リーダーはあざといくらいに努力を見せた方が良い【里崎智也のビジネス現場で役立つ思考術#2】 (3/3)
好きな気持ちを維持させることが一流を生み出す
——30代以上のビジネスパーソンのなかには子育て中の人もいて、なかにはスポーツ界で活躍させたいというケースもあると思います。子どもがスポーツを始める場合、どのような環境が良いのか教えてください。
どんな競技でも同じで、本人が競技を好きでいられる環境づくりをしてあげたら良いんじゃないでしょうか。結局、プロになって活躍する可能性なんてほとんどないですから。無理矢理に練習を課してもイヤになってやめてしまうだけだと思うんですよ。
——なかなか厳しい言葉ですね。
それぐらい競争の激しい世界ですからね。僕の大学の先生が言ってたんですけど、子どもをある分野の一流に育てたい場合、親が同じ分野の一流か、逆に何も知らないかのどっちかのケースがほとんどなんですって。それは一理あるなと思っていて、親って子どもに過度な期待を抱くから、いろんなことをやらせようとするんです。テレビや本からいろんな情報を得ては子どもにやらせようとする。それで子どもはイヤになって潰れていくんですね。だから、逆に何も言わないで、子どもの好奇心のままにやらせる方が伸びていくんだと思います。
——でも、言いたくなってしまう親も多いですよね。
そうですね。やっぱりスポーツファンはみんな評論家なので。僕だってそうですよ。テレビでサッカーの試合を観てても「なんでそこで外すんや!? そりゃ負けるで……」って言いたくなる。でも、子どもにそれをやってしまったら、やる気をなくしてしまうはず。
——具体的にはどんなことを親はするべきなのでしょうか?
なんでも良いんですよ。野球だったらプロ野球の試合を見に行くとか、選手と触れ合えるイベントに行ってみるとか。カッコ良いな、あんな風になりたいなって思わせられるかが勝負。「あの選手みたいになりたかったら、もっとご飯食べて、バット振った方が良いんじゃない?」って言えるじゃないですか。そこで、「もっと内側からバットを出して……」とか言い出したらアウト。それは指導する自分に酔ってるだけなんですね。僕が小手先でサッカーのことを言ってもダメなのと同じで。
——細かい技術は教えず、子どもが自然と練習したいと思うようにするのが大切なんですね。
好きだったらやめない。そして、やめないかぎりはどこかで突然変異する可能性がある。実際、僕だって大学時代までプロに行くとは思ってなかったんですから。
里崎智也(さとざき・ともや)
1976年5月20日生まれ、徳島県出身。鳴門工業高校から帝京大学を経て、1998年のドラフト2位で千葉ロッテマリーンズに入団。2005年、2010年には日本一を経験。2006年のWBCでは正捕手として日本を世界一に導く。2014年に現役引退し、2015年1月より、千葉ロッテマリーンズのスペシャルアドバイザーに就任
<Text:森祐介/Photo:今井裕治>