インタビュー
2019年6月30日

阿部サダヲ『いだてん』ロングインタビュー「暗くなりがちな時代だからこそ、スポーツを通して明るくなってほしい」 (2/4)

―― マラソン一直線だったスポーツ黎明期を描いた第1部から、第2部に入り、ドラマの雰囲気が変わります。注目ポイントは?

オリンピックに出場する選手が増えたのが、これまでと違うところですね。最初は2人(金栗四三と三島弥彦)から始まって、次のオリンピックでもそんなに多くなかった。でもロスではメダルをたくさん獲る。そのときのお祭り具合というか。選手が楽しんでいる、というのがすごく良いと思いますね。ほかの国の選手と和気あいあいとした雰囲気になるのも、オリンピックならでは。それがやりたかったことじゃないのかな。踊ったりするんですよ、みんなで。楽しかった。そこが前半との大きな違いですね。

選手たちも世界に通用することが分かり、自信が出てきました。田畑も外国人に物怖じせずに「ヤンキーども」なんて口汚く言う。唯一、ヒトラーにはビビっていましたね、さすがの田畑も。みなさんが知っているような、「前畑がんばれ!」の名シーンも出てくる。出演者もガラリと変わります。「前畑がんばれ!」もそうなんですが、いだてんって不思議で、地元の方言を使わない人たちが苦労して役に挑戦していらっしゃる。浅草っぽい人が熊本弁だったり、関西弁の人がNHKのアナウンサーをやったり。そこもおもしろいですね。

2020年の東京五輪へ思いが重なる

―― 来年には東京オリンピックが開催されます。田畑の思いが2020年につながるわけですが。

やっぱり思いが重なりますよね。来年なんだな、と思う。でもみなさん、盛り上がりはまだそれほどじゃないですか? 1964年の東京オリンピック当時もそれほどだったみたいで、始まるまではシーンとしていた。けれど乗ってくると怖い。日本の人ってお祭りが好きなんだろうなと思うんですが、それがおもしろいですよね。だってハロウィーンだって、これだけ盛り上がった。令和に変わる瞬間も。

1964年の東京オリンピックのシーンはまだ撮っていません。でもそのとき田畑は(東京オリンピック大会組織委員会から)外されているという。そこも興味深いところで、どう描かれるか期待しています。

個人的に来年の東京オリンピックでは、やはり水泳を見たいですね。あと、どんなセレモニーをするのか、開会式も見たい。気になりますね。ブルーインパルスにも飛んでほしいと思っています。1964年のあの日は、奇跡的に晴れたそうですね。

―― 昭和の懐かしさなど、視聴者に届くことは。

怖いもの知らずというか、情報がなかったのが逆に強みだった。いまなら調べたらすぐに出てくる。でも携帯電話のない時代で、分からないからこそ強気でいられた。たとえば、誰だか知らない人に歯向かうことも多くて。あとから「誰ですか」みたいな。そうしたら、それが有力政治家だったりね。政治のことを知らずに、新聞社の政治部に入っているんですから、田畑さんは強いなと思います。僕も何も知らないで芝居をはじめたので、近いところがあると感じています。

―― 現場では、どんなスタンスを心がけている?

どんな風に……。うーん、どうですかね。とりあえず、(スタッフや関係者用の)ジャージをつくりましたね。「いだてん」ジャージを。上だけです。前半では、中村勘九郎さんがTシャツをつくったと聞いたので。あとは、松重豊さん(東京都知事、東龍太郎 役)には、いま「もっと現場に差し入れをしろ」と言われています(笑)。

視聴者の方には、スポーツを通して明るくなってほしいという気持ちがあります。暗くなりがちな時代だからこそ、スポーツ、お祭りを通じて明るくなってほしい。スポーツって、見ているだけで話しができるじゃないですか。それは伝えたいところです。

金栗四三と田畑政治がついに顔を合わせる

 また、3月に亡くなれた名優・萩原健一さん(ショーケン)との共演エピソードをはじめ、第2部で中心的な盛り上がりをみせる水泳チーム、田畑の妻を演じる麻生久美子さんなどについてもたっぷり語ってくれました。

 ただし、ここからは第25回以降のネタバレを含んでいるので、ご注意ください!

※※【要注意】以下、第25回以降のネタバレエピソードを含みます※※

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