阿部サダヲ×中村勘九郎インタビュー。ついに最終章『1964年東京オリンピック編』へ突入【いだてん】 (3/3)
「とにかく、走っているシーンは楽しかった」(中村勘九郎)
―― 好きなセリフ、好きなシーンを教えて下さい。
[阿部サダヲ]
「スポーツで日本を明るくするんだ」ということを、ちょこちょこ言うんですよね、田畑さんは。後々、それが効いてくる。「一種目モ失フナ」という言葉も効いてくる。今後の話の展開では、最後にね、悪者が出てきます。ポケットに手を突っ込んでスローモーションで現れる、そんな登場の仕方もおもしろいのでお楽しみに。
[中村勘九郎]
この方(金栗四三)はね、スッスッハッハッしか言っていないので(笑)。小松(勝)が戦争に行くわけですが、弟子にもディスられます。金栗さんは走っているか、笑っているか、飯を食っているだけだと。まぁ、よく走ったなという感じです。25万kmも走った人ですから。とにかく、走っているシーンは楽しかったですね。「何も考えないで走っていればよか」と、これは兄ちゃんから言われたセリフですが、好きな言葉。
―― 大河の主役をやって得たものは。
[中村勘九郎]
1年半も1人の人物を演じることって、そうはない経験です。金栗さんと出会えたこと、『いだてん』という宮藤さんの作品に出会えたことがうれしかった。あとは、キャストの人たちがすごかった。後半になると、ボクも1か月に2回くらい呼ばれてワンシーンを撮るような状態が続いたんですが、行くと知らない人たちがスタジオにいる。浅野忠信さん、井上順さんなんかが歩いている。和製アベンジャーズだなと思いましたね、いろんなジャンルの人がいるので。ミュージシャン、お笑い、役者、落語家、歌舞伎俳優がいる。すごい人たちと一緒にできたのが、得たものと言えるでしょうね。走りに関しては、ボクは膝が悪いんですが、走っているとむしろ調子が良いんです。終わっていま、歌舞伎の稽古をしていた方がひざにくる(笑)。今後、ひざのためにも走り続けたいと思います。フルマラソンを走りたいので、こそっと、何処かで走ると思います。
[阿部サダヲ]
出演する役者がすごく多いんですよね。なかなか会えない方とお芝居できたのが良かったです。もうお芝居できない、ショーケン(萩原健一)さんとお芝居できたのも、自分の中に残っています。
「アクセル全開で突っ走っていきます」(中村勘九郎)
―― 第40回から始まる1964年東京オリンピック編に向けて、見どころは。
[阿部サダヲ]
第40回は、星野源くんがやっている、(1964東京五輪招致のスピーチをした)平沢和重さんを説得し続けるんですが、あれ、どうやって編集するんだろう。今までの、『いだてん』とはまた違う感じの見方ができます。ボクも、いきなり落語みたいなことをやる。都庁室で、回想と語りが続きます。ほぼ、それで終わっちゃう。戦後から1963年までを1話で見せるんですね。ボクも出来上がりを楽しみにしています。北島康介さん(戦後に活躍した水泳選手、古橋廣之進 役)がカエルを食ったりしてた(笑)。
[中村勘九郎]
あれ、本物でしたね(笑)。
[阿部サダヲ]
はい。監督が平気で「北島さん、イチバン食べてください」とか言ってる(笑)。本人は「飲み込めねぇー」って言ってましたけどね(笑)。
[中村勘九郎]
第39回が、宮藤さんが描く戦争回。主役のボクたちも1シーンか2シーンしか出ていない。うちの弟(中村七之助、三遊亭圓生 役)が、いっぱい出ています(笑)。そこから第40回につながる。いままでもすごいエンジンを積んでいましたが、ここからはニトロのエンジンで、アクセル全開で突っ走っていきます。ボクも楽しみにしています。
<Text:近藤謙太郎/Photo:NHK提供>