2018年2月20日

東京マラソンの不思議。リタイアランナーを乗せる「収容バス」、なぜ「はとバス」が担うのか? (1/3)

 3万6000人のランナーが走る国内最大級の市民マラソンの祭典「東京マラソン」。12回開催の時点で、完走率は、平均で約96%超。なんと参加したランナーのほとんどが完走しているんです。しかし、体調不良や突然のアクシデント、関門タイムオーバーで失格となってしまったなどなど、約4%のリタイア者がいることも事実。

 そんなリタイアとなったランナーをフィニッシュエリアまで輸送するのが「収容バス」。「収容」の大きな垂れ幕を付けた黄色いバスが、各関門で待機する姿や最後尾ランナーの後ろにジワジワと迫る様子をTV中継などで目にしたことがある方も多いことでしょう。あの収容バスの正体は、そう、東京観光で親しまれている「はとバス」なんです。

 そこで、2007年の第1回大会から収容バスを運行し、リタイアしたランナーを収容し続けるはとバスさんに、収容バスについてお話を聞いてきました。

はとバスが収容バスになったワケ

▲今回お話を伺ったはとバスのみなさん。右から観光バス事業本部 副本部長・営業企画部長の石川祐成さん、ドライバーの柳守さんと三角幸生さん、運輸部安全対策課 安全教育担当マネージャーの武藤巧さん

 都庁をスタートし、日本橋や浅草、銀座、東京タワーといった東京の観光名所を走る東京マラソンのコースは、はとバスでも定番の観光ルートです。当然、交通規制のかかった大会当日は通常営業することができません。しかも開催日は利用者も多い日曜日。もしやその辺の事情も、はとバスが収容バスを務めることに関係しているのでしょうか。

「受託の経緯としては、第1回東京マラソン開催当初は東京都が主催であったのですが、はとバスの筆頭株主は東京都ですので、どうしようかという相談を持ってきやすかったのだと思います。それに加えて、やはり大会当日に通常営業ができないというのも正直ありました」

 と、観光バス事業本部副本部長の石川さん。東京の中心部の公道を使用した大規模な市民型のマラソンの開催。道路の長時間封鎖を含め東京都が取組む初めての難問をクリアして行く中で、輸送をどうしようかということに。そこで、“東京観光といえばはとバス”というほど、東京を知り尽くしたはとバスに白羽の矢が立ったのでした。

▲はとバス本社社屋

 では、大会当日のはとバスツアーはどうなっているのか。東京マラソンのコースが新しくなり、それまで積み上げてきたノウハウがすべて白紙となってしまった2017年大会では、東京観光のすべてのツアーを中止したのだとか。

「2月のツアーを作るのは、その前の年の夏ぐらいにやっているんです。なので、ツアーを作る時点では東京マラソンの新コースの道路閉鎖時間と閉鎖場所がわからない。だから全部やめてしまったんです」(石川さん)

 なんと潔い。これこそ東京マラソンのテーマである「東京がひとつになる日。」の精神!

「でも東京マラソンの新コース発表のあと、よくよく見たら走れるところもあることがわかったので2017年は特別コースを作って、当日も販売しました」(石川さん)

 特別コースを東京マラソン開催直前に販売されるという企業努力はさすが老舗の心意気。東京スカイツリーと浅草をめぐる限定ツアーで、大人お1人様2800円といったツアー代金で「この価格で大丈夫なの?」と思っちゃうぐらいお得。ちなみにそのツアーは今年も運行されるとか。

▲なんと石川さんは、ランナーとして過去3回の東京マラソンに参加。「収容バスには乗ってません」とのことです(笑)

「あの価格設定は正直、大丈夫ではないです(笑)。行ける観光地が限られているので特別なお値段でやってますが、今年は去年の経験がありますので『あ、横浜だったら行けるよね』とか、運行に支障のないツアーは予定通り出しています」(石川さん)

収容バスの緻密な配車オペレーションがスゴイ!

 大会当日は50台を超える数のバスが収容バスとして運行するとのこと。そのハードやサービスについても気になるところ。各関門には何台のバスが待機するのか? 最後尾を走るバスの台数は? ドライバーさんは? そもそも観光バスを使うのか? バスガイドさんも乗車してるの? などなど、収容バスのナゾは深まるばかり。

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