寝ても疲れが取れない原因と、年齢別の対処法
日本人は睡眠時間が短いと言われています。フィリップス・ジャパンが2017年から世界で実施している調査によると、日本人の睡眠時間は世界的に見てもっとも短く、成人日本人は平均で約6.4時間睡眠。週末でも7時間睡眠となっており、約7,100万人の日本人が自分の睡眠に対して満足をしていない現状が分かってきています。
ただでさえ睡眠時間が短いにもかかわらず、寝ても疲れが取れない、寝た気がしないという嘆きの声はSNSをはじめ各所でよく耳にします。
お疲れモードの皆さま。その原因を探ってみませんか? 大阪カウンセリングセンターBellflower代表の町田奈穂さんに解説いただきます。
寝ても疲れが取れない原因として何が考えられる?
原因1
最初に考えられる原因は、睡眠不足です。
成人に推奨されている睡眠時間は平均約7時間半〜8時間半と言われています。ベッドに入ってスマホを触っている時間は含まれません。さて、どれほど多くの人が推奨される睡眠時間を確保できているでしょうか?
必要な睡眠時間が確保できなかった分は、睡眠負債として、借金のように積み上がっています。そしてこれらが、身体にさまざまな不調をもたらしていく原因のひとつとなっているのです。
原因2
次に考えられる原因として、生活リズムの乱れが挙げられます。
仕事の時間に合わせて平日は早起きしている一方で、休日はお昼近くまで寝ているという方も多いのではないでしょうか。
この平日と休日の起床時間の乱れや、休日だからと夜更かししたりすることが身体のリズムの乱れを生じさせます。
身体リズムが乱れていると、寝ても寝ても寝足りない、疲れが取れないという状態につながります。
ストレスやうつ、自律神経の乱れは睡眠障害を引き起こしやすい?
ストレスやうつ状態、自律神経の乱れは全て睡眠に悪影響を及ぼします。
ストレスやうつ状態の場合は、慢性的に生じているストレスからの逃避や、生じている疲れを解消するために体が自然と睡眠を欲するようになります。そのため、いつも以上に眠たい状態や、寝すぎるという過眠傾向に陥りやすいと言えます。
また、反対にストレスから眠れないという不眠症状を生じる場合もあります。
自律神経の乱れは、体のホルモンのバランスに影響があります。自然と眠たくなる、自然と目が覚めるといった身体のリズムそのものが崩れてしまうことにより、寝付きの悪さや夜中や早朝に目が覚める、寝たくても眠れないといった睡眠の悪い症状が出てきてしまいます。
寝ても疲れが取れない場合、どんな対処法がある?
まずはストレス要因から離れるのが最優先
ストレスやうつ状態の場合は、まずはストレスとなっている要因から距離を取ることが大切です。身近にいる相談できる人に相談をしたり、病院を受診してみましょう。
休職もひとつの大切な選択肢です。距離を取ることができたら、しっかりと自分を労り、休みましょう。
難しいかもしれませんが、できればスマホやSNSからも距離をとって過ごされると良いでしょう。
できる限り同じようなリズムで生活する
そして、自律神経の乱れ対策にもなりますが、できる限り同じようなリズムで生活することが大切です。
同じ時間に寝て起き、同じ時間に食事をしっかりと摂る。これにより、身体のリズムが整い、睡眠も安定してとることが出来るでしょう。
年齢別! 寝ても疲れが取れない原因とその対策
10代の場合
10代はもともと、心や身体にゆらぎが生じやすい時期です。どれだけ対策を取っていても、この思春期特有の乱れに悩まされる方も多いでしょう。
基本はしっかりと睡眠時間を確保することです。10代だと平均9時間は確保されることがおすすめです。
心のゆらぎ、ストレス対策には、身近に信頼できて話せる人を見つけると良いでしょう。相談して答えを出す必要はありません。今どういう気持ちなのか、何を考えているのか、話す、もしくは書き留めるだけでも効果があります。
また、寝る時間や起きる時間も検討しましょう。思春期では身体が自然と夜型になっています。小学生までは9時くらいには寝ていたものが、11時くらいと2、3時間ずれが生じてきます。
これは身体のリズムの問題なので、早く寝ようと思っていてもなかなか眠れないこともあるでしょう。その場合は、寝る時間を11時とし、起きる時間を後ろ倒しにすることもおすすめです。
しかし、日本の社会的な学校が開始する時間というものがありますので、親御さんと相談して調整していきましょう。
20代の場合
20代はエネルギーが溢れている時期です。学業に仕事に忙しく、多少の睡眠不足もあふれるエネルギーで乗り越えられることが多いです。
