インタビュー
2020年12月14日

水泳の練習に行く前にピアノや習字へ、大忙しの小学生時代でした。元競泳日本代表・寺川綾(前編)|子どもの頃こんな習い事してました #30 (1/3)

 スポーツ界の第一線で活躍しているアスリートに、幼少期の習い事について訊く連載。自身の経験を振り返っていただき、当時の習い事がどのようにその後の競技生活に活かされたか、今の自分にどう影響しているかを伺います。

 第30回は、2004年アテネ五輪出場、2012年ロンドン五輪競泳100m背泳ぎで銅メダル、400mメドレーリレーでも銅メダルを獲得し、現在はスポーツキャスターとして活躍している元競泳選手の寺川綾さん。3歳のころから水泳を始め、ほどなく選手育成コースに所属。8歳でオリンピックを夢見るようになったそうです。毎日、プールに通い「水泳漬け」の忙しい毎日を過ごしていた子ども時代について聞きました。

小児喘息のため、体力をつけようとスイミングスクールへ

――小さい頃の習い事を教えてください。

3歳から水泳を始めて、小学生のころはピアノ、習字に通っていました。いつからいつまでかはっきりとは覚えていませんが、何年かは習っていたと思います。ピアノは家で練習するのがたいへんで最初にやめたかな。習字はたぶん5、6年生まで続けていました。中学生になってからは英語塾にも行ってました。

――水泳を始めたきっかけは?

小児喘息(ぜんそく)になり、体力をつけるために両親がスイミングスクールに入れました。いくつか、おうちから通える範囲のスクールの体験レッスンに連れて行ってもらって「自分で好きなところを選びなさい」と言われて。プールサイドを移動するときに列になって前の人の肩を持ち、汽車ポッポみたいに移動するのが楽しくて「ここがいい」と選んだところが、たまたまオリンピアンをたくさん輩出しているスクールでした。

3歳の私はもちろん、親もそのことは知らなくて、本当に「たまたま」です。水遊びから始めてすごく楽しくて、幼稚園の頃から選手育成コースに進みました。

――喘息という持病を抱えながらの水泳はたいへんだったのではないでしょうか。

常に発作が出ていたわけではなく、体調や気候によって悪化したり改善したりしていたのですが、けっこう長い間続いていました。練習中に発作が出たこともあります。本格的な治療を始めたのは2009年ごろから。それまではごまかしながらやってたんです。

苦しいのが喘息のせいなのか、水泳のトレーニングのせいでしんどいのか自分でもあまりわかっていませんでした。治療を始めて薬を使うようになったら「喘息の苦しさだったんだな」と気づいた。でも、アスリートで喘息持ちの方は意外といらっしゃるんですよ。

毎日朝・晩プールへ、「陸上をやらないか」と誘われたけれど

――水泳以外にスポーツの習いごとや、地域のチームや部活への参加は?

小学生のころからほとんど毎日午後6時から8時くらいまでスイミングスクールに行っていたので、さらに他のスポーツをするような状況ではありませんでした。でもスポーツは全般的に得意。得意というより好き。好きな科目を聞かれると必ず「体育」と答えていました。

水泳は全身運動なので、どちらかというと水泳をやってたから他のスポーツもできてたんじゃないかなと思います。球技も走るのも大好きでしたが、一番好きだったのは中学の体育の授業で習った走り高跳び。背面跳びが得意でした。

中学2年生のときに陸上部の先生に「水泳をやめて陸上やらないか」と誘われたこともあります。その先生は陸上界で有名な先生だったので「ちょっとやってみたいな」という気持ちがあったんですが、スイミングの先生に陸上の練習に行ってもいいか相談したところ「水泳のほうがいいから」と言われて、結局あきらめて陸上は始められずに終わりました。

――毎日夜8時までスイミングとは忙しいですね! 小学生のころの1日のスケジュールを教えてください。

朝練があるときは5時15分にはプールにドボンだったので、4時台には家を出て、自転車で20分くらいのところにあるスイミングスクールに行って7時まで練習して、家に帰って朝ごはんを食べて学校。学校が終わって習い事がある日は行って、その後スイミングに行って8時まで練習。家に帰ったら夕ご飯を食べてお風呂に入って宿題して。何時に寝ていたか記憶にないですけど、ヘトヘトだったのでやることが終わったらすぐ寝てました。だから、テレビを見ることもあんまりなかった。⋯⋯今思うとすごい忙しいですね。もうできないな(笑)。

――本当にすごく忙しい。友だちと遊ぶ時間もないのでは?

習い事がない日にスイミングの時間まで遊んでいたのかもしれないけど、あまり記憶がない。きっと学校の休み時間に全力で遊んでたんだと思います。土曜日も朝晩練習。日曜日だけがお休みでしたが、大会のことが多い。日曜が大会のときは月曜日の練習はお休みだったので、その日にお友だちと遊んでいたのかも。忙しかったですが、「あのときもっと遊んでおきたかった」という後悔はありません。

――振り返ってみて、水泳に役に立った習い事はありますか。

習字は正座して集中してもくもくと書くので、小さいながらに、集中力は少しは身についたんじゃないかなと思います。

次ページ:8歳のときに「オリンピックに出てみたい」と思った

1 2 3