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コロナ禍でできた時間はポジティブなもの。寺田明日香選手と高野コーチが見据える東京オリンピックとは[特別対談・後編] (1/2)

 いよいよ、寺田明日香選手(100mハードル)が2021年の東京オリンピックに向け再始動しました。10月1日から新潟で開催される日本選手権での活躍にも大きな期待がかかっています。

 そんな寺田選手を支える「チームあすか」のコーチ・高野大樹さんとは、どのようにトレーニングを積んでいるのか。今回はふだん私たちが知ることができない、アスリートとコーチの関係をお聞きしました。

 後編では、寺田選手と高野コーチが感じた、オリンピック延期のときの感情や行動、2021年に向けた目標などをお届けします。

高野コーチが感じた寺田選手の底力

―― 高野コーチからみた寺田明日香という選手の印象を教えてください。

寺田:うるさい人って思ってるでしょ?

高野:そうですね(笑)。けっして静かではないですね。そして誉め言葉として「男子っぽい」という印象です。例えば練習で、1つ納得してもらうと繰り返し、しっかりと反復して練習してくれます。たまに納得したふりで練習を続ける人もいますが、それがないですね。

寺田:あ、納得できないことは必ず話し合ってますよね?

高野:その点、包み隠さず話し合えるのも男らしさを感じるのかもしれません。それと、指示したことは、ほとんど勘で体現してしまうことですかね。あくまでも一般論としてですが、小学生男子はサッカーや野球と運動機会が多く、女子は少ないと言われますよね。それをベースにすると、男女の運動経験の差が出てくるのが当然なのですが、寺田選手は、感じさせないんです。

過去の運動体験って身体に蓄積されているので、小さいときから身体を動かす遊びをしていたのか、天性のものなのか。飲み込みの速さと、体現性の高さは群を抜いていると思います。

寺田:その点でいうと、年齢も近いので世代的なバックボーンも同じだし、意思疎通はしやすいと思います。

高野:確かにお互いのコミュニケーションは、上手く取れていると思います。

コーチとして向き合ったオリンピック延期

―― 寺田選手が日本新記録を更新し、オリンピックが見え始めた矢先、コロナ禍の影響で延期が発表されました。2人はどのようにお聞きしましたか。

高野:練習しているときですね。

寺田:まあ、何となく覚悟はしていましたからね。はっきり聞いたときは、少しボーっという雰囲気になっていました。

高野:とうとう、来たかと。

―― 寺田選手は、以前のコラムでポジティブな切り替えができたと語っていましたが、高野コーチはどう切り替えていったのですか。

高野:ボクももう少し練習ができると感じていました。寺田選手って、普通のアスリートよりもどんなトレーニングもできてしまいます。でも、オリンピックで勝負することを考えると、完全に非の打ちどころがない状態にしないといけません。延期になったことで、目をつぶっていた練習をする時間ができたのはプラスに捉えました。

《関連コラム》
●開催延期が決まるまで私もコーチもピリピリしていた。今はできることをやっていけたら│寺田明日香の「ママ、ときどきアスリート~for 2020~」#38

―― チームあすかのスタッフには、高野さんから話したのですか?

高野:連絡をとりましたが、みなさん延期を受容している印象でした。その場で個別に対応を話しませんでしたが、「時間ができた分、細かくみていきましょう」という会話をしたことを覚えています。「まあまあできる」ではなく、何回やっても同じ動き、タイミングが取れるまで完成度を上げることを目指しましょうと。

《関連コラム》
●特別インタビュー:コロナ禍、オリンピック延期。再始動への想いとは│寺田明日香の「ママ、ときどきアスリート~for2020~」#43

ポジティブさしかなかった自粛中の練習

―― 延期を受けて高野コーチはどのような行動に出ましたか?

高野:延期後、緊急事態宣言が出て練習ができない期間は、死ぬほど勉強できました(笑)。時間がなくて読めなかったり、流し読みしかできていたかったりした海外の文献などをしっかり読み込み、結果や評価を洗い出すことができました。トレーニングの評価ポイントなどの情報をインプットできたのは、良かったことだと思います。

寺田:そうだったんですね!

高野:やはり陸上競技は、物理なんですよ。走るかたちやタイミングが重要です。タイムは数字に支配されているので、自分の動きを客観的にもわかっていないと合理的な動作ができず速く走れません。速い人をモデルにしますが、それを真似るだけではダメで、最終的には個人に合わせた合理的な動作を追求していくことになります。

動画をみるときも、寺田選手に自分で答え合わせをしてもらいます。今の脳の指令だと、身体はこう動く。指令を少し変えれば違う動きができるのか、とかですね。合理的な動作をするためには、主観を操作して、客観的な動作がどんな風に変化していくかを日々チェックしていくことも重要になります。

―― なかなか本格的な話になってきましたが、寺田選手は練習が変わった感覚ありますか。

寺田:いやー、ないですね。最初からそうだったんだと思います。

高野:確かに今も昔も複雑な練習はしていないと思います。ボクの中では、練習メニューも走る距離も決まっています。動画を撮影するポイントも同じ場所ですね。だからほかのコーチに「どんな練習やってるの?」と聞かれると、「超普通の練習です」としか答えられないのも恐縮です(笑)

それでも踏み切りのタイミング1つ変えることだけでも大変です。でも、足の組み方を右から左に変えるだけで腰痛が治ると言われたら変えますよね? 最初は気持ち悪いかもしれませんが、腰痛がなくなるためだったら頑張れます。踏み切りもそうです。ただリスクとしては、反対にしたらほかに影響が出ることもあります。その微調整をしながら日々積み重ねていくしかないんです。それが練習です。

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