インタビュー
2018年8月29日

世界のメダルまで到達した“型破り”と“純粋さ”の師弟関係。競泳・小山恭輔×コーチ・八尋大(前編)│わたしと相棒~パラアスリートのTOKYO2020~ (2/3)

――いわゆる、ゾーンに入っていたというような感覚だったのでしょうか?

小山:いえ、集中はあまりしていなかったのかもしれません。「ここがパラリンピックか」という感覚でした。

八尋:“ビギナーズラック”だったんですよ。ほどよい緊張感というか。「とりあえず決勝に残れて良かった。もう1回泳げる」という感覚。決勝では、泳ぎながら優勝した隣のレーンの中国の選手が見えるわけです。まさにドッグレース状態になって、小山は追いかけていった。

こちらは興奮して盛り上がって、「小山! 小山!」と言っているけど、彼には聞こえない。ゴールしても、小山は目が悪いから、電光掲示板が見えなくて何番か分からない。そうしたら、ミックスゾーン(インタビューエリア)で「2番、おめでとうございます」と言われて、「2番だったんですか?」みたいな。

小山:そんな感じでした(笑)。「獲れちゃったね」というメダルだったんですよね。

セオリーを疑い、活路を見出す

――少し話が戻りますが、最初に会った時にはお互いにどのような印象でしたか?

小山:明るい人だなと。練習もありきたりなものではないので、すごく楽しいんです。

――“型破り”だと。

八尋:僕には型が無い。破ることが目的だからね。何ができるようになりたいか、ということを前提に考えると、「片手でバタフライを速く泳ぐ」ことが目的なら、僕自身も片手片足で泳いでみて、一番速い泳ぎ方を選手と一緒に作っていく方がおもしろい。水泳の泳法は4種目(クロール、平泳ぎ、バタフライ、背泳ぎ)しかないけれど、いろいろな障がいを持っている子たちに水泳を教えるうえで、自分自身で常識を作ってしまうと新しいものが生まれないんです。それが、僕の水泳指導の原型。だから指導というよりも、選手と一緒にやることが根本にあるんです。

――当時の八尋さんから見て、小山さんの泳ぎに光るものがあったのですか?

八尋:というよりも、僕が大それたことを言っても、「あ、いいっすね」と言える純粋さがあるんです。小山のすごいところは、僕が言う馬鹿げたことでも信じてできること、ですかね。

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