インタビュー
2017年11月21日

子どものころ、すべては与えてもらえなかった、だからこそ夢もチャレンジ精神もずっと持ち続けている。モーグル伊藤みき(後編)│子どもの頃こんな習い事してました #5 (2/2)

はい、一定の単語数が頭に入っているので役立っています。好奇心が強くてとりあえずなんでも首をつっこむ性格だから(笑)、ワールドカップでも他国の選手に臆せず話しかけられます。

夢が叶うのは80歳でもいい

――将来、親の立場になったときに子どもに習わせたいことはなんでしょう。

体を自在に動かせるようにはなってほしいので、やはり基本動作、投げる、飛ぶ、走る、泳ぐなどはやらせてあげたい。子どものころは、本を読んで学ぶよりも体を通して学ぶ方が経験としてずっと残ると思うので。それと、ピアノを習い始めるときに親に言われたのは「長く続けなさい」ということ。始めたら、それがうまくいってもいかなくても、楽しくなくなっても、続けていれば見えてくるものがある。そのことは伝えたいですね。

――モーグルは?

スキーは日常生活にない楽しさがあるのでさせてあげたい。一緒に行って子どももこぶに入りたいと言ったらやらせてあげるでしょうね。

――スキー以外のたくさんの夢は引退後に叶える予定ですか。

そうですね。いまも時間があったら、どこに華道や書道教室があるか調べたりしているんですが、社会人になったときにある先輩から「人間に能力が10あるとしたら、みきちゃんはあれもこれもで、2くらいしかスキーに残ってない。10全部をスキーに使えたらどれだけいいか」と言われてしまい、今はできるだけ外界と遮断するように心がけて生きています(笑)。

夢は死ぬまでに叶えられればいい。いつか時間ができたらめちゃくちゃチャレンジすると思います。このチャレンジ精神をいままで持ち続けているのは、両親のおかげ。子どものころになんでも与えられていたら、生きる意味がわからなくなっていたかも。自分の子どもにも全部は与えないで、大人になったときの夢として取っておいてあげたい。私いま楽しいんですよ、夢が多いから。

――それだけ好奇心も探究心も旺盛だと、別のジャンルでも才能が開花しそうですね。自分に飽きることなくどんどん楽しみが広がりそうです。

そうですね。まだまだあるんじゃないか、みたいな。スキーは好きだけど、それだけではない。もし今一番したいことじゃないことをしているお子さんがいても、大丈夫、それで世の中に出ることもあるよと伝えたい。第一希望は80歳でやっとたどりつけてもいいんですよ。ピアノの先生は「ほしいものを今、手に入れようとしないこと」と言っていました。本当にほしかったらずっと心に残っていくし、いらなかったら忘れていくものだから。

――最後に、2018年の平昌(ピョンチャン)オリンピックに向けてひとことお願いします。

まずは出場権を得ることが一番の目標。出場が決定したら、金メダルを獲る滑りをどれだけ準備できるかが大きな課題です。2014年ソチオリンピックはケガで滑ることができず、いろんな方に支えてもらって手術もしてリハビリもして、今競技ができているので、そこで学べたものを生かし、15歳からナショナルチームで活動を始めてからこの15年間で一番いい滑りを、平昌でしたいです。

▼前編はこちら

好奇心いっぱい!習い事は「できれば月曜から金曜まであれこれ日替わりがいい!」という子でした。モーグル伊藤みき(前編)【子どもの頃こんな習い事してました #5】 | 子育て×スポーツ『MELOS』

[プロフィール]
伊藤みき(いとう・みき)
1987年生まれ。滋賀県出身。モーグル三姉妹の次女。14歳でナショナルチームに選出され、高校生でトリノ五輪に初出場し、決勝に進出。ワールドカップ入賞者の常連となる。2013年、ワールドカップ初優勝、世界選手権2種目で銀メダルに輝く。ソチ五輪では日本代表となるも右膝前十字靭帯損傷のため出場は叶わなかった。2015年復帰

<Text:安楽由紀子/Edit:アート・サプライ(丸山美紀)/Photo:小島マサヒロ>

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