子どもの運動神経を左右する「コーディネーション能力」とは?ゴールデンエイジ期におすすめのトレーニングも解説
子どもはあっという間にいろいろな動作ができるようになっていきます。
それはスポーツだけに限らず、自転車に乗ることだったり、楽器の演奏だったり。いずれも、大人より習得スピードは速いもの。
それには、子どもの時期に成長が著しい「コーディネーション能力」が関係しています。
<このページの内容>
コーディネーション能力とは
外部から得た情報をすばやく反応・判断し、それに対して適切にカラダを動かす能力のこと。コーディネーション能力は、7つの能力に分けることができます。
1)リズム能力
動作を行うタイミングを上手につかむ能力です。音に合わせて動作を行うなど、リズム感のよさに関係します。
2)バランス能力
バランスを正しく保ち、体勢が崩れた場合にすばやく立て直す能力です。転倒しそうになった時などにカラダの位置感覚を的確に判断し、転倒しないよう反応します。
3)変換能力
状況の変化に合わせて、すばやく動きを切り替える能力です。相手選手のプレーに対応して、自分の動作を変えるといった場面などで発揮されます。
4)反応能力
合図などにすばやく反応して、適切に対応する能力です。スタートダッシュなどの反応の速さに関係します。
5)連結能力
カラダ全体を連動させてスムーズに動かす能力です。動作をするうえで、力の発揮加減・バランスなどを調整する働きをします。
6)定位能力
物体の位置と自分の位置関係を把握する能力です。人や物などの距離感を感じる働きをします。
7)識別能力
手足や道具・スポーツ用具などを上手に操作する能力です。
ボールを見ながら打つなど視覚とカラダを繋げる働きや、ある動作をしながら他の動作をこなすなど、複雑な動きを正確に行う能力となります。
コーディネーション能力が伸びる時期
コーディネーション能力は、子どものときに急激に向上します。そのため、子どもの頃は多くのスポーツを経験し、いろいろな動作を身につけることがよいとされています。
コーディネーション能力をはじめとする神経系(脳や脊髄・感覚器)が向上する時期を「ゴールデンエイジ」と呼び、その時期の運動経験が運動能力を左右するとまで言われているのです。
プレゴールデンエイジ(5歳~8歳ごろ)
コーディネーション能力が発達する時期です。
この時期に多くの運動を体験し、動作に対する神経回路を作っておくことで、その後の運動能力を大きく伸ばすことができます。
ただし、長時間集中力が続かない年代でもあります。遊びながらカラダを動かすようなプログラムを短時間でいろいろ行うことが効果的です。
ゴールデンエイジ(9歳~12歳ごろ)
神経系の発達は12歳でほぼ100%となり、さまざまな動作を習得するのがもっとも早い時期です。
身体の成長曲線から見て、筋力・持久力の向上はまだ先。この時期はコーディネーショントレーニングを積極的に行い、多くの動きを習得することで、その後の運動神経を飛躍的に伸ばすことができます。
ポスト・ゴールデンエイジ(13~15歳ごろ以降)
ゴールデンエイジを過ぎると、身長や体重など骨格の成長が著しい時期に入ります。
この時期は、骨格の急激な変化によって今までできていた技術や感覚にズレが生じ、思うようにカラダを動かせなくなったり、スキルをうまく発揮できない場合があります。
しかし、骨格の成長とともに反復練習を行うことで、感覚は修正されていきます。成長していく筋力などの影響により、より力強く、すばやい動作が可能となってくるでしょう。
コーディネーション能力を高めるトレーニング
コーディネーション能力を高めるトレーニングは、簡単にできるものから専門的なギアを使うものまで多様にあります。今回は、誰でも簡単に取り組めるものをご紹介します。
ポスト・ゴールデンエイジ(13~15歳ごろ以降)
鬼ごっこはコーディネーション能力を高めます。
普通の鬼ごっこだけでなく、手繋ぎ鬼やボールをぶつけたら鬼を交替する、鬼の数を増やしてみるなど、ルールを変えて難しさを調整してみましょう。
ポスト・ゴールデンエイジ(13~15歳ごろ以降)
親やコーチなどの指示に合わせてジャンプします。「前!」と言われたら前へ1歩両足ジャンプ、「後!」と言われたら後ろに両足ジャンプなど。
「前」「後」「右」「左」のほか、「高く!」でその場で高くジャンプ、「低く!」でしゃがんで立ってなど、指示を増やすと難しくなります。
慣れてきたら、指示とは逆の動きをしてみるとさらに難しくなるでしょう。
2つのボールでパス交換
すでに球技などのスポーツを行っている場合は、いつものパス練習に少し工夫を加えるだけでもコーディネーショントレーニングができます。
パス練習をする際、ボールを複数使うことでコーディネーション能力を高めます。
サッカーだから足だけで、バスケットボールだから手だけでと制限せずに、手足を両方使いながら行うことも効果的です。
また、ボールの重さや大きさが異なるようにするとさらに難しくなります。
カラダを大きく動かさなくてもできる遊びならコレ
家の中でもお手玉や後出しじゃんけん、手押し相撲など、簡単な遊びでコーディネーション能力を高めることができます。
子どもに反応・判断させるような工夫を考えてあげると、トレーニングの幅がぐっと広がるでしょう。
子どもが疲れていないときに行おう
コーディネーショントレーニングは、集中して行うことが重要です。練習などでカラダが疲労しているときに行うと集中力が保てず、効果的に行うことができない場合があります。
ウォーミングアップの一環として練習開始時に行うなど、子どもが疲れていない時に実施しましょう。
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著者プロフィール
和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。運営協力メディア「#トレラブ(https://tr-lv.com/)」などで多くの執筆・監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信している。日本トレーニング指導者協会 JATI-ATI
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<Text:和田拓巳>