インタビュー
2019年12月1日

松坂桃李インタビュー「ひとつのことをなし遂げるため、まわりの顔色を伺うことなく、やろうと押し出していく人は強いし、いろんな人を惹きつける」(いだてん) (3/3)

――オリンピック組織委員会をクビになった田畑が“田畑の家での会議”を形成します。

阿部さんのお芝居がおもしろくて。僕は岩田という役を通じて、阿部さんの演技を間近で見られるイチバンのお客さんでいれた。贅沢な時間だったなぁと思います。例えば“田畑の家での会議”では、田畑さんが怒りながら服を脱ぎ始めるシーンがある。『なにぃ!もう我慢ならん!』って言いながらズボンを下げはじめる。ここ、言葉だけでもおもしろいですよね。最後は、ほぼパンイチ状態になります(笑)。

宮藤さんの脚本は、緊張と緩和のバランスが素晴らしいなと思いました。でも『ここは緊張する場面だな』と思っていざ現場に入ると、全員が緊張したお芝居をすることで逆に笑いが起きたりね。そんなこともあり、やってみて気がつくことが多かったです。

撮影を通じて、オリンピックを身近に感じるようになりました

――1964年の東京オリンピックの舞台裏を知って、思うことはありますか。

もう、知らないことだらけでした。歴史の授業で学んだものに、例えば開会式とかがありますが、裏ではこんなドラマが巻き起こっていたなんて。ブルーインパルスを飛ばそうとか、聖火リレーを全国でやろうとか、これほど色んな人たちが当時、考えを振り絞って瞬間を盛り上げようとしていたんですね。田畑さんも『日本の最大のお祭りだ』と言ってましたが、それを本気で実現しようと、情熱を持って取り組んでいた人たちが、裏にたくさんいた。それを知れただけで、このドラマに参加できた意味があった、と思いました。

――東京で2020年に行われるオリンピックへの期待感はありますか。

開会式が、どんな感じになるのか、興味があります。「いだてん」でも、開会式については相当に揉めた。結果、その日になってみないと、どんなことが巻き起こるか、誰も予想がつかない。僕も来年、その瞬間を是非とも拝見したいです。

撮影を通じて、オリンピックを身近に感じるようになりました。「いだてん」で、1964年の東京オリンピックの裏側を疑似体験して、より身近になった。自分も、他人ごとじゃない感じがしてきて、『いよいよだな』『あれ、もうすぐじゃないか』なんて思うようになりました。

――どんな開会式を期待していますか。

どうでしょうね。田畑さんが言っていたように、日本の最大のお祭りになれば良いなと。最後は、選手みんなで勝ち負け関係なく称え合う。そこに結びつけば良いなと思います。人種も国籍も関係なく、全力で真剣勝負をした後にお互いを称え合う、そんな流れになれば素敵ですよね。

――1964年は昭和30年代。現代にも田畑さんのような人がいたら良いなと思いますか。

ひとつのことをなし遂げるため、まわりの顔色を伺うことなく、やろうと押し出していく人は強いと思うし、いろんな人を惹きつけるし、成功につながる一番の近道なんだなと、今回の作品を通して改めて思いました。今の時代にもそういう人が欲しいなと、自分の中でもどこかで期待しちゃってますね。実際は世間の目があり、どこか冷めきった風潮があって、『ふうん、そんなことを言ったら知らないぞ』と思ってしまう人が多い。賛同したら自分も被害に遭うから、手を上げる人も少なくなった。仕方ないのかもしれないですが。昔の人には熱さを感じますね。『これだけおもしろいことができるんだから、やってみようよ』という部分を、今の人ももっと押し出しても良いのかな、と思ったりします。

――第4クール全体の見どころは。

チーム田畑が動き出し、第1回から見ている方には、最初にぽつぽつ出ていた人たちが、また出始める。これまでとは違うストーリーの新たな波が訪れ、お芝居の空気感も変わりました。よりコミカルになったというか。あれ、嘉納治五郎さんがなくなるまでのテンションは何処にいったの、というくらい空気が一変して、新しい風が吹き始める。そしてオリンピック開催までの大きな波が見られると思います。最後の方は、これまでの伏線を回収していきます。ああ、宮藤さんの脚本だなと実感できるかと。是非、お楽しみください。

<Text:近藤謙太郎/Photo:NHK提供>

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