東京03角田晃広インタビュー「後半にまた出てくるとは、誰も思っていなかったでしょう(笑)」(いだてん) (2/3)
たけしさんと小泉今日子さんとのシーンは贅沢な時間
――ビートたけしさんと共演したときの思い出は。
めちゃくちゃ緊張しましたよ。タクシーの中って、いわば個室じゃないですか。後部座席に、たけしさんと小泉今日子さん(志ん生の長女・美津子 役)を乗せている。撮影カメラは外にいるので、同じ密室に3人がいる状況。なんだこの空間は、なんだこの時間は、と思いました。それで緊張して、エンスト起こしちゃったんでしょうね(笑)。旧車を実際に運転したんですが、最初にちょっと操作を教えてもらって、休憩になって。撮影を再開したときに、ギアがニュートラルに入っていなかったんでしょうね、ブレーキを踏んでいない状態だったんで、エンジンを入れた瞬間にゴンゴンゴンって進んじゃったんですよ。渋滞のシーンだったので、目の前に乗用車がいる。ヤバいヤバい、となって慌ててブレーキをかけて。「す、すみません!」って後部座席を振り返りました(笑)。そうしたら、たけしさんが「なんだ、このままぶつけてくれたら、今日は撮影なしで休みになったのになぁ」って言ってくださって。優しいお言葉を。でも「いやいや、そうしたらもう、ボクは次の撮影には呼ばれないと思います」って謝ったんですが、小泉今日子さんも「そんなことないわよ」って言ってくれて。なんか贅沢な時間で、ありがたかったですね。
――森西さんの目から見た田畑政治は、どんな人物だったのでしょう。
実際のところは分からないですけど、田畑さんってガンガンいく方じゃないですか。それを見て、森西さんも掻き立てられた部分があったんじゃないでしょうか。行動力のある森西さんの、さらに上をいくのが田畑さんという構図。
阿部さんは、あのセリフ量でね、あのテンションとスピードでっていうのがすごい。本番前は普通にリラックスされていて、始まったらあんな感じでいくわけですよ。ボクなんか、本番前はセリフを確認している。でもセリフを確認している阿部さんを見たことがないです。あのセリフの量が完全に頭に入っているんだなと、この毎日続く撮影の中で。プロの俳優の方は、すごいなと改めて思います。阿部さんは淡々と田畑の役をやられていますね。
田畑という人は、あんな勢いで周りを巻き込んでいきます。ときどき自分もつられて、ワーワー言いたくなって、森西さんの役柄を忘れて、東京03の角田の感じで返しちゃうときがあるんです(笑)。森西さんも(田畑のように)ズバっと言うときがありました。本当は、もっとジェントルマンだったのかなという気もします。スマートでかっこいい方だったと、ご家族からも聞いているので。ちょっと申し訳なかったと思うシーンもありますけれど。
ご家族にNGとか見せられないですから(笑)
――オリンピックのイメージは。
特定のスポーツが好き、ということはないんですが、4年に1回の祭典ということでテンションも上がりますし、自然とテレビも見る。ニュースも必ずチェックしたり。(注目していたのは)陸上の花形と思うんですが、短距離の100mですね。物心ついたときから、ロサンゼルスオリンピックではカール・ルイスが走っていましたし。オリンピック選手ってすごいんだな、という思いで見ていましたね。
それくらいの認識でしかオリンピックを見ていなかったから、開催までの苦労だとか、日本に限って言えばまず参加したとき、招致するとき、「こんな感じだったんだ」というのを知らなかった。いろいろあったんだなと。もう知らないことだらけだったので、興味津々で見させてもらいました。
――最初のシーンに出演したときとは、気持ちも変わりましたか。
そうですね。最初は、「いだてん」における”第1声”をいただける、このネタは後々ずっと言い続けられるな、くらいの気持ちでした。たけしさんと小泉今日子さんを乗せるタクシードライバーの役だと。それで終わると思っていたんで。また戻ってきて、物語にしっかり参加できるというのは、モチベーションも違いますよね。「しっかりやらなきゃ」と思いました。もちろん第1回でもしっかりやりましたよ。でも前回は、ちょっとお邪魔する感覚でしたから。
――組織委員会に入る役柄を演じる上で、意識されたことは。
実在された方ですから、そこですよね。途中で、ご家族の方が見に来られたりしたので、そのあたりプレッシャーもありましたね。撮影を見に来られて、実際につけておられたネクタイを見せていただいて。それをつけて撮影しました。その日のセリフは、ひと言だけだった。良かった、と思って。NGとか見せられないですから(笑)。
――思い出深いエピソードは。
ネクタイをしめさせてもらったときですね。改めて、森西さんなんだなと再確認させてもらった。重みがありました。