2025年11月12日

なぜ背中の筋肉は鍛えにくい?トレーナーが語る2つの理由と、効率的な鍛え方

背中の筋肉は体の中でも“効かせにくい部位”のひとつ。鍛えるには、ただ回数を重ねるだけでは不十分です。

本記事では、専門家たちが実際に感じている「背中が鍛えにくい理由」を解説しながら、初心者でも感覚をつかみやすい効率的な鍛え方をまとめています。

背中が鍛えにくい二大理由とは

監修者プロフィール
和田拓巳(わだ・たくみ)

プロスポーツトレーナー歴22年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院や競技チーム帯同で得たケガの知識を活かし、リハビリ指導も行う。医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。現在、様々なメディアで執筆や商品監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信中。
2021年 著書「見るだけ筋トレ」(青春出版社)発刊。

まずは、背中が鍛えにくい理由を探ってみましょう。

動きを目で見ることが難しい

筋肉の動きを見ながらエクササイズを行うと、動かしている筋肉を意識しやすなります。しかし背中は、エクササイズ中に筋肉の動きを目で見ることができません。そのため、筋肉を意識しにくいのです。

また、自分の背中にどのくらい筋肉がついているかも見ることが少ないでしょう。そのためとくに初心者は、どうしても見やすいカラダの前面を重視して鍛えてしまいます。

腕の力でも動作ができてしまう

背中の筋肉を鍛えるローイング動作は、腕の筋肉「上腕二頭筋」を使って動作することがほとんどです。

そのため、動きをマネしているだけだと、背中の筋肉よりも腕を多く使ってしまいます。その結果、腕ばかり疲れてしまうことが起こりやすいでしょう。

これらの理由から、背中の筋肉は鍛えにくいと言われているのです。

背中を効果的に鍛えるためには?

難しい背中のトレーニングを効果的に鍛えるためには、どのようにしたらいいのかを解説していきます。

ウエイトではなく肘を後ろに引く意識

背中のトレーニングは上腕二頭筋だけでなく、三角筋後部なども使われやすいでしょう。そのため、実は背中にあまり負荷がかかっていないということが少なくありません。

これを防ぐために、「ウエイト(ダンベル)を引っ張る」というより「背中を動かす」という意識を持ちながらエクササイズに励んでみてください。そうすると、腕に力が入ってしまっているときに「今は腕で引っ張ってしまったな」と、自分で気づいて修正することができます。

背中を動かす意識が分かりにくい人は、「ウエイトではなく肘を後ろに引っ張る」「肩甲骨を寄せる」という意識の方が分かりやすいかもしれません。

初めのうちは、ウエイトを引ききれないことがあるでしょう。それでも背中に負荷がかかっていることを感じるなら、その方が効果は高いのです。

慣れてくれば、背中を使いながら引くことができるでしょう。

グリップを変えてみる

どうしても腕を使ってしまうという人は、グリップの握り方を変えてみましょう。一般的な普通に握る(親指をひっかけて握る)方法を「サムアラウンドグリップ」といいます。

サムアラウンドグリップはウエイトを落とすリスクが低くなりますが、ローイング種目の場合、腕で引く意識になりやすくなってしまうかもしれません。

そんなときは、親指を外して人差し指の脇に沿える「サムレスグリップ」で握ると、腕への意識が少なくなり、背中を意識しやすくなります。

さらに、サムレスグリップで握り、小指側で引っ張る意識をすると、いっそう背中に負荷を感じやすくなるでしょう。

ただし、ダンベルやバーから手が離れやすくなりますので、十分に注意しながら行ってください。

トレーニングギアを活用しよう

グリップを変えるだけでなく、リストストラップやパワーグリップなどのトレーニングギアの活用もオススメです。

これらは握力をサポートするためのアイテムですが、ギアを使うことでサムレスグリップでも外れることがなく、安全性も高まります。重い重量も扱いやすくなるほか、腕への意識を減らすこともできる優れたギアなのです。

実際、筆者もこれらのギアを使って背中のトレーニングを行っていますが、あるのとないのではトレーニングの質に大きな差が出るのを感じています。

フォームや意識を身につけた中~上級者で、背中のトレーニングが苦手な人はぜひ使ってみてください。

誰かに背中を触ってもらいながらエクササイズを行う

背中を意識するためには筋肉の動きを見るだけでなく、使っている筋肉を触ってもらうことも効果的です。とくに背中の筋肉は広く、初心者の場合はどのあたりを使っているかわからなくなることも。

そんなときは誰かに使っている筋肉を触ってもらうと、意識しやすくなるでしょう。トレーニングパートナーがいる方は試してみてください。

 

背中の筋肉にはどんな役割がある?

監修者プロフィール
姿勢調整師・江幡直輝
大学在学時から姿勢調整師として活動。東京、神奈川の4店舗の開院責任者。臨床安全評価技術審査会 優秀者賞取得

背中の筋肉は、多くの重要な役割を果たしています。

  • 姿勢の維持
  • 上半身の安定化
  • 肩甲骨の動きのサポート
  • 呼吸の補助
  • 脊柱の保護
  • 上半身の引き動作
  • 回旋動作の補助など

これらの筋肉を強化することで、全体的な体の機能が向上し、日常生活やスポーツにおいてより良いパフォーマンスを発揮することができます。

背中の筋肉を鍛えることによって得られるメリット

背中の筋肉を鍛えることによって、どんなメリットが得られるのでしょうか?

姿勢の改善

背中の筋肉、とくに「脊柱起立筋」や「僧帽筋」を鍛えることで、背骨を正しい位置に保つ力が強化され、猫背や前かがみの姿勢を改善することができます。

正しい姿勢は見た目の印象を良くするだけでなく、圧迫されていた内臓が正常に機能するようになる可能性もあります。

僧帽筋や菱形筋を鍛えることで、猫背だけでなく巻き肩の予防改善にも寄与します。猫背であると肩こりも同時に起こりやすいため、肩こりの改善も見込めます。

体幹の安定

背中の筋肉は体幹の一部であり、体の安定性を保つ役割を果たしています。これにより、スポーツや日常の動作においてバランスが良くなり、怪我のリスクが減少します。

歩行時にも脊柱起立筋は働いており、上半身の安定、目線のブレ、ふらつきを抑える役割を持っています。ふらつきが少なくなることで、寝たきりの要因でもある転倒のリスクも抑えることができるでしょう。

腰痛の予防・改善

背中の筋肉を強化することで、腰椎への負担が軽減されます。

とくにデスクワークなどで長時間座っている人にとっては、背中の筋力が不足すると腰痛の原因となることが多いため、背中を鍛えることは腰痛の予防や改善できる可能性があります。

運動能力の向上

背中の筋肉は多くの運動において重要な役割を果たしています。

たとえば、スポーツでのパフォーマンス向上や、日常生活では物の持ち上げなどが楽にできるようになります。歩行の手助けもしています。

基礎代謝の向上

筋肉量が増えることで基礎代謝が向上します。

背中の筋肉は大きな筋群であるため、鍛えることで筋肉量を増やし、結果的にカロリー消費が増えることから、体脂肪の減少や体重管理にも効果があります。

見た目の改善

広背筋や僧帽筋を鍛えることで、背中全体が引き締まります。

広背筋、僧帽筋を鍛えると矢状面から見た場合は厚みが増し、前額面から見た場合は引き締まっている見た目になります。

そのため、男性にとっては身体の厚みができ、逆三角形の上半身を作ることができます。

<Edit:編集部>