しかし、そのしわ寄せは20代後半や30代で必ずきます。ですので、無理に活動しすぎず、オンとオフをしっかりと切り替えて安定した生活リズムで過ごされることがおすすめです。
また、10代同様、夜型が続いている傾向がありますので、学業や仕事に合わせて寝る時間や起きる時間は一定に調整していただくことをおすすめします。
30代の場合
仕事では責任も増え、人によっては結婚や子育てなどプライベートも忙しさが増す時期ではないでしょうか。
しかし、20代と比べてエネルギーや回復力が徐々に落ちてきています。仕事や家事育児のコントロールが鍵になってきます。1人でやっていては睡眠時間の確保が非常に難しいです。
周囲に協力を仰ぐ、さまざまな家事代行サービスなどを使うなどの方法で無理をしすぎないように過ごしましょう。
40〜50代の場合
仕事では責任ある立場に立ち、プライベートの忙しさもやや様相が変わってきている時期ではないでしょうか。
比較的ご自身の時間の都合もつけやすく、睡眠時間をしっかり意識して確保していただくことも可能かと思います。
一方で、とくに女性は更年期の時期でもあります。思春期のように女性の身体が変化する大切な時期です。これにより、どれだけ一定のリズムを保とうとしても乱れやすくなってしまいます。
少しでも違和感を感じたら、病院を受診されることをおすすめします。
60代の場合
リタイアメントの時期で、これまでの生活が大きくガラッと変わります。慣れない生活への戸惑いやストレスが非常に強く現れる時期です。
年齢を重ねるごとに睡眠時間は徐々に短くなりますが、この時期ではストレスや不安からくる不眠症状も考えられます。
リタイア後の過ごし方についてあらかじめしっかりと考えておく、気持ちについて話をしたり書き留めておくことで、ご自身の不安やストレスにも向き合いやすくなるでしょう。
寝ても疲れが取れないときにおすすめの栄養素
まずは、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」で示されている通りの摂取基準で、しっかりと栄養素を確保しましょう。
その上でおすすめの栄養素は3つあります。マグネシウム、ビタミンA,B12,D3です。
マグネシウム
マグネシウムには、神経系の活動を低下させ、リラックスさせてくれる働きがあるため、睡眠の質と睡眠時間の改善が期待されています。
ビタミンA,B12,D3
ビタミンA,B12,D3は、マグネシウムと並んで私たちの体温やホルモンの分泌などの基本的なリズムを一定に保ってくれる働きに大きく関わっています。
身体のリズムを整えておくことは良い睡眠のためには必須ですので、不足しがちなビタミンやマグネシウムの摂取はおすすめです。
睡眠ドリンクやサプリメントって効果あるの?
睡眠のためのサプリメントとして、メラトニンはおすすめです。
メラトニンとは、眠りのホルモンとも呼ばれていて、午後5時ごろから徐々に分泌が始まり、体温や血圧を下げ、身体を休息モードに切り替えていきます。そして、日の出とともに徐々に分泌が減り、体温や血圧を上げ、身体を活動モードに切り替えてくれる、そんな身体のリズムを司る非常に重要なホルモンです。
抗酸化作用があるため、海外ではアンチエイジングのサプリメントとしても使用されています。海外ではコンビニや薬局でもメラトニンサプリや飴などが売られており、旅行の際の時差ボケ調整などによく利用されています。
現代はTVやPCやスマホなど、夜も光に溢れています。そうすると身体が休息モードになかなか切り替わらず、メラトニンの分泌が制限されがちです。
そこで、就寝の30分〜1時間前にメラトニンのサプリメントを摂取することで睡眠の質の向上と時間の確保に効果的であると言われています。
監修・執筆者プロフィール
大阪カウンセリングセンターBellflower代表 町田奈穂
同志社大学大学院 心理学研究科修了。在学時より滋賀医科大学附属病院にて睡眠障害や発達障害に苦しむ人々への支援や研究活動を行う。修了後はスクールカウンセラーやクリニックの臨床心理士を経験。2020年、父の病気を機に父が経営する機械工具の卸売商社へ入社。そこで多くの企業のメンタルヘルス問題に直面し、大阪カウンセリングセンターBellflowerを設立。現在は、父の後を継ぎ機械工具の卸売商社の代表を務めるほか、公認心理師・臨床心理士として、精神・発達障害の人が活躍できるインクルーシブな職場づくりをサポートする人事コンサルタントとしての活動や支援者支援をテーマとした研究や臨床活動を行っている。
<Edit:編集部>