なぜ肩甲骨をストレッチするべきなのか?肩甲骨まわりの筋肉をほぐすメリット
「肩まわりが張っている」「腕が真上に持ち上げにくい」と感じることはありませんか?
それは、張りの出ている肩の上部ではなく、背中にある肩甲骨まわりの筋肉が硬くなっていることが原因かもしれません。
今回は肩の動きを悪くする肩甲骨まわりの筋肉について解説し、肩の張りをスッキリさせる肩甲骨ストレッチ方法を紹介していきます。
<このページの内容>
肩甲骨まわりが硬くなる原因と症状
なぜ、肩甲骨まわりは硬くなるのでしょうか。ここでは原因と、硬くなったときに感じやすい症状を解説します。
姿勢の悪さ
デスクワーク時の猫背などの姿勢の悪さや、長時間同じ姿勢を続けることで、背中の筋肉が緊張し、肩甲骨の動きが悪くなる原因になります。
ストレス
仕事や私生活での精神的なストレスは、筋肉の緊張をもたらします。背中や肩に無意識的に力が入り、肩甲骨まわりの筋緊張につながります。
筋力の低下
加齢による運動量の低下や運動不足によって筋肉を使わないでいると、血行が悪くなり、筋肉が緊張したり、関節可動域の低下につながります。
また、筋肉を使わないことで筋力も低下し、疲れやすくなります。
体重の増加
実は、頭や腕は重いもの。
成人の頭部の重さは体重の約8~10% 、両腕(上腕から前腕、手まで含む)の重さは体重の約6~7%とされています。
体重が増えることで、頭や腕の重さが増え、肩にかかる負担を増大させます。
肩甲骨まわりが硬くなると感じやすい症状
肩甲骨まわりが硬くなると、以下のような症状を感じやすくなります。
肩甲骨まわりの張り
筋肉が硬くなることで血行が悪くなり、背中や肩甲骨周辺に張りやダルさを感じやすくなります。
関節可動域の低下
筋肉の柔軟性が低下し、関節の可動域が低下します。腕が上がりにくくなったり、動かしにくさを感じるようになります。
肩こり
肩甲骨まわりの筋肉の緊張により、首や肩の負担が増え、肩こりの症状を引き起こします。
腕や手のしびれや痛み
筋肉の張りが強くなってくると、肩まわりの神経を圧迫し、腕や手のしびれや痛みを引き起こすことがあります。
肩甲骨まわりにある筋肉ってどんなもの?
肩甲骨まわりの筋肉には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは肩甲骨周辺にあり、関節の安定性に重要な働きを持つ筋肉を紹介します。
肩関節を安定させる「ローテーターカフ」
肩甲骨の安定に欠かせない筋肉が、ローテーターカフです。
ローテーターカフには、上腕骨と肩甲骨をつなぐ役割があり、肩を回すときや腕を挙げるときに、肩関節がスムーズに動かせるように関節を安定させる働きをしています。
肩甲骨と上腕骨をつないでいる関節「肩甲上腕関節」の形状は、球関節という種類に分類され、さまざまな方向に動くことができます。
そのため、肩の可動域は広く、腕を自由自在に動かすことができるのです。
一方、球関節にはデメリットもあります。それは安定性が悪く、関節が外れやすいということです。ローテーターカフをはじめ、肩関節まわりの筋肉が弱くなることで、肩が外れやすくなってしまうのです。
また、ローテーターカフが硬くなることで、肩関節の動きが悪くなり、腕をスムーズに動かせなくなってしまいます。
ローテーターカフを構成する4つの筋肉
ローテーターカフは、以下の4つの筋肉によって構成されます。
- 棘上筋(きょくじょうきん)肩を横に挙げる動き(外転)を助けます
- 棘下筋(きょくかきん)肩を外側に回す動き(外旋)に関与します
- 小円筋(しょうえんきん )棘下筋と同様に肩を外側に回す(外旋)働きをします
- 肩甲下筋(けんこうかきん)肩を内側に回す動き(内旋)を担います
ローテーターカフは、どの筋肉も細く弱い筋肉で、スポーツ動作はもちろん、日常生活での不意な動作により痛めてしまうことがあります。
また、使い過ぎによって炎症が起き、筋肉の硬さにつながってしまうことがありますので、日ごろからのトレーニングやケアが大切なのです。
肩甲骨ストレッチのメリット
肩甲骨ストレッチを習慣づけることで、以下のようなさまざまなメリットを得ることができます。
関節可動域の向上
筋肉の柔軟性が向上することにより、関節の可動域が広がります。関節の可動域が広がることで、スポーツ動作はもちろん、日常動作でもパフォーマンスが向上します。
