インタビュー
2017年10月30日

「トレイルは走ることが全てではない」。トレイルランニングの楽しみ方を SALOMONアスリート反中祐介に聞いてみた (2/3)

「トレイルランニングは、ロードより筋消費の激しいスポーツです。ですから、時に歩いたり、止まったりしても問題ありません。ロード出身の方は走りきることをメインに考えがちですが、トレイルは走ることが全てではないんですよ。特に大切なのは、気持ちに余裕を持てること。いっぱいいっぱいになると、何もかも駄目になってしまいがちです。余裕が失われると足元しか見られなくなり、入ってくる情報が狭く、かつ遅くなってしまいます。例えばハイカーがいても、挨拶すらできないといった具合ですね。もちろん周囲が見えなくなると、転倒・落下・接触などの危険も。ですから、疲れ果ててしまわないようなレースの進め方が求められるんです」

 実際にトレイルレースに出場すると、とても走れないほどの急坂に遭遇することがあります。それでも必死に走りきろうとしてしまえば、すぐ疲労が溜まって動けなくなったり、痙攣等を起こしたりするかもしれません。周囲を木々に囲まれ、足場が不安定なトレイルランニング。安全に終えるためにも、景色を楽しめるくらいの余裕が必要なのでしょう。加えて、ギアの用意や使い分けについても、トレイルランニングを楽しむうえでは必須だと言います。

「トレイルランニングではギア選びがとても大切。ちゃんと準備してこそ、やはり心に余裕が持てます。特に状況に応じ、使い分けができると良いですね。例えば雨の場合、レインジャケットにグリップの強いシューズ、補給食も多めに持ちます。しかし小雨なら薄手のシェルウェアで十分ですし、晴れていればシューズは通気性を重視した方が良いでしょう。マラソンでは、いかに軽くミニマムに走るかが重視されます。しかしトレイルはある意味でアドベンチャーですから、動きやすさだけでなく状況に応じた装備が欠かせないんです。その装備もまた、シチュエーションに合わせカスタマイズできるようだと安心ですね。そして可能な限り、実際の装備を身につけてレース前に走ってみてください。例えばライトを頭・腰・手のどこに装備するのが走りやすいかなど、フィールドテストはより快適なトレイルランニングに繋がります」

 例えば前泊の大会であれば、いくつかギアの組み合わせを持っていき、天候に応じて選択するのもオススメとのこと。“選択肢が多い”ということが、そのまま気持ちの余裕へと繋がるようです。

 また、普段のトレーニングではロードの坂道や階段を走るなど、トレーニングにも変化を取り入れているという反中さん。たとえ常に山を走れなくても、トレイルランニングに良い練習になると教えてくれました。近くに山がないという方は、ぜひ試してみてください。

出来ることから少しずつ経験を積んでいこう

 レースに出ようと決めたら、すぐにエントリーしてしまう。チャレンジへの逃げ道をなくすという意味では、効果的な方法でしょう。しかし何も知らずトレイルレースに挑むと、痛い思いをするかもしれません。

「トレイルランニングを楽しむなら、無理せず着実なステップアップを行いましょう。背伸びしても良いことはありません。例えば、まずハイキングから始めるのも良いでしょう。山という路面を知るだけで、いろいろな発見があるはずです。そこから少しずつ走る割合を増やしていけば、トレイルランニングのスキルが身に付いていきます」

 マラソン大会での経験は、おそらく多くの方々にとって自信に繋がるはず。しかし過信して何の心構え・準備もなくレースに挑むことは、大きな危険が伴います。加えて反中さんは、トレーニングについても最初は注意が必要だと教えてくれました。

1 2 3