インタビュー
2019年12月1日

松坂桃李インタビュー「ひとつのことをなし遂げるため、まわりの顔色を伺うことなく、やろうと押し出していく人は強いし、いろんな人を惹きつける」(いだてん) (2/3)

――岩田は、女性に囲まれるシーンもあります。

まず、台本を読んだときに、岩田家の方々に怒られないかと心配しました(笑)。実在する方なので。歴史をよく調べてみると、こういう描写もあったのではないか、と言われているので、宮藤さんもそこに注目してピックアップしたと思うんですが、人物のエッセンスとして、キャラの多面性を見せる上で必要だったのかな、とは思いましたね。当時の人々の豪快さというのは、こういうところにも表れているのかなと、妙な納得に行き着きました。

――岩田さんのご親族には会いましたか。

お会いしました。すごく上品な方たちでした。良いところで育ったような。だから(ドラマの中の岩田の言動について)『なんかスミマセン!』と思っちゃいました。『でも、宮藤さんの脚本にあるので仕方ないんですよ』と(笑)。だから、ドラマの感想について『どうですか』とは聞けなかったです(笑)。でも、物腰の柔らかい方たちでした。不思議な感じがしますね、実際にお会いすると。気持ちが安心する部分もありました。

――役づくりにも影響がありましたか。

そのとき、もう撮影も終盤だったので、何かを変えることはありませんでしたが、緊張感は高まりましたね。『見られているぞ。好き勝手できんぞ』という気持ちでした。でも宮藤さんの本に書いてあるので、こうします……という(笑)。

時代の移り変わりが、身体の体感として、実感として沸いてくる

――宮藤さんの脚本で感じたメッセージはありますか。

2回目のオファーになると、もうプレッシャーでしかないんですよね(笑)。1回目のときは『僕に興味をもっていただけたんですね。精一杯、頑張ります』という気持ちでやれるんですが、2回目になると、先方から『前回とは違ったモノをちょうだいね』みたいなプレッシャーを勝手に感じてしまう。それが恐くもあり、プレッシャーでもあり、より緊張が高まるんです。

――宮藤作品の魅力は、どこにあると感じていますか。

東京オリンピックが開催される裏で、これだけの人たちが動いていたという、血と汗と涙と鼻水の結晶+人情、人々の生き様みたいなものを描いている。それがストレートにも伝わってくるし、ときには変化球で視聴者をクスッとさせながらも、その後で『こういうことがしたかったんだな』とジワジワ思わせる。そんな台本を書く方だなと思いました。

――大河ドラマならではの魅力はどこにありますか。

これだけの長期スパンで撮影することは、ほかの作品ではなかなか経験できないことなので、そこが大きな差ですね。時代の移り変わりが、身体の体感として、実感として沸いてくる。大河ドラマならではの魅力だと思います。

――ドラマ全体を見て、どんなところがおもしろかったですか。

キャラクターが個性的でしたね、ほんとに。あと、いろんな人が出ている(笑)。たぶん日本の俳優さんの1/4は出ているんじゃないですかね(笑)。それくらい出ています。十人十色で人物像も違うし、時代もどんどん移り変わっていくし。激動の中で生き抜いた人たちの輝きを放つ瞬間を見るだけで、おもしろさが充分に伝わってくる、そんな作品になったと思います。

――第4クールはオジサンだらけでしたが、可愛がられましたか。

とてもそんな雰囲気ではなく、現場では『どこが痛い』『どこの病院が良い』『どこの医者が良いぞ』と、そんな話ばかり。まったく華がなかったですね(笑)。

オリンピックの話をすると、田畑さんってうれしそうな顔をするんですよ

――阿部さんとの共演エピソードについて聞かせてください。

『オモテの組織委員会では、こんなことがありました』なんてネガティブなことを報告する。そんなとき、阿部さんが『なにぃ?』と食いついてくる。そのひと言だけで、その声のトーンだけでもうおもしろい(笑)。これからおもしろい空気になりそう、ネガティブな報告だけで終わらないな、と感じさせてくれる。阿部さんが何か言うことで『このままでは終わらないぞ』と感じさせてくれるんですよね。

――田畑は失脚しますが、そのときの岩田さんの気持ちは。

ひたすら悔しかったですね。田畑さんは口が悪く、敵は多かった。でも、オリンピックに人生を捧げてきた人です。その田畑さんが、周りの圧力で組織委員会から外されてしまう。自分も、何もできなかったのが悔しい。チーム田畑の全員が、そう思っていたんじゃないですかね。そして“田畑の家での会議”を形成します。オリンピックの話をすると、田畑さんってうれしそうな顔をするんですよ。『あぁ、ついてきてよかった。やっぱりこの人だよ』と思う瞬間です(笑)。

1 2 3