姿勢の改善
筋肉の硬さがとれると、姿勢が良くなります。姿勢が良くなることで、肩はもちろん首や腰の負担を減らすことにもつながります。
血行の改善
ストレッチにより筋肉を伸ばすことで、血行が促進されます。血行が良くなることで、肩こりや首の張りなどの改善につながります。
肩甲骨ストレッチおすすめ3選
今回は、簡単にできる肩甲骨ストレッチを紹介します。
寝ながらできる肩甲骨ストレッチ
1.下側の腕を顔の正面に伸ばすようにして、横向きに寝ます。下側の腕は、指先が天井方向へ向くように肘を曲げておきます。
2.上側の手で下側の手の手首を握り、肘から先を手の下半身の方へ倒していきます。
3.肩甲骨まわりが伸びているのを感じるあたりでキープしましょう。15秒間行います。
4.反対側も同じように行います。
座ってできる肩甲骨ストレッチ
1.イスなどに座り、片側の手の甲を脇腹にあてます。
2.もう片方の手で、脇腹にあてた方の腕の肘をつかみ、肘を内側に入れるように力を入れます。
3.伸びているのを感じるあたりでキープしましょう。15秒間行います。
4.反対側も同様に行います。
タオルを使った肩甲骨ストレッチ
1.両手でタオルの端を持ち、頭上に持ち上げます。しっかり肘を伸ばしておきましょう。
2.伸ばした腕を、肘を曲げながら背中の方へ下ろしていきます。この時、背中がしっかり動くように、タオルを引っ張りながら下していきましょう。
3.いけるところまで下したら、腕を持ち上げていき、元の姿勢に戻ります。
4.この動作を繰り返します。
肩甲骨ストレッチの頻度。週に何回、どれくらい続けるといい?
肩甲骨ストレッチは、どのくらいやればいいのかと気になる人もいるかもしれません。基本的には、肩をよく使ったときや、張りを感じたときにこまめに行うとよいでしょう。
ストレッチ自体は短時間でいつでもできるので、気になったらすぐにストレッチを行い、習慣づけることで肩の調子を保つことができるでしょう。
マッサージとストレッチ、どっちが効果的?
ハリが気になったとき、マッサージをする人も多いと思いますが、マッサージとストレッチはどちらが効果的なのでしょうか。
マッサージのメリットと効果
マッサージには特定の筋肉をほぐし、張りや痛みを短時間で和らげる効果があります。また、マッサージは気持ちが良く、心身のリラックス効果が得られます。
ただ、背中の筋肉に対しては自分でマッサージすることが難しいので、マッサージ機や他の人に施術してもらう必要があるのはデメリットといえるでしょう。
ストレッチのメリットと効果
ストレッチにも即効性がありますが、伸ばしたい筋肉のストレッチ方法を理解していないと、張りの出ている筋肉に対し、効果的にアプローチすることはできません。
ただ、マッサージでは行えない深部の筋肉や根本的な改善を促すことができ、痛みやだるさの発生を抑えることができます。
肩甲骨まわりは疲労が溜まりやすいからこまめなケアが必要
肩甲骨まわりの筋肉は、肩をスムーズに動かすために欠かせない筋肉ばかりです。にもかかわらず、小さい筋肉であり、疲労が溜まりやすく硬くなりやすいので、日ごろからのストレッチによりコンディションを整えておく必要があります。
今回紹介したストレッチを参考に、痛みや張りが出ていないときからこまめにストレッチを行うようにして、肩の不調を防ぎ、スムーズに動く肩を手に入れましょう!
著者プロフィール
和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴22年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院や競技チーム帯同で得たケガの知識を活かし、リハビリ指導も行う。医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。現在、様々なメディアで執筆や商品監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信中。2021年 著書「見るだけ筋トレ」(青春出版社)発刊。
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<Text:和田拓巳/Edit:編集部>