【医師が教える】免疫力アップには何を食べればいい? (2/2)
腸内細菌叢を育てる「β-グルカン」
大麦やキノコなどに含まれる水溶性食物繊維「β-グルカン」は、腸内細菌による発酵を介して短鎖脂肪酸の産生を促します。
短鎖脂肪酸が免疫系を刺激することで、腸管免疫(※)を強化すると言われています。
(※)食べ物にはウイルスや細菌、真菌(カビ)などの病原体が付着しています。栄養素と一緒に病原体を取り込んでしまうと病気になるので、消化管には表面を覆う粘液、そしてさまざまな免疫細胞や抗体が存在し、防衛しています。これを「腸管免疫」と呼びます。
短鎖脂肪酸は、酢酸、酪酸、プロピオン酸などの総称で、大腸のぜん動運動のエネルギー源になり、腸内環境を弱酸性化し、腐敗物質をだす悪玉菌の繁殖を抑える作用があります。
β-グルカンが多く含まれる食べ物
β-グルカンを積極的に摂るためには、たとえば白米を大麦ごはんにするのは簡単でおすすめです。
免疫細胞を活性化させる「タウリン」
アミノ酸の一種「タウリン」。
動物実験や基礎研究により“自然免疫”である好中球の殺菌作用を強化し、“適応免疫”のB細胞の活性化・抗体産生の促進、T細胞の増殖・機能性向上するなど、有益な作用が示唆されています。
A型インフルエンザ感染者や、コロナウイルス感染者やコロナ感染が長期化した感染者において、タウリンの血中濃度が減少していたという報告があり、ウイルスとの戦いでタウリンが消費されたと推測されます。
タウリンが多く含まれる食べ物
タウリンはイカ・タコ・牡蠣といった魚介類に多く含まれ、それらの食品を食べることでも摂取できます。
運動でもタウリン濃度は高まる
また、タウリンは体内でも作られ、軽いランニングなど有酸素運動が血中のタウリン濃度を高めるのに有効であることが分かっています。
日頃の運動週間が免疫を維持するのに有効です。
免疫細胞自体を作る「タンパク質」
すべての細胞は、タンパク質が主成分です。ウイルスと戦う免疫細胞や抗体もタンパク質からできているので、タンパク質は必須!
そしてタンパク質はドカ食いが効かないため、食事で常にとり続ける必要があります。朝昼晩の食事には、かならず卵、肉、魚、大豆などタンパク質を多く含む食材を取り入れましょう。
タンパク質が多く含まれる食べ物
卵、肉、魚、大豆製品、乳製品、あたりめ、プロテインドリンクなど
ビタミンB群
ビタミンB群は食べ物をエネルギーとして代謝し、細胞の活動エネルギーを作る栄養素です。病原体から体を守るタンパク質である抗体産生にも必要です。
ビタミンB1が不足するとパイエル板(免疫細胞が多く集まる器官)は小さくなり、感染症にかかりやすくなる可能性が示唆されています。
ビタミンB群が多く含まれる食べ物
ビタミンというと野菜や果物に多い印象ですが、実はB群のビタミンは豚肉、魚介類に多く含まれています。お肉を食べてB群のビタミンを常に補充しましょう。
骨(骨髄)づくりにかかわる栄養素
骨(骨髄)づくりにかかわる栄養素も大切です。
骨髄では、好中球やマクロファージ、リンパ球〈B細胞とT細胞〉、NK細胞、形質(けいしつ)細胞など、ほぼすべての免疫に関わる細胞が生まれます。
そして、骨を丈夫にするカルシウムに加え、骨を強化することに関わるビタミンDなども免疫に関与していると言えます。
ビタミンDが多く含まれる食べ物
ビタミンDはきくらげ、鮭などに含まれます。そのほか、日光浴をして手のひらに紫外線を浴びると自分の体内で生成することもできます。
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監修プロフィール
内科医・血液専門医 久住英二先生
1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。
<Edit:編集部>