の心理状態もうまく描かれてます。
僕は駆け引き的なことは苦手なので(笑)。とにかく、どんな技が来たとしても、ちゃんと受けられるように自分の身体をしっかり作ることが大事。
ウィークポイントじゃなくて、ストロングポイントを攻め合って勝敗を決めるのがプロレスなんです。それに対してちゃんと身体を鍛えているか、日頃どれだけやってるかというのが、レスラーとしての誇りなんですよ。他の選手はいろんな駆け引きがあるかもしれないけど、僕はこの最低限だけでやってます。はい。
― 日頃から鍛えているからこそ、「火事場のクソ力」が出るのでしょう。
攻められて追い込まれるほど、そういうものが出てくるというか。自分が若いときにも、汗みどろになって、ヒーヒー言いながら練習して、もうしんどくて、これ以上できんわー!って。 そこからまたコーチに絞られて。やっぱり人前に出たら見栄も張らないといけないんだけど、それは本当の自分じゃない。練習でヒーヒー言って、半泣きになってるのが本当の自分。
― だから頑張れるのですね。
やっぱ、僕はプロレスが好きだから(笑)。
▼後編に続く!
友情を教えてくれた。超人たちの戦いは本物のプロレスみたい。新日本プロレス中西学『キン肉マン』【私のバイブル #2(後編)】 | 趣味×スポーツ『MELOS』
[プロフィール]
中西学(なかにし・まなぶ)
プロレスラー。1967年京都府京都市生まれ。高校時代からレスリングを始め、専修大学卒業後、和歌山県庁に就職。新日本プロレスのレスリング部門「闘魂倶楽部」に入り、1992年、バルセロナオリンピックのレスリング・フリースタイル100kg級に出場。同年、プロレスラーとしてデビュー。鍛えられた肉体と怪力を活かしたファイトスタイルで活躍。ニックネームは「野人」。2009年、棚橋弘至を破り、第51代IWGPヘビー級王者に輝く。その朴訥とした天然キャラクターで親しまれ、テレビ出演も多い。
◎新日本プロレス オフィシャルサイト http://www.njpw.co.jp/
◎WRESTLE KINGDOM 12 in TOKYO DOMEイベント特設サイト http://www.wrestlekingdom.jp/
[作品紹介]
『キン肉マン』(全60巻)
ゆでたまご作のプロレス系格闘漫画。週刊少年ジャンプで1979年から1987年まで連載。超人のキン肉マン(キン肉スグル)が悩みながらも、ユニークな超人たちと闘いながら成長していく姿を描く。1983年と1991年に日本テレビ系列でアニメ化。キャラクターの姿をした消しゴム(キン消し→キンケシ)が発売され、子ども達の人気を集めた。平成29(肉)年最後の「キン肉マンの日」である12月29日(金)には、『キン肉マン 61巻』を発売予定。
◎【コミックス】集英社マンガネット S-MANGA.net http://www.s-manga.net
◎【連載】週プレNEWS http://wpb.shueisha.co.jp/comic_novel/
<Text:渡辺幸雄+アート・サプライ(松田政紀)/Photo:小島マサヒロ>