ヘルス&メンタル
2025年9月19日

「急に何もできなくなった」人生に疲れたとき、どう立て直した?整形外科医の場合

仕事、人間関係、将来への不安。

生きていれば誰しも、「もう無理かも」と思うほど心が疲れてしまう瞬間があります。気力がわかず、何をするにもエネルギーが湧いてこない。そんな「人生に疲れた」と感じたとき、人はどうやって立て直していくのでしょうか。

今回は、さまざまな分野で活躍する人たちに、「もう無理だ」をどう乗り越えたのか、そしてどのようにして前を向くことができたのかを伺いました。

登場いただくのは、医療法人藍整会なか整形外科理事長・樋口直彦先生です。

業務は山積み、3人の子どもの育児……急に何もできなくなった

やることが減る気配はなく、電話の代わりにLINEとメールの通知だけが増えていく。気づけば「未返信」が山積みで、ただでさえ苦手な返信業務が、自分の気力をどんどん奪っていきました。

私の場合、診療・手術・経営と日々の業務が多岐にわたる上に、プライベートでも3人の娘の子育て真っ只中。

それでも、どうにかしようと頑張っていたあるとき、急に糸が切れたように「もう無理……」とつぶやいて、布団に潜り込んでしまいました。何もできず、ただただ疲れきっていたのだと思います。

「寝ている暇なんてない」→「睡眠だけは死守」に変わった

私を救ってくれたのは、「しっかり眠る」という、ある意味ごく当たり前のことでした。

深く寝て、しっかり休む。それだけで、心と身体が少しずつ回復していくのを感じたのです。

ポイントは、「ただ寝る」のではなく、「良質な睡眠を優先する」と意識を切り替えたこと。「寝ている暇なんてない」と思っていた私が、逆に「ちゃんと眠ることこそが生産性を高める」と考えるようになったことで、物事の優先順位も自然と整理されていきました。

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朝ランで「考えすぎた頭を空っぽに」させた

さらに効果があったのが、朝のランニングです。

LINEやメールの返信を始める前に、まず1kmだけ走ってみる。まるで通知から逃げるようなその時間が、私にとって「考えすぎた頭を空っぽにするリセット時間」になりました。

走ることで血流も思考もスムーズになり、不思議と夜もぐっすり眠れるように。良眠と運動、このシンプルなルーティンの繰り返しが、私を少しずつ立て直してくれたのです。

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いま困難な状況にある人へ伝えたいこと

「夜はしっかり寝る」「朝は少しだけでも体を動かす」

疲れているときほど、私たちは「立ち止まること」に罪悪感を抱きがちです。

でも、休むことは「止まること」ではなく、「整えること」。ちゃんと眠って、ちゃんと自分をいたわる。それが、また前に進むための一歩になると思います。

日々のタスクや通知に追われる生活の中で、「夜はしっかり寝る」「朝は少しだけでも体を動かす」。そんなシンプルな習慣が、人生を立て直す大きな力になります。

無理に頑張らなくても大丈夫。自分のペースで、少しずつ整えていきましょう。

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プロフィール

なか整形外科京都西院リハビリテーションクリニック
院長 樋口 直彦 先生

なか整形外科樋口 直彦帝京大学医学部卒業後、いくつかの病院で勤務し、院長を経験後、2021年1月に医療法人藍整会 なか整形外科の理事長に就任。バレーボールVリーグ「サントリーサンバーズ」のチームドクターも務める。骨折治療をはじめ関節外科、スポーツ整形外科を専門に治療。

<Edit:編集部>