筋トレ理論「POF法」とは。筋肉博士・石井直方名誉教授が徹底解説! (1/2)
POFとは「Positions Of Flexion」の略で、「屈曲の位置」を意味します。アメリカのトレーニング雑誌『IRONMAN』(アイアンマン)の編集者であったスティーブ・ホフマン氏によって提唱されたトレーニング法です。
そこで今回は、筋肉博士として知られる東京大学名誉教授の石井直方先生に解説いただき、筋肉を効率的につけることができるPOF法トレーニングの魅力に迫ります。
また、実践する場合の回数の目安や初心者向けメニュー、筋肉をつけたい部位別トレーニングメニューも紹介します。
「POF法」とはどういう意味か。理論とやり方
POF法は、筋トレ初心者から上級者まで、筋肥大の効果をもっとも得ることができるトレーニング法として、世界中のボディビルダーも実践する方法です。
鍛える筋肉に対して異なった刺激を与えて筋肉の成長を促し、筋肥大を促進させるトレーニング法で、トレーニングにおいて負荷がかかるポイント別に刺激を変えて行います。
POF法トレーニングは「文字通り、筋肉を短縮した位置から伸張した位置に至る広い動作範囲にわたって鍛えられる点が特徴であり魅力です」と石井先生。
POF法の種目とトレーニングメニュー例
POF法では以下の3つの種目を組み合わせます。これらは動作の中盤・筋肉の伸展時・筋肉の収縮時の異なるタイミングでもっとも筋肉に負荷がかかる種目となっています。
ミッドレンジ種目
動作の中盤(ミッドレンジ)のタイミングで最大負荷(関節の可動域のなかで中間のとき)
ダンベルカール、バーベルカール、ベンチプレス、スクワットなど
ストレッチ種目
筋肉が伸びているとき(ストレッチした状態:伸展)に最大負荷
インクラインダンベルカール、ダンベルフライ、ラットプルダウンなど
コントラクト種目
筋肉が縮んでいるとき(コントラクトした状態:収縮)に最大負荷
ケーブルプッシュダウン、レッグエクステンション、キックバックなど
とくに、バーベルやダンベルを用いるフリーウエイトトレーニングで筋肉に作用する負荷の大きさは、1)姿勢、2)関節のポジション、3)重力の方向の3者に依存して時々刻々変化するので、この方法をマスターすることでトレーニング効果を非常に高めることが可能になるとのこと。
「フリーウエイト、マシントレーニングを問わず、二関節筋(2つの関節をまたぐ筋肉)を効果的にトレーニングするためには、この方法を利用したさまざまな工夫がきわめて有用です」(石井先生)
POF法トレーニングの順番、回数とセット数は?
POF法では、以下の順にトレーニングを行います。
- 筋肉に負荷を与える「ミッドレンジ種目」
- 筋繊維を損傷させる「ストレッチ種目」
- 科学的刺激を与える「コントラクト種目」
では、POF法初心者が実践するにあたっての最適な回数やセット数は、具体的にはどれぐらいなのでしょうか。
「1セットあたりの回数やセット数、頻度などは通常のトレーニングの場合と同様です。筋肥大・筋力増強のための標準的なプログラムとして、最大挙上負荷(1RM)の80%前後、回数は8〜12回程度(反復不能になるまで)を3セット/種目、頻度としては2〜3回/週でよいでしょう」(石井先生)
実施する時間帯は夕方~夜にかけてが理想的とのことですが、あまりこだわらなくてもよいそうです。
POF法トレーニングを行うときのポイント
3つの刺激を同時に筋肉に与えることで成長因子を分泌させ、効果的に筋肥大を促すPOF法。では、トレーニングを行うにあたって注意したい点はあるのでしょうか。
「適切な関節のポジショニングと、それを達成するための姿勢が重要になりますので、適切なフォームで行うことをまず最優先とするとよいでしょう」(石井先生)
トレーニングを有効なものとするためには、適切なポジショニングと正しいフォームが大切なのですね。また、さらに以下の点にも注意が必要とも。
「たとえば、3ポジションでそれぞれ3セットとなると合計で9セットとなり、全体としてトレーニングのボリューム(量)が多めになる点を考慮し、トレーニング全体のバランスを崩さないように注意するのがいでしょう」(石井先生)
POF法トレーニングは部位別バルクアップにも有効か
部位別にバルクアップをしたい場合に、POF法トレーニングは有効なのか? また、どの部位により効果的なのでしょうか。
「POF法がとくに有用となるのは上腕二頭筋、上腕三頭筋、大胸筋などです」(石井先生)
筋トレ民なら、いずれもぜひともバルクアップしたい部位ですよね。
「上腕二頭筋、全体のボリュームを増やすためには伸展位でトレーニングするとよく、そのためには肘をうしろに引いた姿勢での『インクラインカール』を行います。反面、収縮時の『ピーク』の明瞭な筋肉をつくるためには、短縮位でトレーニングするとよく、肘を前方に上げて行う『プリーチャーカール』のような種目がよいでしょう」(石井先生)
また、「上腕三頭筋の場合にも、同様に肩関節のポジショニングを変えることでは発達の仕方を変えることができます」と石井先生。