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明日に疲れを残さないための睡眠法を専門家に教えてもらった

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 よく眠ったはずなのに、昨日の仕事や運動の疲れがまだ残っている……。そんな悩みを抱えている人はいないだろうか。

 その日の疲れはできるだけ明日に持ち越したくないもの。そこで明日に疲れを残さないための睡眠法について、睡眠医療を専門とする精神科医で、早稲田大学准教授の西多昌規氏にお話をうかがった。

理想的な睡眠習慣とは?

 まずは理想的な睡眠についてのお話から。寝る前に注意すべきポイントとは何だろうか?

「やはり決まった時間に寝て、決まった時間に起きるというのが理想です。夜勤と日勤が交互に来るような仕事をしている方もいると思いますが、正直なところ体内時計がかなり乱れるので、心身ともに病気のリスクが高まります」(西多氏)

 やはり、よく言われることではあるが、就寝と起床の時間をある程度固定するのが理想的な睡眠習慣につながるとのこと。ただ、それもしっかり睡眠時間が取れていることが前提となる。

「睡眠時間は6〜7時間が理想ではありますが、現代の社会人となると、なかなかその時間を確保するのも難しいですよね。そういう場合には、週の真ん中あたりになるべく仕事を早く切り上げて帰り、いつもより長く寝る日を作るといいでしょう。ただ、よほど睡眠不足が蓄積していれば別ですが、人間というのは早寝がなかなかできません。ですので、寝る時間を早めるのは、せいぜい1〜30分程度でいいと思います」(西多氏)

運動や風呂の習慣が睡眠の質を高める

 どうやら、多少は睡眠時間が不規則になっても、睡眠時間を確保するほうが重要ということのよう。とはいえ、30分しか多く眠らないなら、わざわざ早く帰宅する必要もない気がするが……。

「重要なのは仕事が終わってから寝るまでの間に、睡眠の質を高めるような活動をすることです。オススメはやはり運動ですね。運動による適度な疲れは睡眠の質を高めますから。同じ6〜7時間の睡眠でも、深く眠ることができ、疲労が回復するんです」(西多氏)

 さらに就寝の60〜90分前にお風呂に入るのも効果的とのこと。このときシャワーで済ませるのではなく、湯船につかるのがポイントだ。お風呂を張るのが面倒であれば、前述の早寝と決めた日だけ、近所の銭湯に行くようにするのも良いだろう。

 なお、湯質については「湯船のお湯を炭酸泉にするのが睡眠にいいというデータがあります。お湯に入れると泡が出る炭酸入りの入浴剤を使ってみるといいかもしれません」とのことだ。

 では、寝るときの状況=寝具についても聞いてみよう。西多氏によると「寝具に過度なこだわりは禁物」だそうだが……。

「寝るときに敷くマットや布団などは、個人の嗜好が強いんですよね。マットでも低反発性で深く沈み込む素材もあれば、逆に高反発のものもあります。枕も大きさや硬さの好みが大きいですね。高すぎるのは単純に首が曲がって呼吸がしづらくなり、良くないとは言われています。ただ、要は“これが絶対いい”というものはありません。それよりも寝る前の習慣を見直した方がいいでしょう」(西多氏)

睡眠の質を悪くする悪習慣とは

 睡眠の質が悪くなるのは、眠りが浅くなってしまう悪習慣が原因のこともある。これを排除していくのも、深い眠りにつながるだろう。代表的なものでいうと、お酒、カフェイン、タバコ、スマホなどがある。

「カフェインは4~5時間ほど作用が持続するものなので、良質な睡眠を取りたいのであれば、夕方以降は飲まない方がいいです。タバコもニコチンの覚醒作用があります。タバコを吸わないと眠れないという人もいますが、それは完全にニコチン依存の症状です」

 なお、スマホについては、以前から目に悪いとされていたブルーライトが影響しているという。

「どうしても寝る直前までスマホを見ていないとならないのであれば、少し明るさを抑えるだけでも効果があります。最近ではブルーライトを抑えるスマホやパソコン用のアプリもあるので、活用してみるといいでしょう」(西多氏)

 つまるところ疲労回復につながる睡眠とは、“適度な時間”の“質の良い眠り”ということだ。では、現在の自分の睡眠が良い状態かどうかを計る手段はあるだろうか。

「まず普段の生活で、日中とてつもなく眠くなるようなことがあれば、睡眠時間が短いことを疑った方がいいです。また、お休みの日の寝坊の具合をチェックするのも、ひとつの指標になります。例えば、休日の朝に普段より2〜3時間程度の寝坊で済んでいれば、それほど問題ないと思います。しかし、4時間以上も多く寝ているのは、平日の眠りが不足して、いわゆる“睡眠負債”が溜まっている状態かもしれません」(西多氏)

 ちなみに、寝坊するのが1〜2時間程度で済んでいれば、現代人としては優秀な睡眠状態にあるという。

週末にありがちな睡眠負債を解消する

 睡眠負債にはあるお決まりのパターンがあるという。土曜に寝坊をして早く眠れなくなり、夜更かしをしてさらに時差ボケ状態に。月曜に睡眠不足のまま出社するというのは、よくある話だ。

 休日に起こるこの負のスパイラルを断ち切るには、睡眠不足の負債をなくしていかなければならない。それには前述の対策に取り組むことが肝要だ。十分すぎるくらいの睡眠を1ヶ月程度続けて、ようやく睡眠負債を完済できるという研究結果もあるとか。

「今挙げた対策を全部完璧に実行することは難しいでしょうが、少しずつでも注意して生活に落とし込んでいくと、睡眠の質は良い方向に向かうと思います。カフェインを飲んでも関係ないと言う人が多いと思いますが、飲んでいる人の睡眠時の脳波を見てみると、明らかに眠りが浅くなっていることがわかります」(西多氏)

 疲労回復につながるような深い睡眠をとるには、夜だけ工夫するのではなく、むしろ目が覚めてから寝るまでの起きている間の行動が大事。西多氏はそれを強調していた。仕事や運動の疲れがなかなか抜けない……という人は、まず生活習慣から見直してみるといいだろう。

[プロフィール]
西多昌規(にしだ・まさき)
早稲田大学スポーツ科学学術院・准教授、精神科医。1970年、石川県生まれ。東京医科歯科大学卒業。東京医科歯科大学助教、自治医科大学講師、ハーバード大学、スタンフォード大学の客員研究員などを経て、早稲田大学スポーツ科学学術院・准教授に。精神科専門医、睡眠医療認定医。専門は睡眠、身体運動とメンタルヘルス。著書に「『昨日の疲れ』が抜けなくなったら読む本」「休む技術」(大和書房)、「『テンパらない』技術」(PHP文庫)など多数

<Text:江古田透/Photo:Getty Images> 

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