「お風呂に入ると疲れがとれる」のはナゼ?お風呂博士に聞いてみた
心身ともにリラックスし、疲労回復をサポートしてくれるお風呂。1日の疲れをリセットして翌日の元気をチャージするためにも、お風呂で湯に浸かることは、科学的にも実証された理にかなったことなのです。
今回は、1897(明治30)年に日本初の入浴剤を発売した老舗メーカー、株式会社バスクリンの広報責任者でありお風呂博士の石川泰弘さんに、お風呂と疲労回復の関係を聞いてきました。石川さんは、お風呂博士として各地で入浴・睡眠に関する講演を行い、TV・ラジオ出演のほか『お風呂の達人』など多数の著書もあり、スポーツ健康科学の博士号を持つ本物の博士でもあります。
※石川泰弘さんは現在、大塚製薬に所属(2019年4月より)。本稿の情報は初出当時のものです。
入浴と疲労回復の関係とは?
疲労回復には基本的に血液循環をよくすることがとても重要で、お風呂で湯に浸かることは肉体だけではなくメンタル面にもよい影響を与えると、石川さんは語ります。スポーツやトレーニングで疲れたときこそ、ぬるめの湯に浸かることが大切なのだとか。
◆湯に浸かることで血液循環がよくなり、疲労回復につながる
「湯に浸かると、水圧で滞留している足などの血に圧がグッとかかって上にあがってきます。さらに水中では肺の容量も減るので、その分酸素を取り入れなきゃならなくなる。肺は空気を多く取り入れないともとのサイズに戻らないので、空気を取り入れることにあわせて心臓もよく動いて血が流れます。お風呂に入って湯に浸かると、こういうふうに血行が促進され、血液循環がよくなり疲労回復に役立つわけですね」(石川さん)
血液で運んでいるものには栄養があり、栄養がちゃんと行き渡らないとエネルギーが作れない状況に。さらに血液中はヘモグロビンとくっついている酸素も運んでいます。エネルギーを作るにはこれらが必要で、そういう意味でも血液循環をよくすることは、疲労回復物質をカラダ中にめぐらせることになるのだそうです。
◆ぬるめの湯で副交感神経を優位にする
「また、湯に浸かると浮力による筋肉が弛緩されカラダが緩み、ぬるめの湯なら副交感神経が優位になってリラックスします。リラックスしないと疲労の回復はないので、疲れたなという日はぬるめで自分が『心地よい』と感じる温度の湯に入ることをおすすめします。体温よりちょっと高い38〜39度ぐらいですね」(石川さん)
◆入浴で体温を上げ、下がるころに眠気も訪れる
「夜ちゃんとお風呂に入ると体温があがって、あがった体温は必ず下がります。人間は体温が下がってくると眠くなるんですよ。お風呂に入ると血管も拡張するので熱放散もしやすくなります。あがった体温がスーッと下がる。お風呂に入ると疲れがとれるっていうのは、その後の眠りもよくなるからなんですね。だから眠りの質もあがりますよ」(石川さん)
目覚めたときのカラダに感じる疲労感は、入浴でよい眠りをとったかとらなかったによって断然違いが出るそう。石川さんはオリンピック代表選手たちにも入浴指導をしていて、レクチャーを受けたアスリートたちから「シャワーで済ませず、毎日お風呂に入るようにした」という声を多く聞いたとか。
[プロフィール]
石川泰弘(いしかわ・やすひろ)
株式会社バスクリン販売管理部販売促進課マネージャー広報責任者。博士(スポーツ健康科学)。温泉入浴指導員や睡眠改善インストラクターの資格を持ち、“お風呂博士”としてTVやラジオ、雑誌などに数多く登場。健康・スポーツとお風呂の関係や、効果的な入浴法などについて学校や自治体、他企業など全国各地で講演会も行なっている。サッカー好きで週末ランナーというスポーツ愛好家。著書に『バスクリン社員が教える究極の入浴術 お風呂の達人』(草思社)、『バスクリン社員が教える おうちでバスタイム』(ネコ・パブリッシング)、『バスクリン社員がそっと教える肌も腸も健康美人になる入浴術26』(スタンダードマガジン社)ほか共著、監修も多数
【バスクリン公式HP】https://www.bathclin.co.jp/
※本記事はMELOSで公開された記事「お風呂に入れば睡眠の質も上がる。疲れたカラダに効果的な入浴法をお風呂博士に聞いてみた(前編)」を再編集したものです。
<Edit:編集部/Text:京澤洋子(アート・サプライ)/Photo:Getty Images>