インタビュー
2020年12月21日

競技指導はコーチに任せ、親は子どもががんばれる環境をつくって見守りたい。元競泳日本代表・寺川綾(後編)|子どもの頃こんな習い事してました #30 (1/3)

 スポーツ界の第一線で活躍しているアスリートに、幼少期の習い事について訊く連載。自身の経験を振り返っていただき、当時の習い事がどのようにその後の競技生活に活かされたか、今の自分にどう影響しているかを伺います。

 両親からは「水泳選手になれるわけがない」と言われながらも、名門スイミングスクールのコーチたちの期待を受け見事に夢を叶えた寺川綾さん。現在は2児の母としてどのように習い事に関わっているのでしょうか。

前編:水泳の練習に行く前にピアノや習字へ、大忙しの小学生時代でした。元競泳日本代表・寺川綾(前編)

娘も水泳を始めたけれど「ママは先生じゃないから」

――2014年に元競泳日本代表の細川大輔さんと結婚。娘さんが2人いらっしゃると聞きました。お子さんも水泳をやってらっしゃいますか。

はい。長女は4歳のころ「自分でやりたい」と言って水泳を始めました。私から「やったほうがいいよ」というのは酷だと思ったので、本人が言い出すまで何も言わずに黙っていました。

――「酷」というのは?

周りから「お父さんもお母さんも水泳選手だったから、泳ぐ才能があるんだろうね」といったことをよく言われているんです。今は本人はよくわかっていませんが、理解したときにどういうふうに感じるんだろうと思うと⋯⋯。周りがそれで親からも「やったほうがいいよ」と言われたら、子どもは逃げ場がなくなってしまう。

――では、お子さんと自分と比べてしまったり、自分の泳いでいる映像を見せたりすることは⋯⋯。

ありません。負けん気の強さは「遺伝しているな」と思いますが、競技に関しては比べることはないですし、まだそんなに泳げるという感じでもないので今のところはわかりません。娘のほうから「ここはどうすればいいの?」と水泳に関して質問してくることがありますが、それも口出ししないように、「ママは先生じゃないから、先生に聞いたほうがいいよ」と答えています。教えてくださっている先生にも、私が口を出すのは違うなと思って。でも夫は言いたいタイプ。今は娘本人が聞きたくて聞いているのでいいけれど、聞いてないのに言い出したら私が止めようと思っています(笑)。

娘は私が選手だったことは知っていますが、泳いでいる映像を1回も見たことがありません。一緒にプールに行っても本気では泳がないですし。テレビがお仕事だと思っているようです。「ママは泳げるから、プールや海に遊びに行ってなにかあったら助けるよ」とは言ってます。

――そうやってあえて距離を取って見守っているのは、自分自身がご両親から水泳に関して特に何も言われなかったという経験があるからでしょうか。

そうだと思います。私は親が水泳をやっていた人のプレッシャーを知らないけれど、娘はすでに周りからいろいろ言われているので、そう言われることで嫌いになってほしくないんです。私は水泳が好きだから続けてこられたので、娘にも好きでいてもらいたい。夫婦の間でも「好きなことをみつけてがんばれるならいいよね、それが水泳じゃなくてもいいよね」という話はしています。娘がいつまで水泳を続けるかわかりませんが、それも本人が決めることだと思っています。

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