ヘルス&メンタル
2024年8月14日

SNSの誹謗中傷を減らすには、「法律の厳罰化」だけでは不十分!有効な対策を心理面から探る (2/2)

それでも、という場合の心を守る方法

あくまでも「受け止める」ことが大事とお伝えしました。しかし、その前に、傷ついたアスリートの方々のメンタルのケアも必要です。

カウンセリングでは、次の順番を重視しています。 

(1)気持ちを吐き出す(傷を癒す) 
(2)対策を考える 

この順番です。

(1)を行わずに、いきなり「どうすれば回復できるのか」のようなアドバイスを言われても、気持ちがついていきません。アスリートも人の子です。まず、最初に取り組むことは吐き出すことです。

たとえば柔道の阿部詩選手の号泣。柔道家としていかがなものか、という指摘はあります。しかし、人間として考えた場合、あの行為があるからこそ、立ち上がることができるのです。

では、具体的な方法を2つご紹介します。 

「セミの抜け殻」ワーク

落ち込む場面をひとつ思い出してください。

その場を、見ている「もう一人の自分(ここではBさん)」が居ます。Bさんから見て、落ち込んでいる本人(ここではAさん)の姿が見えています。 

① Bさんから見て、Aさんの表情はどのように見えますか? 姿勢や息づかいは、どうでしょうか。

② Aさんの胸に耳を当ててください。あなたに聞いて欲しいことがあるようです。耳を傾けて、ジッと聞いてあげてください。 

③ Aさんの思いが確認できました。今度はBさんからAさんに、「ホッとできる言葉」をかけてあげてください。その際、Aさんの手をギュと握ってもいいです。ハグをしてもいいです。背中をさすったり、肩や頭をなでたり、どのような仕草でも大丈夫です。Aさんがホッと安心できる仕草も添えてください。 

④ 一通り終わったら、再びAさんの表情や姿勢などを確認してください。ほんの少しでも明るさが取り戻せたのであればOKです。もし、変わらない場合、上記の②と③を繰り返します。 

本来、コーチや親友が傍に居て行ってくれれば良いのですが、ひとりぼっち場合(とくに孤独感に襲われるのは一人のときです)、頼むことができません。その場合のセルフケアの方法です。  

風船ゲーム 

夜、布団の中で「不安に襲われる」「あれは許せない」などのネガティブな思いが次々と出てきてしまい、なかなか眠れないときの対処法です。布団の中でもできるのがポイント。

書くと長いですが、実際には数分で終わります。ゲーム感覚で取り組めます。 

① 目は閉じたままでOK!

② 両手を天井に向けます。できればまっすぐ伸ばします(肩が痛い方は、頭の中でイメージするだけでもOK)

③ 指先からレーザービームの光線を発射することをイメージします。

④ 頭の中にある不安を風船の中に入れ、天井に向けフワフワと飛ばします(風船はあくまでもイメージです。その風船を頭の中から切り離します)

⑤ 数々の風船を、指先から発射するレーザービームで、パンパンと撃ちます。不安が無くなるまで続けてください。 「バ~ン!」「パンパン}「やったぜ!」のように、声に出すとより効果的です。  

⑥ 頭の中の不安がなくなったら、レーザービームを屋根の外まで貫通させましょう。 

⑧ ドンドンと空高く、夜空の遠く、宇宙まで届かせるイメージ。 

⑨ 両手を、前にならえのように真っ直ぐ伸ばした後、手と手の間隔を広げたり、狭めたりします。手の動きに合わせて、レーザー光線の幅も広くなったり、狭くなったりします。 

⑩ 自分の気持ちが、ホッと安心できる広がりを見つけてください。  

この2つのワーク、どちらも(1)の「気持ちを吐き出す(傷を癒す)」ためのものです。 

そして、気持ちを切り替えることができたのならば、ぜひ日々のトレーニングに取り組んでください。日々の鍛錬への集中こそが、プラスのエネルギーを高め、マイナスのコメントに打ち勝つ最良の対策(2)となります。 

さいごに。人を呪わば穴二つ

「人を呪わば穴二つ」。このことわざは、他者を呪うと、結果的に自分の墓穴も掘るという意味です。

自分の発した悪意の言葉を、もっとも身近で耳にするのは自分自身です。従って、自分の脳(特に海馬)にダメージを与えることが、脳科学的にも証明されています。

相手に同じように仕返しをすると、このことわざと同じ結果になってしまいます。 

アスリートである前に皆さんも人間です。怒りや悲しみなど、お持ちになるのは至極当然です。ただ、同じ土俵に上がる必要はないとお伝えしました。

傷が癒えたのならば、ぜひ再び、数段高いステージを、頂点を目指してください。誹謗中傷の声が届かないくらいの輝く頂点です。その姿を、私たちは応援しています。 

著者プロフィール

佐藤城人(さとうしろと)

心理カウンセラー・心理セラピスト・気功師範。過去にアルコール依存症を患った経験があり、それを克服する過程で40代に再度大学に入学、心理学と出会う。各種依存症やインナーチャイルドを抱える方、さらには摂食障害の悩みなど、これまで10年間で約5000名様の悩みをサポート。摂食障害の回復プログラムの中で「正しさよりも心地良いダイエット法」を提唱する。2019(令和元)年一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会を設立。現在はカウンセラー・セラピストの養成にも力を入れている。https://www.in-ct.org/

<Text:佐藤城人、Edit:編集部>

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