インタビュー
2020年9月28日

アスリートとコーチの理想的な関係とは?寺田明日香選手と高野コーチが明かす、不思議な出会いと確かな手応え[特別対談・前編] (2/2)

ゆるふわな関係からお互いに手応えを感じるまで

―― 出会いは必然的な流れも大きかったようですが、お互いすぐに気が合ったってことですか。

高野:いやいや。やはり最初は、お互いぜんぜんわからないので手探りです。そのとき、どのような走りをする人か、ハードリングをするのかも知らないわけですから。

寺田:確かに。練習を始めたときも「本格的にスタートしましょう」ってタイミングはないまま始まってますね。

高野:それでも顔合わせをした11月の26日には、寺田選手の練習をみました。そのときの感想もハードルを跳ばなかったので「足速いなー」でした。そのときの動画は、今も残っていますが、まあー何だ、ひどい走りでした(笑)。

寺田:それは私も覚えてます!

高野:鮮明に覚えてるのは、陸上の走りじゃなかったってことです。7人制ラグビーの影響もあったのかもしれません。30mだったらタイムでるけど、100mだとでないなーという感じでした。その後ハードルを跳んでもらうのですが、そのときも「上手くないなー」というのが正直な感想です。だからこそ、これなら「教えられる!」って思いました、すみません……。

寺田:おかしいなー、イケると思っていたのに(笑)。

高野:なので次練習いつにする? 的なノリで日程決めて、練習を始めていった感じです。

―― 素人が思い描くアスリートとコーチの会話ではないのですが!?(笑)。

高野:まさにですね。固定の練習メニューも決めず、初めは多くのことを幅広くやってもらい、その結果をチェックしていました。

寺田:それでも「月火水土が練習」みたいな、サイクルはできてきましたよね。それでも正式に「コーチお願いします! よしわかった」みたいなシーンはなく進んでいきました。今でもないですよ!

高野:それボクも少し心配になって、「このままみてていいんですかね?」って横田さんに相談したことあります。そうしたら横田さん、「練習来てるんでしょ? 嫌なら来ないでしょ? 来てるならいいじゃん!」って、あっさり心配を吹き飛ばしてくれました。このときに「寺田選手のコーチなんだ」って自覚したのかもしれません。

寺田:横田くんざっくりですね!(笑)

高野:その後2~3か月経ってから寺田選手に、「ボクがコーチでいいの?」なんて照れすぎて聞けなくなって今に至ります……。

寺田:あーそれ、私も思ってました! そう考えると斬新な出会いと始まりでしたね。

寺田選手からみた高野コーチの人物像

―― 不思議な縁でつながった高野コーチの人物像を教えてください。

寺田:人間性で言えば、「基本的に怒らない人」です! 私は怒ってる姿を一度もみたことがありません。学生には怒ってるという噂は聞きますけど。私はこれまで基本怒られて育ってきたので、ちょっと不思議な感覚です。

高野:ほかの選手にも怒らないですよ。人生で怒ったことあまりないかもしれません。機嫌悪くなることはあります!

寺田:それも私にはわからない! 前の陸上時代やラグビーのときのコーチたちは、顔に出たり近寄るなオーラ出てたり、失敗したら絶対怒られるよなーって雰囲気満載でしたから。

―― それは練習にどのような影響がありますか?

寺田:練習に対して私が言いたいことを言っても、しっかり受け止めてくれる感じですかね。ちなみに私は、しっかり文句言って、しっかり実行するタイプですから。

高野:ぶーぶー言ってるよね(笑)。最近独り言だと割り切って、聞き流すこともあります(笑)。

寺田:私、練習で150m以上走るのがわりと嫌いなんです。でも最近180mとか頻発してきて、200mまで走るとなると、「なんで?」って言いますよね。それでも練習内容は、きちんと話し合いをしてくれるので、頼りにしてます。

 アスリートとコーチの関係ならざる楽しいとも感じられる2人の関係。後編では、2人で乗り越えたオリンピック延期や2021年の目標をお聞きします。

(近日公開の後編に続く)

《日本選手権の出場予定&放送予定》

●10月2日(金)【大会2日目】
・女子100mハードル[予選]15:20〜
・女子100mハードル[準決勝]18:30〜
[放送予定]NHK BS 102=18:00~19:00、NHK総合=19:30~20:42

●10月3日(土)【大会3日目】
・女子100mハードル[決勝]17:05〜
[放送予定]NHK BS102=15:00~16:00、NHK総合=16:00~18:00

[プロフィール]
寺田明日香(てらだ・あすか)
1990年1月14日生まれ。北海道札幌市出身。血液型はO型。ディズニーとカリカリ梅が好き。会いたい人は、大谷翔平と星野源。小学校4年生から陸上競技を始め、小学校5・6年時ともに全国小学生陸上100mで2位。高校1年から本格的にハードルを始め、2005~2007年にはインターハイ女子100mハードルで史上初の3連覇。3年時には100m、4×100mリレーと合わせて同じく史上初となる3冠を達成。2008年、社会人1年目で初出場の日本選手権女子100mハードルで優勝。以降3連覇を果たす。2009年世界陸上ベルリン大会出場、アジア選手権では銀メダルを獲得。同年記録した13秒05は同年の世界ジュニアランク1位だった。2010年にはアジア大会で5位に入賞するが、相次ぐケガ・病気で2013年に現役を引退。翌年から早稲田大学人間科学部に入学。その後、結婚・出産を経て女性アスリートの先駆者となるべく、「ママアスリート」として、2016年夏に「7人制ラグビー」に競技転向する形で現役復帰した。同年12月の日本ラグビー協会によるトライアウトに合格。2017年1月からは日本代表練習生として活動した。2018年12月にラグビー選手としての引退と陸上競技への復帰を表明。2019年シーズンから競技会に出場し、6月に日本選手権女子100mハードルで9年ぶりの表彰台となる3位に入り、7月には100mでも自己記録を更新。8月には19年前に金沢イボンヌ氏が記録していた日本記録13秒00に並ぶと、9月1日に「富士北麓ワールドトライアル2019」で史上初めて13秒の壁を突破し、12秒97の日本新記録を樹立。カタール・ドーハで開催された「世界陸上」に出場。再び陸上競技選手として、2020年東京オリンピックを目指す。

◎所属企業:株式会社パソナグループ

◎主な記録:100mハードル日本記録保持者(12秒97)/100mハードルU20日本記録保持者(13秒05=2009年世界ジュニアランキング1位)/100mハードル日本高校歴代2位(13秒39)/100m:11秒63

【今後の主なスケジュール】
●第104回日本陸上競技選手権大会
2020年10月1日(木)~3日(土)新潟市・デンカビッグスワンスタジアム
https://www.jaaf.or.jp/jch/104/
●2020世界室内選手権
2021年3月19日(金)~21日(日)会場:中国・南京
https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1416/

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<Text:松田政紀(アート・サプライ)/Photo:寺田明日香、小島マサヒロ、小倉亮介、hasi0824>

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