インタビュー
2019年10月27日

阿部サダヲ×中村勘九郎インタビュー。ついに最終章『1964年東京オリンピック編』へ突入【いだてん】 (2/3)

「(2020年東京五輪は)ボクはやっぱり、選手村に行きたい」(阿部サダヲ)

―― 中村勘九郎さんは、東京2020大会でサッカーと陸上のチケットが当選したそうですね。

[中村勘九郎]
そうなんです。やはり生で見られるのはうれしい。でも同日同時刻の陸上とサッカーが当たってしまったので、サッカーが日本戦だったら困ります。(苦笑)。

―― 阿部さんは、チケットは申し込まれましたか。

[阿部サダヲ]
ボクは、申し込んでいないんです(笑)。

[中村勘九郎]
でも水泳とか、見られるんじゃないですか?

[阿部サダヲ]
そう、そういう、ちょっと甘えた気持ちがあった(笑)。開会式とかね、行きたい気持ちはすごくあります。撮影で開会式のシーンをやったら、ますます生で見たくなった。どんな演出があるんだろう。あとボクはやっぱり、選手村に行きたいという気持ちがあります。どんな風になっているんでしょう。

―― スポーツの見方が、変わりましたか。

[中村勘九郎]
ボクは運動が苦手で、スポーツは避けてきたんです。この作品で、走ることの楽しさを知ったし、見方も変わりました。スポーツという言葉が浸透していない時代からやってきて、いまでは東京で2回目のオリンピックが開催されます。一瞬にかける選手のプレッシャーに気を遣うようになりました。いまでは、報道もあまりして欲しくないな、と思う。プレッシャーをかけたくないんです。お芝居で撮影していても、オリンピック前には白髪が増えたりしましたから。

[阿部サダヲ]
何が何でも金メダルだとか、全種目制覇だとか、言っちゃいけないなと思いましたね(笑)。自分で言ってるんですが(会場爆笑)。

[中村勘九郎]
「一種目モ失フナ」と(笑)。

[阿部サダヲ]
そうそう(笑)。それでやっぱり、駄目になっちゃうこともあるし。人はプレッシャーをかけられるとお守りを飲み込んじゃうんですからねぇ。プレッシャーはよくない、ということが勉強になりました。余計なプレッシャーをかけちゃいけないです。

「やっと俺の第2部が始まったのに、『あれオレ、主役じゃないんだ(笑)』」(阿部サダヲ)

―― 宮藤さんの脚本の凄み、ここが良かったという箇所はどこですか。

[阿部サダヲ]
毎回、内容が詰まっています。1回分で2回くらいできるんじゃないか、という量があります。これだけ詰め込んでいるのに、宮藤さんは書き終わった後に、まだ書き足らないとか言っている。まだネタがあるって、それがすごい。いくらでも入れられるんでしょうね、宮藤さんって。毎回、脚本を読んでいて思いました。カットしている部分も多いんですよ。おもしろいシーンもあったんだけどなぁ(笑)。

スポーツに関する話じゃないですか。宮藤さん、そんなにスポーツを好きだとは思っていなかったんですが、アスリートを応援する気持ちで書いていて、だから自然と泣けてきちゃう。人見絹枝さんのところ(第26回「明日なき暴走」)とか、ね。そういう気持ちも、宮藤さんの中にあったんだなって。第26回なんて、第1部が終わって第2部が始まったばかりの頃ですよ。やっと田畑の第2部が始まったのに「あれオレ、主役じゃないんだ」というね(笑)。人見絹枝物語が始まっちゃった(笑)。

聞いてみれば、宮藤さんは学生の頃にバスケ部のキャプテンを一応やっていたみたい(笑)。それも意外ですよね。でも、レギュラーじゃないのにキャプテンだったらしい。そこは宮藤さんっぽい(笑)。

[中村勘九郎]
感動するシーンを見ていて思ったんですが、宮藤さんって優しいんだなと思うんです。悲劇的なこと、感動することもそうなんですが、最後にフッと笑いがある。ここでずっと泣いていたら疲れちゃうだろうな、というタイミングで、フッと気持ちを和らげてくれる笑いのシーンがある。嘉納先生の追悼会では阿部さんがカッコいいことを言うんですが、最後に野口さんが、フッと笑えるひと言を喋る。見ている人の感情を、いろんな方向に揺さぶってくれる。そんな要素が、ふんだんに脚本に入っていました。やっていても楽しく、出来上がりを見ても毎回、すごい楽しい。「ああ、もう終わっちゃった」と思う。

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