インタビュー
2021年12月27日

ビーチフラッグス世界ランキング1位のライフセーバー・堀江星冴選手に聞いた、”勝つためのトレーニングと食事内容”(後編) (2/3)

世界一になるためには、世界一のトレーニングをやらなければならない

――ジムでのトレーニング内容を教えてください。

ジムの日は、トレーニング終わりにぶっ倒れるぐらい追い込みます。人によっては、上半身と下半身を別の日に分けますが、僕の場合は上半身と下半身をその日のうちに全部やります。

流れとしては、最初にコンディショニング。身体のケア・ストレッチの後、体幹メインの腹圧を意識したメニュー、呼吸のトレーニングを行います。その後に、ウォーミングアップですね。全身を動かすブラジリアン体操やスキップ運動、もも上げなど、身体を暖めていきます。

その後は、ジャンプ系のトレーニングで、3種目ぐらいを行います。ジャンプ系では体幹もわりと鍛えられますが、一番の目的は腱の強化。身体のバネが鍛えられるところでしょうか。

その後に下半身と上半身のメニューを行い、大体1時間ぐらいですね。トレーニングのトータルは、2〜3時間ぐらいです。ぶっ倒れる勢いでやります。

試合を意識しているので、メンタルも疲れますし、爆発的な瞬発力が必要なトレーニングを意識して1回ごとに100%出しきる。100%以上を意識してやるので、トレーニングも単純にこなすだけではなくて、つねに全力です。出しきることが競技に活きてくると思っているので、どのメニューも大切ですね。

世界一になるためには、まずセンスも大事だと思うのですが、それ以上に世界一のトレーニングをしなければならないと思っています。僕は、胸を張って世界一のことをやっていると自信を持って言えますね。

――砂浜でのトレーニングは、どのように行なっていますか?

ウォーミングアップなどの身体を暖めるところまではジムのときと同じで、そこからは走り始めます。ただ、いきなり100%では走りません。ビーチフラッグスはスキルが必要なスポーツなので、スタートから起き上がって走るところまで、最初は50%ぐらいから始めて、最後に100%で走り込むという感じです。トレーニングは2時間ぐらいですね。

――砂浜では、筋トレをやるというよりかは、スキルを磨くイメージでしょうか。

砂浜の不安定な足場が、勝手に筋トレになっています。その日の身体の状態と相談して走り込む本数を決めていますね。

――走りやすい、自分好みの砂浜はありますか?

人によってはありますね。僕の場合、大学生のときからずっと勝浦の浜でやってきたこともあって、少し硬めの砂が得意です。より反発がくるような、砂を掴んでもちゃんと押せる砂。粒が小さい砂は柔らかく、また砂の表面が深い場所は、反発がよりこない砂です。江ノ島の砂は、砂が深くて柔らかいので昔は苦手でしたね。今は、トレーニングでどちらも大丈夫になりました。

足で砂を掴むスキルもあって、足の指の力も大事ですね。陸上競技は足の指を固めて地面からの反発をもらって走りますが、砂浜でそれをやると足先が埋もれます。足の指で掴んで走るイメージですね。ビーチフラッグス特有の走り方です。

――足の指は、どのように鍛えているのですか?

砂浜で走ることによって、"自然"に適応させて鍛えます。あと、新聞紙を敷いて、それを足の指でクシャクシャにするみたいなトレーニングもやりますね。これをやっていると足先の感覚が研ぎ澄まされていきます。

――陸上トラックの日は、どのようなトレーニングを行っていますか?

ウォーミングアップまでは他の日と同じで、ドリルから始まり短い距離のスタートだけにフォーカスした練習を行います。その後にちょっと長めの100〜300mぐらいを走り込みますね。陸上トラックでは、走る以外のトレーニングは行いません。

――プールでのトレーニング内容を教えてください。

とにかく長い距離を意識して、クロールで泳ぎます。なるべくレストは取らずに、1日で1.5キロぐらいですね。

レスキューはフィンを履いて泳ぐので、足腰の筋力・足の強さがあれば結構スピードに乗ります。筋力強化のトレーニングはジムで行い、プールでは長い距離を泳ぐことで自分が溺れないようにする、体力アップのトレーニングがメインですね。

――溺れている方にたどり着いてから、クロールで泳ぐことは難しいと思うのですが、どのように救命活動をされるのですか?

基本的に、溺れている人に僕らが直接触ることはありません。チューブという浮き輪みたいな用具がありまして、それを渡して捕まってもらいます。

溺れている人は、救出者に必死にしがみついてきます。僕らも溺れてしまう可能性があるので、助けにいったらチューブを渡すための距離をとります。それを渡して落ち着いてもらいます。30秒ぐらい経って、落ち着いてからそれを引き寄せて、留め具を留めて僕らは泳げるようになります。

――ちなみに、すでに意識がない方はどのように救出されるのですか?

チューブで難しそうな場合は、レスキューボードというサーフボードの長い板があるので、ボードに絡めてローリングして要救助者を乗せます。うつ伏せに寝かせて、それを僕らが上から覆い被さってパドリングします。それは、時と場合によってチューブかボートかを選択をします。

ベストパフォーマンスを出すことが目的、それを邪魔する要素はとらない

――普段の食事内容を教えてください。ちなみに1日3食ですか?

サプリメントなどの栄養摂取も含めると、5食以上になりますね。

まず、朝起きてタンパク源をだいたい20グラムぐらいと、ビタミン系の緑黄色野菜をとります。お昼に糖質をガッツリ150gぐらいとタンパク質40g、緑黄色野菜をとって、夜もまったく同じような内容にしています。昼と夜の間にサプリメントのアミノ酸系を入れて、夜の寝る前にもサプリメントを入れますね。

――レース前の追い込んでいるときも食事内容は同じですか?

以前は、体重を落とすためにレース前と普段で食事内容を変えていましたが、今はあまり変えないですね。ただ、生活に不定期なところがあるので、夜が遅い時はサプリメントを抜いたりします。

自分のベストパフォーマンスを出すことが目的のなかで、それを邪魔する要素は摂らないと決めてメニューを組んでいます。そしてプラスに働く栄養素を厳選して摂取しています。

大学生のときは、1日4部練ほどやっていて、自分の中ではそれがベストだと思っていたのですが、運動量とそれに必要な栄養素が足りてなかったんですね。ビタミン系が足りなくて、それで体調崩すことがよくありました。なので、今は自分の身体のコンディションと栄養素の必要量というのをしっかり把握して食事しています。

――邪魔な栄養素というのは、たとえば何ですか?

酸化している油。栄養にあまり働かない油というものがあって、揚げ物の油などがそれです。いろいろな意見があると思いますが、コーン油やサラダ油などは極力控えています。それが僕は一番うまくいっています。

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