インタビュー
2020年12月14日

水泳の練習に行く前にピアノや習字へ、大忙しの小学生時代でした。元競泳日本代表・寺川綾(前編)|子どもの頃こんな習い事してました #30 (3/3)

背泳ぎは居残り練習ばかりで嫌いでした

――子どものとき、大会前などに集中力を保ち、気持ちが崩れないようにするために気をつけていたことはありますか。

スイミングスクールが強豪で、“自分”を持って集中して大会に向かっていく先輩方を近くで見ていたので、自然とそうできるようになりました。困ったことがあれば近くでアドバイスしてくださる方もたくさんいらっしゃいましたし。だから、あんまりそういうことに悩んだことはなかった。恵まれた環境でした。

――強豪だからこそ、お互いライバルでピリピリしたムードだと思いましたが、違うんですね。

実際に試合で泳ぐ直前はそうですが、それまでは一緒に練習している仲間として「がんばろうね」と和やかな雰囲気でした。そういう点では競泳はチーム競技っぽいところがあると思います。速い先輩を見て、「ああいうふうにすればいいのか」「試合前にはああいう体操をするといいのか」と、最初は真似をしながら、助けてもらいながら教えてもらいながら練習してました。

小学校のとき、試合前に本当にオリンピックを狙うような高校生や大学生選手のクラスのところにコーチに連れていかれて「この子、これからがんばって速くなるからめんどうみてやって」と言われたことをすごく覚えています。大先輩すぎてビクビクしていたんですけど、みなさんやさしくて「がんばってね」と言われて、「こういう選手になりたい」という憧れがずっとありました。

――種目を背泳ぎに決めたのはいつですか。

小学校3年生くらいです。一般的に専門種目が決まっていくのがだいたいそれくらい。その後も練習ではいろいろな種目を泳ぎますが、10歳以下の大会があり、そのときはみんな自分の種目で出場します。専門種目は自分の好き嫌いに関わらずコーチが決めます。泳ぎよりも体型や立ち姿、足の形で決めると聞いたことがあります。

実は、私が一番好きなのは平泳ぎなんです。でも、一番苦手で遅いので試合に出るなんてありえないレベルなんですけど(笑)、だからこそ何も気にせずに気楽に泳げて好きなのかもしれません。

背泳ぎは、選手になる前は居残り練習ばかりさせられてたんですよ。だから嫌いでした。今となれば、コーチは私に背泳ぎの素質があるから小さいうちにしっかり基礎を叩き込んでおこうと教えてくださっていたのだとわかりますが、当時の私は「下手だからたくさん練習しなきゃダメなんだ」「背泳ぎ嫌い」と思っていました。

後編:競技指導はコーチに任せ、親は子どもががんばれる環境をつくって見守りたい。元競泳日本代表・寺川綾(後編)

[プロフィール]
寺川綾(てらかわ・あや)
1984年生まれ、大阪府出身。3歳で水泳を始め、水泳の名門校、近畿大学附属高校を経て近畿大学卒業。ミズノに入社。2004年、アテネ五輪200メートル背泳ぎ8位入賞。2009年、日本選手権では、50メートル・100メートル背泳ぎで日本新記録を出して優勝。2012年、ロンドン五輪100メートル背泳ぎで日本新記録を出し銅メダル獲得。2013年引退。現在はスポーツキャスターとして活躍。

<Text:安楽由紀子/Edit:丸山美紀(アート・サプライ)/Photo:小島マサヒロ>

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