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筋トレ負荷の基準、どう決めてる?伝統的なRM法ではない、スピードで決める新方法「VBT」とは。やり方と検証結果を紹介

 筋トレを熱心に行う人たちにとって、朗報とも言える研究論文が2020年1月に発表されました。筋トレの負荷をセッションごとで臨機応変に変えることで、より少ないトレーニングで大きな効果が得られるとする研究です。

 英国にあるリンカーン大学の科学者たちが行ったこの研究では、筋トレ経験者を2つのグループに分け、6週間に渡ってトレーニングを行ってもらいました。1つのグループは伝統的な最大挙上重量(1RM)に応じて負荷を決め(RM法)、もう1つのグループは挙上スピードに応じて負荷を変える方式「Velocity Based Training(VBT:ベロシティ・ベイスド・トレーニング)」を使っています。

 6週間のトレーニング期間終了後、挙上スピードに応じて負荷を変える方式のグループ全員が、より少ないトレーニング量にかかわらず記録を伸ばしたことがわかりました。

Velocity Based Training(VBT)とは

 伝統的な筋トレのメニュー作成方法は、あらかじめ測定した最大挙上重量(1RM)を基準にします。たとえば1RMの80%で5回5セットなど、その日の負荷と回数を決めるやり方です。

関連記事:筋肥大を狙う筋トレに必須の指標「1RM(最大挙上重量)」とは?正しい測定方法を解説

 Velocity Based Trainingでは、まずストップウォッチとメジャーを用いて、ウェイトを挙上するスピードと動作範囲を計測。アスリートが無理なく正しいフォームで動ける基準値を設定し、セッションごとに筋トレの負荷を調整します。アスリートが自分の基準値より速く挙上できる日は重量負荷を増やし、逆に基準値より遅くしかできない日は重量負荷を減らしました。

 論文著者の1人であるドレル氏は、筋トレの重量負荷をその日の体調に応じて調整することが、筋トレの効果を高めるのによい影響を及ぼすのだとしています。以下は、ドレル氏の発言です。

「アスリートのある日のパフォーマンスを決める要因は多岐に渡ります。たとえば、睡眠や栄養の状態、あるいは心理的なモチベーションも大きな要素です。しかしながら、伝統的な1RMを使うやり方はそうした要素の影響を無視してしまいます」

「Velocity Based Trainingが優れているのは、アスリートのそのときの状態に応じて負荷を調整できることです。そのことによって、アスリートがその日ごとに適正な負荷をかけてトレーニングすることができるようになります。負荷が軽すぎると体に十分な刺激を与えることはできませんし、負荷が重すぎると疲労が増して、結果として怪我のリスクが高くなってしまいます」

「ここでいう疲労はすぐに発生するとは限りません。負荷が強すぎる筋トレを一定期間続けることもできるでしょうが、数週間も経つとその影響が徐々に出てきます。蓄積した疲労が限度を越えると、本来のパフォーマンスを発揮できなくなります」

研究内容

 16人の被験者アスリートは18歳から29歳までの男性で、全員が最低でも2年以上の筋トレ経験者です。体重は70㎏から120㎏までと、幅広い体格のアスリートが選ばれました。

 6週間に渡り、週2回のトレーニングを前述のグループごとの方式で実施。伝統的な1RMを指標に用いたグループを「PBT」、Velocity Based Trainingを用いたグループを「VBT」として、トレーニング期間前後で最大挙上重量の平均増加率を比較すると以下の通りになりました。

・バックスクワット:PBT 8%、VBT 9%
・ベンチプレス:PBT 4%、VBT 8%
・デッドリフト:VBT 6%

 特筆すべきは、VBTはより大きな効果を得ただけではなく、トレーニング量は逆にPBT より6~9%程度少なくなったことです。

筆者の考察

 Velocity Based Trainingの考え方自体は以前からあり、今回の研究はその効果を証明したことに意義があります。この方式の問題点は、正確に自分の挙上スピードを測定するのが困難であることでしょう。この研究では、研究者がタイムウォッチとメジャーを用いて測定したということです。ただし筋トレを行う人が、自分でそれを行うのは無理があります。

 論文では、市販されている動態測定装置を使用することを提案しています。しかし、少なくとも現在のところ、誰もが簡単に入手できるものではありません。たとえ入手できたとしても、毎回それをジムに持参するのも容易ではないでしょう。

 一般のアスリートがVelocity Based Trainingを取り入れる場合、筋トレの重量負荷をその日の体調に応じて調整するという考え方自体は生かしつつ、挙上スピードは感覚で判断するのが現実的ではないでしょうか。

参考文献:
Comparison of Velocity-Based and Traditional Percentage-Based Loading Methods on Maximal Strength and Power Adaptations.
Dorrell, H. et. al. 2020
https://journals.lww.com/nsca-jscr/Fulltext/2020/01000/Comparison_of_Velocity_Based_and_Traditional.6.aspx

[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
【公式Facebook】https://www.facebook.com/WriterKakutani

<Text:角谷剛/Photo:Getty Images>

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