ランナーのみなさん、次は砂漠レース「4Deserts」に挑戦してみませんか? (2/2)
バックパックを背負うトレーニングでは、重りとしてお米がオススメとのこと。背中へのフィット感が良いそうです。重量が足りない分は、水を入れたペットボトルを一緒に追加。水ならトレーニング中に重いと感じても、すぐに飲んだり捨てたりして重さが調整がしやいと言います。また近藤さんによれば、不整地を走るトレーニングも欠かせないとのこと。4Desertsには4つの砂漠がありますが、それぞれ異なる特徴を持ち、いずれも足場が不安定。イメージ通りに走れる環境ではないようです。
「山まで走りに行けなくても、例えば砂利道を走っておく、あるいはビルの階段を昇り降りするのでも良いでしょう。冬に雪山を走ってみるのもオススメですね。ビーチランなら波打ち際の堅い場所ではなく、脚が埋もれるような不安定なところを走ってみてください。きっと、すぐに脚がダルくなってくるはずです」
日本で“デザート(=砂漠)”と言えば、砂丘のイメージを持たれる方が多いでしょう。しかし海外では「手付かずの土地」を意味する言葉。確かに砂丘もありますが、コース上には草原や岩場、川、鬱蒼とした木々の間など、実にさまざまな環境が待ち構えていると言います。
「4Desertsには、それぞれ砂漠ごとに“世界一”を誇るものがあります。アタカマは世界一乾燥しており、ゴビは世界一風が強い。また、サハラは世界一暑く、逆に南極は世界一寒いんです。そして同じ砂漠を走ったとしても、毎年環境が変化するんですよ。例えば砂丘で風が吹くと、その景色や地形は一瞬にして違ってしまいます。そうした予測不能な気候が、さらにレースをハードにしてくれるわけです。中にはアタカマ砂漠レースに9回参加されている方がいるほど、砂漠レースにリピーターが多い理由の1つですね」
近藤さんはご自身の経験で、オーバーナイトランの途中、月明かりに照らされた白砂漠に感動したことがあると話してくれました。その光景はまるで海の白波のように見え、砂漠にいながら海を目の前にしているかのような、不思議な感覚だったそうです。そうした景色もまた、砂漠という非現実的な世界だからこそ味わえるものと言えるでしょう。
「砂漠の空気感は、やはり現場に行かなければ分かりません。私は、ぜひ少しでも多くの方々に、それを体感してほしいと思っています。もちろんそれは景色だけでなく、ゴール後に待っている感動も同じ。7日間のレースでは、誰もが自分の限界に遭遇することでしょう。もしかしたら、思っていた以上に弱い自分、情けない自分と向き合うことになるかもしれません。食べて、走って、寝るだけ。その中では、そうした自分の姿を隠すことなんてできないでしょう。どんな自分も受け入れ、走り続けなければゴールには到達できません。ある意味でレース中は、選手全員が何も包み隠さず、良くも悪くも“人間らしく”いられるのではないでしょうか。もちろん逆に、できないと思っていたことができるという発見もあるはず。すべてをさらけ出し、受け入れてゴールするからこそ、多くの選手が涙するほどに、その瞬間は大きな感動が押し寄せるんです」
私たちの考えている限界は自分自身の想像でしかなく、本当はもっともっと先にある。しかしその限界を超えるためには、目を背けたくなるような弱さと向き合わなければならない。きっとその経験は、レースを終えて学業・仕事等に戻った際にも活かされることでしょう。だからこそ4Desertsは“人生を変えるレース”と呼ばれるのかもしれません。お話を伺っているだけで、私も心からワクワクしてきました。想像し尽くせないほどの苦難と感動が待ち構えている砂漠レース。その魅力を体感したい方は、まず一度、挑戦してみてください。これからの人生を変える、キッカケになるかもしれませんよ。
▼4Deserts砂漠レース 公式ホームページ
https://www.4deserts.com/
[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.com
<Text & Photo:三河賢文>