インタビュー
2018年11月6日

夢はパラリンピアンの「伴走者」。マラソン芸人が語る盲人マラソンの世界(後編) (1/4)

 マラソンは誰もが平等に楽しめるスポーツで、それは障がいを持つ者にとっても例外ではありません。視覚障がいを持つ方のマラソン(ブラインドマラソン、盲人マラソン)には「伴走者」の存在が必要不可欠。この伴走者には、どのようなスキルが必要で、視覚障がいランナーからどのような役割を求められるのでしょうか。

 そこで今回、大学時代は駅伝強豪校でマネージャー(主務)を担当し、卒業後は知的障がい者施設の生活支援員を経て、「ものまねアスリート芸人」になったという異色の経歴を持つ、M高史さんにインタビュー。後編では、実際に伴走を行った際のエピソード、視覚障がい者ランナーたちが抱える現実、「伴走者」に対する想いなどについて聞きました。

前編:マラソン芸人が視覚障がい者ランナーの「伴走者」になった理由(前編)

伴走者はランナーと密なコミュニケーションを

――視覚障がい者のランナーの伴走者をされていて、男女でサポートの仕方は変わってくるのでしょうか?

女性選手の難しさは、まず身長が違うので歩幅が違う、そして回転数が違う。でも合わせるのは僕ら伴走者です。現在僕が伴走しているのはT11クラス(※1)の方なのですが、フルマラソンを3時間16分くらいで走る方なんです。その方は身長が150cmもないくらいなので、僕は歩幅とピッチを合わせながら、同じペースで走らなければいけません。

男性との違いで言えば、トイレや着替えに付き添えないこと。入口まで一緒に行き、あとは本人にお任せするしかないという点では性別の差を感じる瞬間ではあります。まぁ、慣れている方はそれでも問題ないのですが。

※1:視力は光覚までで、どの距離や方向でも認知はできない(日本ブラインドマラソン協会・視覚障がいのクラス分け一覧より)

――走っているときに気を付けていることは他にもありますか?

走る時はお互いが1本のロープの端と端を持ち、それを使って走る方向をナビしたりするのですが、他にも上り坂、下り坂、周囲の様子、給水の場所などをその都度伝えなければいけません。

例えばとっさに犬が飛び出してきた場合、「ワンちゃんがいます」と言う前に、ロープを引っ張って誘導することがあります。男性の場合は強めに引っ張っても問題ありませんが、女性の場合は体重が軽いので、強く引っ張るとよろけてしまう恐れがある。男性の場合は「声より先に腕で教えてください」と言われることが多く、女性の場合は「絶対に先に声を掛けてください」と言われたことがありますね。

――そのあたりの判断は自分ではわからないですよね……。

そうですね。困ったら、実際に聞いてみるのが1番です。レース中は集中して話しかけてこないでほしいタイプの選手もいますし、逆にしゃべるのが好きな選手もいます。そこは人によって異なりますので、どうサポートしてほしいかを事前に確認することは重要だと思います。

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