2019年4月8日

ドキドキ、6年ぶりのトラック。復帰戦をハードルではなく100mにした理由│寺田明日香の「ママ、ときどきアスリート~for 2020~」#23 (2/3)

“走りのスピード”感覚が戻ってきた

 “スピードで勝負する選手”というと、「走って競争する競技なんだから、そりゃあスピードで勝負でしょうよ」と思うのですが、ハードルの選手のなかには、100mのタイムはそれほど速くないけれど、ハードルの技術で良いタイムを出す選手もたくさんいます。

 「ハードルの技術ってなに!?」となっている方も多いのではないでしょうか?

 私の専門種目の100mハードルは、100m間にハードルが10個あります。ハードルの高さは84cm、スタートラインから1台目のハードルまでは13m、2台目以降のハードル間は8.5mと決まっています。

 なので、決められた距離で、いかにスピードダウンせず(ブレーキをかけず)に踏み切って、ハードルを越えて、着地する、という技術が必要になります。

 私の場合は、“ハードルが下手なハードル選手”と言われたほど、ハードルを跳ぶ技術を習得できていなかったので、走りのスピードでハードルの技術をカバーして走っていました。

 実業団選手になってからは、下手だったハードル技術を習得しようと、私の持ち味である走りのスピードを上げる練習は少なくなっていき、その結果、自分で自分の良さをどんどん消していってしまったのです。なので、一度目の引退の直前は、持ち味だったスピードはほとんどなくなっていたように思います。

 2018年12月に7人制ラグビーの選手から陸上競技の選手への再転向を決めたときの決定打になったのは、なにより、走りのスピードが戻ってきているような感覚があったからでした。

 陸上を辞めてから5年半以上が経ち、2年間ラグビーを経験し、走りそのものの練習をしていたとは言えないので、再転向をするのか、私のなかで大きな葛藤がありました。

 しかし、ラグビーをするなかでさまざまなトレーニングをしてきたからこそ、5年半前になくしたスピードが少しずつ戻ってきたのかもしれないと考えられるようになったのです。

 とはいえ、自分だけの主観的な感覚だけで走っていても「実はそんなに速くなってないんじゃん?」ということもあるので、今回のレースは客観的に現在の自分の走りでどのくらいのスピードが出るのか、ということを確認できる機会になります。

 さて、どうなることやら……。

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