インタビュー
2018年4月24日

eスポーツとの親和性も高い。スポーツとテクノロジーの新しい融合「超人スポーツ」が目指す世界とは (3/3)

考案者も含めて、実際にやってみてスポーツとしておもしろいか、観戦しておもしろいかを審査します。基本はみんなで話し合って判断します。

▲ハッカソンでの超人スポーツ開発風景(一般社団法人超人スポーツ協会)

超人スポーツではハッカソンを開催しているので、そこで生まれたおもしろそうな競技を認定することもありますし、どこか別の場所で誰かが生み出したおもしろそうな競技があれば、それも超人スポーツに認定させてもらったりも。

義足の選手が健常者の記録を超える時代に倫理とどう向き合うか

――人体とテクノロジーの関係となると「どこまで身体を拡張していいのか?」などの倫理の問題が出てくると思います。

そのとおりです。マルクス・レームというドイツ人の走り幅跳びの選手がパラリンピックで8メートルを超える記録を出していて、すでにオリンピックと変わらない記録にまで来ているんです。義足も一種のテクノロジーと言えるし、今後は生身の人間の記録を超えるのが当たり前になってくるかもしれない。そうなると、わざと脚を義足にする人が出てきてもおかしくないんです。倫理の問題を真剣に考える時期ですね。

――最近はファッション性の高い義手や義足もあり、身につけることで健常者よりも高いパフォーマンスを得られるなら、福祉のあり方を根底から見直す時期に来ているのかなと思います。

これまでの福祉は「マイナスをいかにゼロにするか」だったけど、今は「マイナスをプラスに」できる時代。テクノロジーでも、デザインでも。そういう視点を超人スポーツに活かせるとおもしろいなと思います。

2020年に向けて、eスポーツとともに歩む超人スポーツ

――最後に超人スポーツの今後の展望を教えてください。

日本は今年がeスポーツ(電子機器を用いて行うスポーツ全般)元年といわれていますが、超人スポーツとeスポーツは親和性が高いと思います。Nintendo Switchの「ARMS」という、コントローラを操作して殴り合いをするゲームがありますが、僕はあれも超人スポーツだと思っていて。eスポーツでもあるし、超人スポーツでもある。両者はいっしょに伸びていけると考えています。

▲さまざまなマンガやフィギュアが並ぶオフィス

すでにeスポーツは2022年アジア競技大会の公式種目に採用されています。超人スポーツも2020年に向けて、大きな大会を開きたいと考えています。それ以外にも、認定競技を集めて大会を開く「超人スポーツゲームズ」は年1回のペースで開催し、ローカルな場所での大会もいくつかできればなと。超人スポーツは、誰もが超人になれるスポーツです。皆さんも僕といっしょに超人になりましょう(笑)。

[プロフィール]
中村伊知哉(なかむら・いちや)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授。1961年生まれ。京都大学経済学部卒。慶應義塾大学で博士号取得(政策・メディア)。1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。通信・放送融合政策、インターネット政策を政府で最初に担当するが、“橋本行革”で省庁再編に携わったのを最後に退官し渡米。1998年MITメディアラボ客員教授。2002年スタンフォード日本センター研究所長。2006年より慶應義塾大学教授。内閣府知的財産戦略本部委員会座長、内閣府クールジャパン戦略会議、文化審議会著作権分科会小委などの委員を務める。著書に『コンテンツと国家戦略』(角川Epub選書)、『中村伊知哉の新世紀ITビジネス進化論』(ディスカバリートゥエンティワン)など多数。

【公式ブログ】http://www.ichiya.org/
【公式Twitter】@ichiyanakamura
【公式Facebook】https://www.facebook.com/ichiya.nakamura
【超人スポーツ協会公式サイト】https://superhuman-sports.org/

<Text:舩山貴之(H14)/Photo:辰根東醐>

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