インタビュー
2021年8月24日

オーダーメイドのトレーニングで、広がる視野と可動域。パラ卓球・岩渕幸洋×パーソナルトレーナー・土田憲次郎(前編)│わたしと相棒~パラアスリートのTOKYO2020~ (2/4)

“御縁”はスポンサー企業のつながりから

――パラ卓球のプレイヤーは、障がいに応じてプレースタイルを工夫していると思います。ご自身の得意なプレースタイルについて伺えますか?

岩渕:足に障がいがある分、動く範囲が大きくなることが僕の身体にとってハンディになります。卓球は、対角線にボールが来る場合が多いのですが、台から離れ過ぎてしまうと、打ち返すための動作が大きくなってしまう。ですので、『前陣』と言って、台の近くに留まってプレーを展開します。自分の障がいを強みに変えるために編み出したというより、自然とそういうプレースタイルになっていったという感じですね。

前にいる分、返球により早く反応しなくてはいけないというデメリットはありますが、素早く返球できるので、相手の時間を奪うことができたり、鋭角にコース打ち分けて相手を前後左右に揺さぶることができるというメリットもあります。それがこのスタイルの特徴かなと思います。

――なるほど。

岩渕:加えて、中学3年生の時に初めてパラ卓球に出会って、初めて出たパラの大会で、自分よりも障がいの重い選手に全然勝てなくて。いろんな選手を観察すると、各選手、自分のできること、できないことをしっかりと認識して、それを補うような戦術を選択していました。では、自分に置き換えた時にどうすれば良いかと。

例えば、ラケットのラバーも、バックハンドに、『表ソフト』というイボが付いたラバーを使っています。それにより、球筋に変化を出したり、相手の打ちにくい球を返せるようにしています。次第に、自分ならこうする、ということを考えながらトレーニングするようになっていきましたね。

――ところで、土田さんと知り合ったのがリオの前。どんなきっかけがあったのですか?

岩渕:早稲田大学で競技を続けるにあたって、遠征も自己負担という環境でした。そのことをOBの方々が気にかけて、後援会を立ち上げてくださったんです。加えて、スポンサー企業さんも探してきてくださって。その企業のデザイナーさんが、たまたま土田さんに見てもらっていて、「良いトレーナーさんがいるよ」と紹介していただき、その縁でリオの前から見てもらうようになりました。

――土田さんにお仕事のお話をお伺いできますか。

土田:パーソナルトレーナーとして、身体に関する相談を受けてアドバイスをさせていただいています。皆さん、一人ひとり、骨格も、身体機能も、それから性格も生活スタイルも異なるので、均一にメニューを当てはめることはできません。もともとは、私もスポーツジムやスタジオで集団でレッスンをしていました。多い時は1対60とか。そうすると、「あの人もっとこうした方が良いのに」と思っても、対応が難しい。もうちょっと深く、良くしてあげたい、という気持ちで、パーソナルトレーナーの活動も始めたんです。

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