インタビュー
2020年9月30日

コロナ禍でできた時間はポジティブなもの。寺田明日香選手と高野コーチが見据える東京オリンピックとは[特別対談・後編] (2/2)

オリンピックで勝つための条件はそろった

―― これまでの練習、自粛中の練習、そしてシーズン初戦を経て「勝つための条件」はみえましたか。

高野:はい。「セイコーゴールデングランプリ陸上(以下、GGP)」と「アスリート・ナイト・ゲームズ・イン・フクイ(以下、ANG)」は、良い活躍をしていますが、今後の課題も見えました。具体的には、前半の4台のハードルの跳び方と、次の7台目までをどう跳ぶかです。1台目から4台目のスピードは、12秒80台で走る選手のモデルタッチダウンと近いか速いくらいなので、この点はクリアできたと思います。

4台目から7台目の速度は、まだまだ到達していないので、中盤以降もしっかり走り跳べるようにすることにフォーカスしていきます。

寺田:実は4台目までの練習を繰り返していたので、5台目からの練習はあまりしていません。

―― 練習のときはハードル10台跳ぶわけではないのですね?

寺田:そうです。それから後ろはノリです!(笑)

高野:笑いごとではありませんが、わりと事実に近いですよ。練習では4台をどうやって跳ぶか考え、ひたすら跳び続けるんです。

寺田:ハードルって着地してから4歩あるんですよ。その4歩の使い方みたいなのを考えることも、概念もなかったので新しいなーと。そういう意識の使い方をしないといけないんだなとも思いました。

高野:トップアスリートにありがちな「速ければいい、跳べればいい」で結果が出ると、なかなか改善しづらくなります。そこを理解してもらい、ハードルの台数を増やしつつ、後半まで走り切ってタイムを出す練習を繰り返していけば、記録もオリンピックも見えてきます。

―― では、最後に改めて2人のオリンピックにかける想いをお聞かせください。

高野:そうですね、もう出るのは当たり前と考えているので、あとはオリンピックの決勝で戦うことを目指していきます。目標は高く、「日本人が誰も到達したことのない地位」にいければいいと思っています。

寺田:私は陸上競技に復帰するときからずっと、高野コーチやチームのみんなに「オリンピック決勝に残りたい」って言い続けています。最初チーム以外の人は半信半疑でしたけど、チームスタッフを信じ、自分自身を信じてやってきた結果は出始めています。このままブレずにやっていけば、必ず結果は出せると思います。

それに何度か語っていますが、目標は、オリンピックの決勝とチーム全員の成長です。みんなで大舞台を経験することは、何事にも代えられない経験になり、将来的にも必ず役に立つと思います。自分にも仲間にも、記録と記憶を残せるようがんばっていきます!

 次に挑むレースは、10月1日から3日に開催される「第104回日本陸上競技選手権大会」です。日本選手権という大舞台で、寺田明日香選手の新たな走りを観られることを楽しみにしています。

《日本選手権の出場予定&放送予定》

●10月2日(金)【大会2日目】
・女子100mハードル[予選]15:20〜
・女子100mハードル[準決勝]18:30〜
[放送予定]NHK BS 102=18:00~19:00、NHK総合=19:30~20:42

●10月3日(土)【大会3日目】
・女子100mハードル[決勝]17:05〜
[放送予定]NHK BS102=15:00~16:00、NHK総合=16:00~18:00

[プロフィール]
寺田明日香(てらだ・あすか)
1990年1月14日生まれ。北海道札幌市出身。血液型はO型。ディズニーとカリカリ梅が好き。会いたい人は、大谷翔平と星野源。小学校4年生から陸上競技を始め、小学校5・6年時ともに全国小学生陸上100mで2位。高校1年から本格的にハードルを始め、2005~2007年にはインターハイ女子100mハードルで史上初の3連覇。3年時には100m、4×100mリレーと合わせて同じく史上初となる3冠を達成。2008年、社会人1年目で初出場の日本選手権女子100mハードルで優勝。以降3連覇を果たす。2009年世界陸上ベルリン大会出場、アジア選手権では銀メダルを獲得。同年記録した13秒05は同年の世界ジュニアランク1位だった。2010年にはアジア大会で5位に入賞するが、相次ぐケガ・病気で2013年に現役を引退。翌年から早稲田大学人間科学部に入学。その後、結婚・出産を経て女性アスリートの先駆者となるべく、「ママアスリート」として、2016年夏に「7人制ラグビー」に競技転向する形で現役復帰した。同年12月の日本ラグビー協会によるトライアウトに合格。2017年1月からは日本代表練習生として活動した。2018年12月にラグビー選手としての引退と陸上競技への復帰を表明。2019年シーズンから競技会に出場し、6月に日本選手権女子100mハードルで9年ぶりの表彰台となる3位に入り、7月には100mでも自己記録を更新。8月には19年前に金沢イボンヌ氏が記録していた日本記録13秒00に並ぶと、9月1日に「富士北麓ワールドトライアル2019」で史上初めて13秒の壁を突破し、12秒97の日本新記録を樹立。カタール・ドーハで開催された「世界陸上」に出場。再び陸上競技選手として、2020年東京オリンピックを目指す。

◎所属企業:株式会社パソナグループ

◎主な記録:100mハードル日本記録保持者(12秒97)/100mハードルU20日本記録保持者(13秒05=2009年世界ジュニアランキング1位)/100mハードル日本高校歴代2位(13秒39)/100m:11秒63

【今後の主なスケジュール】
●第104回日本陸上競技選手権大会
2020年10月1日(木)~3日(土)新潟市・デンカビッグスワンスタジアム
https://www.jaaf.or.jp/jch/104/
●2020世界室内選手権
2021年3月19日(金)~21日(日)会場:中国・南京
https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1416/

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<Text:松田政紀(アート・サプライ)/Photo:寺田明日香、小倉亮介、hasi0824>

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