ランニング練習に筋トレは必要?走るトレーニングだけでいい?現役ランナーが解説
ランナーが取り組むべきトレーニングとして、賛否両論が分かれやすい“筋力トレーニング”。ランニングではできるだけ身体を軽くした方がいい、あるいはランニングはパワーに頼らない運動であるという理由から、筋トレはいらない、必要ないと考える方は多いかもしれません。
私の周囲からも「マラソンに筋トレは必要ない」「走っていればランニングに必要な筋力は備わる」という声がよく聞こえてきます。
しかし実際のところ、筋トレはランナーにとってさまざまなメリットが考えられます。まずは筋トレの必要性について、ランニングという競技特性を踏まえながらメリットを解説します。
なぜランナーに筋トレが必要なのか?
1)怪我のリスクが低くなる
トップランナーの中にも、筋トレは積極的に行っていない方も少なくありません。トップランナーの場合、長く積み上げてきたトレーニングの中で、少しずつ筋力が鍛え上げられています。トレーニングの内容や質も、いわゆる市民ランナーとはまったく異なるでしょう。
すでに力強い筋力が備わった状態であり、だからこそ長距離あるいは高強度のトレーニングにも耐えることができます。どんなトップランナーも、段階を経てトレーニング強度や走る距離を増やしているものです。
筋力不足の状態で走り込みを続ければ、すぐに筋肉は疲労します。疲労の蓄積は、やがて痛みや怪我へ繋がっていくもの。膝や股関節などを痛める市民ランナーが多いのは、筋力不足が大きな原因として考えられます。
おそらく読者の中にも、慢性化した怪我に悩まされている方は多いのではないでしょうか。怪我のリスクを軽減する意味で、筋トレは有効な手段です。
2)走るトレーニングの補完になる
トップランナーのように、走るトレーニングのみで筋力アップできるのは理想の形です。しかし多くのランナーは、短い期間での走力アップを目指しているはず。走るトレーニングに筋トレを加えることで、早い段階から筋量の増加を実現させ、より負荷の高いトレーニングにも耐える身体づくりができます。
箱根駅伝の強豪校が、体幹トレーニングを取り入れることでレベルアップを果たしたという話は聞いたことのある方が多いでしょう。このケースでは、トップランナーでも目指す目標に対してウィークポイントがあり、かつ短期間で成果を出すために筋トレという選択肢を取ったことが分かります。
3)パフォーマンスアップやフォーム改善に繋がる
ランニングでは着地衝撃を反発し、前方向への推進力に変えることが必要です。また、反発後はストライドを広げて回転を生み出し、この回転から足が前方に出ていきます。こうした一連の動作では、下肢全体の筋力が欠かせません。
お尻やハムストリングスなどの大きな筋肉を使えないと、ふくらはぎなどの筋力に依存してしまうでしょう。“使う”のには技術も必要ですが、そもそも筋力が伴わなければ活かすことすらできません。
そして、ふくらはぎなどの筋肉は小さいため、これだけに依存すると早い段階で疲労してしまいます。逆に大きな筋肉が備わっており、これをうまく使って走れば、効率的なランニングフォームの獲得に繋がるでしょう。
また、下半身だけでなく上半身も重要です。力強い腕振りは肩甲骨から骨盤、そして脚へと力を伝えて推進力を生みだします。腹筋をはじめとした体幹部の筋力が弱いと、左右上下動が大きくなるなど、身体がブレが出やすくなります。そのため走りに無駄が生じ、非効率なランニングフォームになってしまいます。
後半失速してしまう、あるいは走っている際に無駄な動きが多い方には、筋トレが課題解決の方法となるかもしれません。
ランナーが筋トレを行ううえで覚えておくべきポイント
筋トレにメリットがあるとはいえ、闇雲にトレーニングすればいいというわけではありません。あくまでランニングのパフォーマンスアップに繋げるという観点から、以下の点に配慮しましょう。
筋肥大が目的ではない
ランナーの場合、筋肉を鍛えて大きくすればいいというものではありません。無駄に肥大化した筋肉は、重りとなってパフォーマンスを下げてしまいます。体重管理にも配慮しながら、ランナーとしての目的達成や課題解決に必要なトレーニングを行うようにしましょう。
基本的にランナーの場合は、まず自重トレーニングからの実践がおすすめです。
使える筋肉を作る
いくら筋量が増えても、それを走る運動で使えなければ意味がありません。そのため、動きの伴う筋トレ種目を選んだり、走るトレーニングと組み合わせる工夫が必要です。
私は筋トレ後に刺激の入った筋肉部位を意識しながら走ったり、動きの中で鍛えるスライドコアトレーニングをとり入れています。
関連記事:体幹トレーニングをもっと効果的に!「スライドコアトレーニング」のやり方
いきなり高負荷を与えない
自重トレーニングからの実践がおすすめと前述しましたが、場合によってはウェイトを利用した筋トレも有効です。
ただし、いきなり高重量を全力で持ち上げるなど、高負荷を与える筋トレは避けましょう。瞬間的に大きな負荷が掛かると、負荷に耐えられず怪我や痛みを引き起こしかねません。まずは軽量から、少しずつ試して自分に適した重量を選んでください。
走る練習をベースに筋トレをうまく取り入れよう
とはいえ、やはりランナーのベースになるのは“走る”トレーニング。筋力不足が課題だとしても、そればかり行っていてはランニングパフォーマンス向上が望めません。あくまで、プラスアルファの補強トレーニングとしてとり入れるとよいでしょう。
ただし、走ることと同様、筋トレもあまりに実践しない期間が長いと筋力がもとに戻ってしまいます。まずは2~3日に1回を目安に、体幹トレーニングから実践してみてください。
筋量が増えるにつれ、自然とランニングフォームなどにも変化が感じられてくるはずです。
[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。また、ランニングクラブ&レッスンサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室やランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表
【HP】https://www.run-writer.com
<Text & Photo:三河賢文>